
- 推薦に特化したビジネスSNSをリファレンスチェックに活用
- ビジネスや生活シーンで使える信用スコアの創造目指す
採用のミスマッチを減らすためのツールとして、採用候補者の経歴・実績に関する情報を前職時代の上司や同僚などから取得できる「リファレンスチェックサービス」が普及し始めている。
特に最近増えているのが、リファレンスチェックをオンライン上で簡単に実施できるタイプのサービス。累計導入企業数が500社を超える「back check」運営元のROXXや人材大手のエン・ジャパンを始め複数社が参入しており、注目を集める市場だ。
2020年創業のParame(パラミー)もこの領域に関連するサービスを手掛ける1社だが、同社では特にフリーランスや副業人材といった「個人」で活躍する人材と、彼ら彼女らに仕事を発注したい企業をメインのターゲットとしている。
個人が組織を超えて“複数のプロジェクトに並行して携わる”ワークスタイルが広がりつつある現代において、自分のことをよく知る人からの推薦を蓄積することで「信用を補完できる仕組み」を作るのが狙いだ。
企業は個人のプロフィール情報から過去の推薦情報を閲覧できるほか、サービス上でより詳しいリファレンスチェックを依頼することも可能。そこで候補者が受け取った推薦状の一部は自身のアカウントに蓄積され、信用が積み上がる構造になっているのが特徴だ。
推薦に特化したビジネスSNSをリファレンスチェックに活用
現在Parameでは個人向けの「Parame」と法人向けの「Parame Recruit」を運営している。
Parame代表取締役の岡野亮義氏が「第三者からの推薦機能に特化したLinkedInのようなビジネスSNS」と紹介する個人向けのサービスは、仕事仲間や友人からもらった推薦文を“信用スコア”としてさまざまなシーンで使えるようにすることを目指したものだ。

その1つの用途が企業と仕事をする際のリファレンスチェック。企業はParame Recruitを通じてParameアカウントを持つ個人ユーザーを対象に案件を募集できる。その際に応募者のParameアカウントに掲載された推薦がリファレンスチェック用の情報になるほか、追加で推薦状の依頼をすることも可能だ。
追加のリファレンスチェックをしたい場合は、Parame Recruit上で「どういった質問を」「どのような人に回答してもらいたいか」を入力フォームから選べばいい。依頼があった場合には応募者側にチャットで通知が届くので、条件に該当する知人に回答をお願いして追加で推薦文を集める仕組みだ。


岡野氏の話では、業務委託や副業の場合でも特に高単価の案件についてはリファレンスチェックのニーズが大きいそう。「クラウドソーシングなどで発注するのにハードルを感じている企業も多く、Parame Recruitを使うことで安心して進められるようになる」という。
一方で個人ユーザーにもメリットがある。上述したとおり回答の一部はParameに推薦として蓄積されるので、次の案件に応募する際の「信用情報」として活用できるからだ。
現時点では募集の掲載とリファレンスチェックが上限なしで実施できる月額制のプランと、リファレンスチェック1件あたり数千円の従量課金プランを展開。他の求人サイトからの応募に対してリファレンスチェックの仕組みだけを切り出して使うこともできる。
5月26日にParameを、6月1日にParame Agentをスタートして6カ月強の現在、個人ユーザーが600名ほど、企業ユーザーが50社ほど登録している状況とのことだ。
ビジネスや生活シーンで使える信用スコアの創造目指す
岡野氏は上智大学在学中に起業し大学を中退。その後中途入社したアクセンチュアを経て、2020年2月に「個人の信用のアップデート」をミッションにParameを創業した。

個人の信用に関心を持ったのは大学時代の経験が大きい。大学内の成績や評価は「かなり悪かった」というが、プログラミングなどができたため、学外では「学生なのにすごいね」と言われることも多く、評価のギャップを感じた。
また中高生にプログラミングを教える活動をしていた際、そこで出会ったユニークなゲームを開発できる子どもたちが、その才能を学校では評価されないこともあった。
「自分自身でも(学歴や資格などとはまた違った)新しい評価指標があるといいのではないかと考えるようになりました」(岡野氏)
アクセンチュアに勤めていた頃から、徐々に中国の「芝麻(ジーマ)信用」など信用スコアに関するニュースが話題になり始め、岡野氏も本格的にリサーチを開始した。
事例を調べてわかってきたのが、信用スコアには“金銭支払いデータ”とそれ以外の“パーソナリティデータ”を軸にした2つのタイプがあること。前者は決済サービスを手掛ける大手プレイヤーなどが中心となっている一方で、後者はさまざまなスタートアップが乱立している。
日本でも「LINE Score」や「J.Score」のようなサービスがすでに存在するが、パーソナリティデータを活用した信用スコアにはまだまだ参入できる余地があると考え、岡野氏はこの領域での起業を決めた。
Parameでは今後の事業拡大に向け、12月15日にはF Venturesとインキュベイトファンドに加え、大島礼頌氏(インフラトップ代表取締役)、岩崎翔太氏(終活ねっと創業者)、児玉昇司氏(ラクサス・テクノロジーズ代表取締役)、天野和哉氏、佐名木亮平氏を含む複数の個人投資家を引受先とした第三者割当増資により数千万円規模の資金調達も実施している。
まずはリファレンスチェックの領域から事業を作りつつ、ゆくゆくは他の領域にも応用できる信用スコアを作っていくのが目標だ。
「会社としてやりたいのは、ミッションにも掲げているように個人の信用をアップデートすることです。(Parame上に蓄積された信用データを)学歴や職歴、資格などに値するくらいの指標にしていきたい。ゆくゆくは芝麻信用のように総合的な信用データとして、さまざまなビジネスや生活シーンで活用できるサービスを目指します」(岡野氏)