楽天モバイル 三木谷浩史会長。新たに発表した料金プランは、毎月のデータ通信量に応じ月額料金が決まる段階型定額方式を採用した
楽天モバイルが新たに発表した料金プランは、毎月のデータ通信量に応じ月額料金が決まる段階型定額方式を採用した 楽天モバイルが開催したオンライン発表会のスクリーンショット
  • スマートフォンは必要不可欠な社会インフラ
  • すべての国民に最適な「ワンプラン」を
  • エリア拡大に自信も
  • 注目は「1GB未満は無料」

楽天モバイルは1月29日、通信サービスの料金体系を見直した「Rakuten UN-LIMIT VI(アンリミット・シックス)」を発表した。毎月のデータ通信量に応じ月額料金が決まる段階型定額方式を採用、1GBまでは無料、1GBから3GBは980円、3GBから20GBは1980円、20GB以上は無制限の2980円とする(いずれも税抜)。複数契約の場合、2回線目以降はデータ通信量3GB以下は月額980円からとなる。

スマートフォンは必要不可欠な社会インフラ

プレスカンファレンスに登壇した楽天モバイルの三木谷浩史会長は冒頭、新料金プランに対する基本姿勢をつぎのように説明した。

「スマートフォンは人間の社会生活において必要不可欠な社会インフラです。しかし、スマートフォンを持てない、低速でしか使えない人が多く、その問題を解決する方法を楽天グループとして真剣に考えました。その結果、コネクティビティを提供し、1人でも多くスマートフォンを持てるようにすべきという考えになりました」(三木谷氏)

楽天モバイル 三木谷浩史会長 楽天モバイルが開催したオンライン発表会のスクリーンショット
楽天モバイル 三木谷浩史会長 楽天モバイルが開催したオンライン発表会のスクリーンショット

さらにブロードバンド普及前のインターネット接続環境を引き合いに出し、「当時に比べネットワークのスピードは何万倍も速くなりましたが、常識にとらわれた結果、革命的なサービスは出てこなかったのではないでしょうか。楽天モバイルはチャレンジして、携帯業界の常識をひっくり返していきたいと思っています」と意気込みも語った。

すべての国民に最適な「ワンプラン」を

新料金体系については、「5G時代でデータ使用量は増えているが、ほかのキャリアはプランが複雑。すべての国民に最適なワンプランを提供することが、楽天モバイルのミッションであり心意気」と、ワンプラン構成に対するこだわりを示した。

冒頭にあるように、新しいプラン名は「Rakuten UN-LIMIT VI」とし、現行プランであるUN-LIMIT V(アンリミット・ファイブ)のアップデートであることを強調した。既存のUN-LIMIT Vユーザーは4月1日以降、自動的にUN-LIMIT VIへアップグレードされるという。

画像提供:楽天モバイル
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UN-LIMIT VIには5G通信サービスも含まれ、楽天モバイルエリアでは通信量の制限なしに高速通信サービスを利用できる。従来のUN-LIMIT V同様、auローミングエリアでは5GBまで高速通信が可能であり、通話・メッセージアプリ「Rakuten Link」のユーザー間での国内音声通話も、これまでどおり無償で提供される。

UN-LIMIT VIの最大2980円という料金設定は、サービスエリアの広さなど質的な差はあるが、すでに5Gサービスを開始しているドコモ、au、ソフトバンクの約半額という水準だ。

20GBを超過しても月額2,980円で5Gの高速通信を利用できる
20GBを超過しても月額2,980円で5Gの高速通信を利用できる 楽天モバイルが開催したオンライン発表会のスクリーンショット

ドコモは「ahamo」、auは「povo」、ソフトバンクは「Softbank onLINE」と新料金プランを発表済であり、いずれもデータ通信量20GBまでで2980円(povoは電話かけ放題500円を引くと2480円)という設定だが、UN-LIMIT VIは1GBから3GBは980円、3GBから20GBは1980円と段階を設けており、20GBを超えても(楽天回線エリアでは)高速通信が無制限という点で大きく異なる。

さらに、大手3キャリアの新プランではキャリアメールを提供しないが、UN-LIMIT VIでは夏頃をめどにキャリアメールの提供を予定しているという。

「MVNOを含め、かなり競争力があるのではないか」という三木谷氏の言葉には、すでに新プランを発表している他キャリアへの対抗意識が見てとれた。

ドコモ、au、ソフトバンクの最新プランとの比較
ドコモ、au、ソフトバンクの最新プランとの比較 楽天モバイルが開催したオンライン発表会のスクリーンショット

エリア拡大に自信も

UN-LIMIT VIの発表にあわせ、回線エリアの状況と今後の見通しも語られた。それによれば、4G屋外基地局の建設状況は、2019年8月が468局、2020年3月が4738局、2021年1月(19日時点)が1万1524局。全国人口カバー率は73.5%に達しており、3月末には80%、夏頃には96%を見込む。この数字は、当初の計画を約5年前倒しているとのことだ。

2021年夏頃に96%を見込むという全国人口カバー率は、当初の計画を約5年前倒している
2021年夏頃に96%を見込むという全国人口カバー率は、当初の計画を約5年前倒している 楽天モバイルが開催したオンライン発表会のスクリーンショット

さらに2023年以降は、出資と戦略的パートナーシップの締結を明らかにしている米AST & Science社との提携により、低軌道人工衛星を利用し日本全土をエリア化するネットワークサービス「スペースモバイル計画」を開始。

これにより、100%の地理的なエリアカバー率を実現するという。通信インフラが破壊された被災地でも通信が可能になるというから、実現すれば災害時に強いネットワークになる。

注目は「1GB未満は無料」

UN-LIMIT VIの注目点は、やはり「1GB未満は無料」の部分だろう。今回の発表では、2020年4月に開始したUN-LIMIT Vの契約申込者数は220万を超えたとのことだが、その多くは1年間無料のキャンペーンに魅力を感じた層であり、4月以降の有料化で解約してしまう可能性が指摘されていた。そういう意味では、楽天が新たに発表した施策はユーザー引き止め策として、かなり有効なのではないか、と筆者は考えている。

画像提供:楽天モバイル
画像提供:楽天モバイル

とはいえ、自社保有回線の脆弱さの課題は残る。UN-LIMIT VIの開始後も、auローミングエリアではデータ通信量が5GB/月を超過すると最大1Mbpsに速度制限されることに変わりはなく、そこがユーザー満足度における当面の間、ネックとなるだろう。