
- 「コロナ禍」を機に新たな会社を設立
- 200本のコンテンツを収録、自宅が本格的なフィットネスジムに
- エンタメで差別化、5年間で10万人の会員獲得を目指す
カナダ発のアスレチックウェアブランド「lululemon(ルルレモン)」が5億ドル(日本円で約540億円)で、ニューヨーク発のスタートアップ企業「MIRROR(ミラー)を買収する──そんなニュースが話題を集めたのは、2020年6月のことだ。
MIRRORは専用のアプリと連動した鏡型のデバイスを通じて、本格的なオンラインフィットネスのプログラムを提供するスタートアップ。1万件以上のトレーニング動画がオンデマンドで24時間視聴できるほか、専門のインストラクターによるフィットネスクラスを毎週70回ほどライブ形式で開催している。鏡型のデバイスをリビングなどに設置すれば、自宅があっという間に本格的なフィットネスジムへと変わる。
そんなMIRRORの“日本版”とも言えるサービスが新たに誕生した。
ミラーフィットは先日、専用のミラーデバイス、専用アプリを通じて自宅にいながら、本格的なトレーニングプログラムを体験できるサービス「MIRROR FIT.(ミラーフィット)」を2020年12月から提供開始することを発表した。また、同社はシードラウンドではand factoryをはじめとした、不動産やホテル運営、ウェディング事業などのシナジーが見込める法人企業から1億6000万円を資金調達を実施している。
「コロナ禍」を機に新たな会社を設立
ミラーフィットの設立は2020年7月。代表取締役の黄皓(コウ・コウ)氏は、身体・顔・ファッションをトータルにプロデュースする「Human Produce Salon BESTA(ヒューマン プロデュース サロン ビスタ)」、パーソナルトレーニングと高級セルフエステを月額2万9800円で受け放題にする「Karada BESTA(カラダ ビスタ)」を展開するRILISIST(リリシスト)の代表も務めている人物だ。
10月末にAmazon Prime Videoで最終回が配信された婚活サバイバル番組「バチェロレッテ・ジャパン」シーズン1に出演されていたのも記憶に新しい。
もともとフィットネス系の事業を展開していた黄氏が新たに会社を設立した理由──そこには“新型コロナウイルス”が大きく関係している。

「新型コロナウイルスの影響で人々の生活環境が一変し、これまで当たり前としてきた生活が送れなくなってしまいました。例えば、今までは気軽に通っていたフィットネスジムにも通いづらくなり、自分の身体を大切にして健康に過ごすハードルはさらに上がったと感じています。時間が経てば新型コロナは収束するかもしれないですし、もしかしたら収束しないかもしれません。そんな不安や外部要因に身を委ねて経営するのではなく、これを機にどんな環境になっても価値を発揮できるサービスを展開するべきだと考えました」
「BESTAでもオンラインレッスンを行ってきましたが、スマートフォンやタブレットでは自分が実現したいサービスには不十分だと感じました。であれば、デバイスなど“ハードウェア”の開発から取り組んだ方が、自分が実現したいサービスを形にできるのではないか。そうした思いから、専用のミラーデバイスと専用アプリによってプロが監修したトレーニングプログラムを提供する会社、ミラーフィットを設立しました」(黄氏)
200本のコンテンツを収録、自宅が本格的なフィットネスジムに

ミラーフィットが提供するMIRROR FIT.は専用設計された鏡型のデバイスに、専用のアプリを接続すると鏡にさまざまなフィットネスコンテンツを映し出され、ユーザーはそれをもとにワークアウトを体験できる。
MIRROR FIT.は筋トレやヨガ、瞑想、ボクシングエクササイズなど多彩なジャンルのオンデマンドコンテンツやライブ配信プログラム、プロのトレーナー(インストラクター)や著名なパフォーマーたちとの1on1マッチング機能を提供する。

ミラーデバイスの操作やインストラクターとのスケジュール調整、ワークアウトプログラムの管理などは専用のアプリを通じて行う。また、ワークアウトができる日時や好きなカテゴリーを選択するだけで、ユーザーのライフスタイルに合わせたプログラムが提案されるほか、ライブ配信プログラムでは全国のMIRROR FIT.ユーザーとの交流も可能で、チャット機能やハイタッチ機能などを通じてモチベーションを高め合える。
黄氏によれば、すでに200本ほどのトレーニングコンテンツの収録、アップロードが済んでいるそうで、来年には企業提携も視野に入れながら、500〜1000本のオンデマンドコンテンツを常時観れるようにしていく予定だという。
サイズは高さが約140cm、幅が約56cm、厚みが約3cmとなっているそうで、スタンドミラーや全身鏡のような感覚で自宅に置ける。富裕層や法人(ホテル)向けにはサイズのカスタマイズも可能とのことだ。
また、料金プランは買い取り一括プランとサブスクリプションプランの2種類が用意されている。買い取り一括プランは入会金・配送料で3万円と本体の価格14万9800円に加え、サービス利用料が毎月5980円かかる。一方のサブスクリプションプランは入会金・配送料は変わらないが、最低24カ月の契約で本体の価格とサービス利用料が毎月1万2980円となっている。サービス利用料は25カ月目以降、毎月5980円かかる。

エンタメで差別化、5年間で10万人の会員獲得を目指す
今年の10月には次世代型フィットネスジムを運営する1/3rd FITNESS(ワンサードフィットネス )が鏡型オンライントレーニング用デバイス「Fitness Mirror」を開発し、クラウドファンディングサイト「CAMPFIRE」でプロジェクトを実施している。
競合企業との差別化はどうしていくのか。黄氏はこのように考えを語る。
「機能面で言えば、オンデマンドコンテンツのトレーニング、ライブトレーニングに加えてトレーナーユーザーのマッチング機能、心拍計をつかった計測、スコア機能をつけている点がMIRROR FIT.の特徴だと思っています。ライブトレーニングにおいても配信で終わるのではなく、ユーザーとトレーナー、ユーザー同士のインタラクティブなコミュニケーションを促進し、コミュニティ組成にも力を注いでいきます。また、今後トレーニングのみならず、医療、エンターテイメント、ファッション、ライフスタイル提案という幅の広い在宅での体験価値・在宅消費を促すモデルに注力していければと思っています」(黄氏)

ミラーフィットは今後、5カ月程度のPOC(Proof of Concept。実証実験のこと)期間を設けて、しっかりとKPI(Key Performance Indicator。重要業績評価指標のこと)の検証を行った後、来年の夏〜秋にかけて本格的なプロモーションを実施する予定だという。今後5年間で最低でも10万人の会員数を目指していく。
「日本のフィットネス人口が500万人(有料ジムに通う層だけで、区民センター利用者を含めると1000万人いると言われてます)であることを考えると十分に達成可能な目標だと思っています。また自宅にあることや、トレーニングに限らず、ライフスタイル、ファッション、エンターテイメント要素を盛り込むことによって、フィットネス人口以上の顧客数を獲得していける、と確信しています」(黄氏)