
- LINEのつながりを使って「出会いを見つける」
- 友だちの繋がりをオンラインで可視化
- 従来の紹介方法は「繋げる側の負荷」が高い
- 「メッセで繋ぐ」をもっと効率的に
ここ数年で広く社会に普及したマッチングサービス。今や「Pairs(ペアーズ)」や「タップル」などのサービスを通じて恋愛相手を探すことは珍しくない。
実際、タップルとデジタルインファクトが共同で実施した調査によれば、2021年のオンライン恋活・婚活マッチングサービス市場は前年比23%の増加で768億円規模に成長。2026年には、2021年比約2.2倍の1657億円にまで拡大すると予測されている。
オンラインで知らない人と出会うことが一般化しつつある一方で、そんな出会い方に抵抗を感じる人も中にはいるだろう。そんな人たちのニーズを汲み取ってか、最近は“友だちの友だちと出会う”をコンセプトにうたうマッチングサービスが登場し始めている。
LINEのつながりを使って「出会いを見つける」

その代表例が、LINEの友だちの繋がりを活用し、”友だちの友だち“と出会えるマッチングサービス「HOP(ホップ)」だ。HOPは、「YYC」や「Poiboy」などのマッチングサービスを手がけるDiverseと、コミュニケーションアプリ「LINE」を手がけるLINEの共同出資によって設立されたHOPが開発したマッチングサービス。
2020年8月から東京・神奈川・千葉・埼玉の1都3県で先行してサービスの提供を開始し、12月24日からは全国版の提供を開始している。
利用できる年齢は20歳以上。登録後、“相手を探す”などの基本的な機能は無料で利用可能となっているが、メッセージのやり取りをする際は男性のみ、従来のマッチングサービスと同様に月額3600円(税込)の有料プランに加入しなければならない。
HOPの最大の特徴は前述の通り、友だちの繋がりを活用して出会う点にある。サービス内では、人と人との繋がりの距離を“HOP”と名付け、LINEの友だちを「1HOP」、LINEの友だちの友だちを「2HOP」、LINEの友だちの友だちの友だちを「3HOP」と表示。見ず知らずの人たちの顔が並ぶ従来のマッチングサービスとは異なり、HOPは自分のLINEの友だちと繋がりのある人たちが一覧で表示される設計になっている。
また、LINEの高いセキュリティ基準に加え、信頼性・安全性・プライバシーの保護を重視し、24時間365日、厳重なサービスの監視体制が導入されているのも特徴だ。
すでに「マッチングした人が、実は大学の時の友だちの友だちだった」や「共通の知り合いがいることで、仲良くなるまでに時間がかかりませんでした」など、LINEの友だちの繋がりを活用したHOPならではの体験の声が多く寄せられている。開発担当の森田麻美氏によれば「登録後のリテンション率(継続率)は高い」とのこと。
友だちの繋がりをオンラインで可視化

そんなHOPの開発がスタートしたのは約2年前。マッチングサービスとしては後発の参入だったからこそ、まずは市場調査を実施。その結果をもとに、「従来のマッチングサービスでユーザーが感じていた課題を解決するものにした」と企画担当の本多りか氏は語る。
「市場調査をした結果、欧米と比べて日本はマッチングサービスで見ず知らずの人と出会うことに抵抗を感じている人が多く、そこが懸念点となっていました。それを踏まえ、日本の人たちにとって馴染みがある形で“健全な出会いの機会”を提供できるかを考えたときに、友人の紹介をオンラインでも実現すればいいのではないか、と考えました」(本多氏)
新たな出会いを求めて、友人に「誰か良い人がいたら紹介してくれない?」と相談するのは、昔からよくある話だ。HOPはそんな体験をオンラインに置き換えたサービスと言える。
「マッチングサービスが普及する前の出会いの機会は、友だちの友だちと合コンやホームパーティーをして紹介してもらうことが一般的だったと思います。そうした『自分の友だちから派生した繋がり』をオンラインで可視化したのがHOPです」(本多氏)
また森田氏によれば、開発でこだわったのは「繋がりの見せ方」だという。
「HOPがおすすめする相手は、どの友だちと繋がっている人なのか。アプリを立ち上げた際、そこは直感的に分かるように工夫しました。また、友だちの友だちが一覧で表示される体験は従来のマッチングサービスにはないので、そこにインパクトを感じるそうです。中には『身近にカッコいい、かわいいと思う人がいたんだ』と驚く人もいます」(森田氏)
従来のマッチングサービスを使うにあたって、悪質なサクラ(会員であることを装っている人)や業者が潜んでいるかを気にする人は多い。その点に関して、「HOPはLINE認証をしなければ登録できないため、サクラや業者が存在しません」と本多氏は語る。
現在、HOPを利用するユーザーの男女比率は男性が多いそうだが、ユーザーの平均年齢は25〜26歳ほど。若い世代から支持を集めている。
「Facebookログインを活用したマッチングサービスも当時は画期的だったと思いますが、ここ数年でさまざまな切り口のサービスが立ち上がった結果、一周まわって友だちの友だちと出会うコンセプトが受け入れられているのかなと思います」(本多氏)
HOPではまた、LINEの繋がりを活用せずにすべてのユーザーから気になる相手を探したり、「#フィルムカメラが好き」のような、趣味嗜好を記載したハッシュタグから相手を探したりもできる。これらの機能によって、マッチングの形を広げている。
「今後はマッチングサービスとして、友だちの友だち以外にも、共通の趣味や職種が近いなど、もっと色んな“繋がりの形”を盛り込んでいきたいと思っています」(森田氏)
従来の紹介方法は「繋げる側の負荷」が高い

そして、2021年1月15日にベータ版がリリースされた「MEEET(ミート)」も、友だちや友だちの友だち、3人でつながることをコンセプトにした招待制のマッチングサービスだ。
MEEETは前述のHOPとは少しサービスの趣旨が異なっており、異性間の恋愛など、性別・目的について限定したものにはなっておらず、友だちづくりや仕事のつながりを増やすなど、割と幅広い用途で使えるマッチングサービスとなっている。
また、一般的なマッチングサービスは2者間で「Like」し合い、マッチングしたらメッセージのやり取りが可能になるが、MEEETはサービスの設計が違う。Likeできるのは「友だちの友だち」のみで、マッチングしても本人たちは分からず、「共通の友だち」にだけ通知が飛び、その人が承認することで3人のコミュニケーションが始まる設計となっている。
開発したのは、スタートアップ界隈では“カズワタベ”の名前で知られてる渡部一紀氏と、友人の宇野雄氏と庄司嘉織氏。本業のかたわら、3人でMEEET合同会社を立ち上げ、週末の時間を活用したプロジェクトとして、MEEETの開発を進めていったという。
「もともと小さいチームでの開発に適したプロダクトを思いついたら、開発しようと思っていた」と渡部氏は語り、さらにこう続ける。
「偶発的に飲み会の場で友だちの友だちと仲良くなったり、この2人が繋がったら面白そうだなと思って友だち同士を繋げたりといった経験は多くの人がしていると思います。こうした友だちの輪は少しずつ広がっていくものなので、スタートアップ的な手法で急成長させるのは適していないと思い、週末プロジェクトとして進めることにしました」(渡部氏)
また、マッチングサービスだった背景には、渡部氏自身が友だち同士を繋ぐ際に感じていた「紹介しても大丈夫か考える心理的負荷が高い」という課題もある。
「友だちから『あの人を紹介してよ』『周りにこういう人いない?』と紹介のリクエストがあったときに、友だち同士は相性がいいのか、この人に紹介しても大丈夫かと考えた上で友だち同士を繋ぐ必要があります」
「また、AさんにBさんを紹介してもらえないかお願いするときも、AさんとBさんが仲良いことを自分が把握していないといけない。繋げる側と繋いでもらう側の両方とも、割と心理的負荷が高いなと思ったんです」
「今まで友だち同士を繋げる機会はある種の偶発性に頼っていたのですが、これをもっと積極的に起こす手段として、お互いに興味があることが分かるようになればいいのではないか、と思ったんです。それがMEEETのコンセプトになっています」(渡部氏)
「メッセで繋ぐ」をもっと効率的に
開発するにあたって参考にしたのは、Facebookメッセンジャー。「仕事をしていると、よくFacebookメッセンジャーで新しいスレッドをつくり、友人・知人を繋げることが多々あると思うのですが、あれをどうにかしたいと思ったんです」と渡部氏は語り、その結果、“3人でつながる”ことに特化したサービスになったという。
「オフラインで新しい人と会う際、いきなり見ず知らずの人と2人で会うことは、ほとんどないと思います。きっと何かしら共通点がある人が同席して会ってたはずです。この共通点がある人がいることによる信頼感、安心感の提供は意識していました」(渡部氏)
現在、MEEETは初期のmixiのように登録済みのユーザーから招待されないと登録できない仕様になっているほか、招待できる人数は10人となっている。そのため、良い意味で利用のハードルが高く、“変な人がいない”などサービスの安全性も保たれている。
コロナ禍で、ますます見ず知らずの人に会うことがはばかられるようになった今の時代。これからは、自分にとって身近な存在である“友だちの友だち”と会ったり、繋がったりするのが主流な出会い方になっていくのかもしれない。