
学習塾や予備校の領域では、AIを活用して個人の得意不得意や理解度を分析し、最適な教材・学習ルートを提供する“AI先生”と呼ばれるようなサービスが徐々に広がり始めている。スポーツの領域に関しても同様に、今後人間のコーチとテクノロジーの融合が加速していくかもしれない。
2019年創業のTAFDATA(タフデータ)では11月16日より、国内外で29校のインドアテニススクールを展開するノアインドアステージと共同でAIテニス指導サービス「Tennis Labo(テニスラボ)」の実証実験を始めた。
Tennis Laboはタブレット端末などでプレー中の様子を撮影するだけで、AIがプレイヤーの骨格の動きを推定し、フォーム診断を実施した上で上達するためのポイントや改善点を提案してくれるシステムだ。
TAFDATA代表取締役社長の山田将大氏によると、カメラで撮影したプレー動画だけでフォーム診断をできるのが特徴。ラケットにセンサーをつけるなど、何か特別なことをする必要がないため普段通りにプレーをしているだけでAIコーチの指導を受けることが可能だ。

技術面では軸となる動体解析(骨格解析)技術をはじめ、異常検出・因果推論技術やパターンマッチング技術などを活用しているそう。予めお手本となるプロやコーチのフォームを学習させておき、それと生徒のフォームを比較しながら改善点を自動的に抽出し、映像とテキストでアドバイスをする仕組みだという。
山田氏は大阪大学電子情報工学科に在学中の学生起業家だ。中高生の頃にはロボット部で活動し、世界大会で2位になった経験もある。大学では人工知能領域の研究室に所属。2019年4月にTAFDATAを立ち上げ、今回の実証実験に先がけてディープコアから資金調達も実施している。

冒頭で触れた通り、共同で実証実験に取り組むノアインドアステージでは国内外でテニススクールを運営。管理本部主任の前田元氏は「(Tennis Laboを用いて)個々に合わせた指導をすることで、新入社員のコーチであったとしても質の高いレッスンが提供できるようにコーチングレベルの底上げに繋げたい」と実証実験の狙いについて説明する。
「テニスという種目は“観るスポーツ”という観点ではビデオ判定などの面で先進的なテクノロジーが活用されるようになってきていますが、“するスポーツ”という観点ではまだまだテクノロジーが入ってきていないと思っています。(テクノロジーを積極的に取り入れていくことで)テニスを楽しんでいる顧客たちに目新しいサービスを提供し、テニスへの関心をさらに高めてもらえるような取り組みにしていきたいです」(前田氏)
「データを蓄積していくことでAIもさらに賢くなり、指導の質も上がります。その結果としてテニススクール、そこで働くテニスコーチ、スクールに通う生徒それぞれにとって良いサービスを提供していきたいと考えているので、まずは今回の実証実験をその第一歩にしていきます」(山田氏)