「Notion」を開発し提供するNotion Labsの日本第1号社員・西勝清氏
  • 会社の情報を集約、メンバー管理・オンボーディングにも活用
  • 年内予定の日本語化は順調、気になるAPI公開時期は?

今、情報共有ツール「Notion」が熱い。Notionの魅力は、社内のドキュメントや議事録共有、プロジェクトやタスクの管理など、仕事に必要な情報を集約して整理できる点だ。日本でも、これまで別々のツールを駆使して分散管理されていた情報を、Notionを使って一元化する企業や、「最初からNotionだけで情報共有している」というスタートアップも出てきている。

Notionは、情報の一部を社外へ「ウェブサイト」として公開することもできる。この機能を使って、Notionで企業サイトやサービス紹介サイト、FAQページ、採用ページを作成する企業も増えてきた。

最近では、メルカリが子会社として1月28日に“再設立”したソウゾウのコーポレートサイトがNotionで作られ、公開されている。またスタートアップだけでなく、NTTコミュニケーションズがオンラインコミュニケーションツール「NeWork」のユーザー向け利用ガイドページに利用するなど、大手企業での活用も始まっているようだ。

サービスを開発・運営するNotion Labsには2020年、日本第1号社員として西勝清氏が加わり、2021年中には日本語化するとの表明もあった。今年一層、日本での利用が広がりそうなNotionは、具体的にはどのように使われているのだろうか。企業や組織での活用事例や、これからのNotionの展開についてHead of Sales(営業責任者)の西氏に聞いた。

会社の情報を集約、メンバー管理・オンボーディングにも活用

Notionには多彩な機能がそろっているが、使い方の根本にあるのは「ノート/ドキュメント管理」「プロジェクト/タスク管理」「チームwiki」の3つの機能だ。そしてカスタマイズしやすいという特徴から、さらに利用例は細分化してきている。

チーム(組織)の「情報置き場」としてのNotion
チーム(組織)の「情報置き場」としてのNotion 画像:Notionのプロダクト紹介サイトより

特にスタートアップでNotionを取り入れている企業では、「業務についての情報共有がNotionだけで完結、またはNotionとSlackを中心に行われているケースが多い」と西氏。共有される情報は、ミッション・ビジョン・バリューといったチームの理念をはじめ、経費精算や福利厚生のマニュアルなど、チームメンバーが共通して知っておくべきもの。“大体のドキュメントがNotion上にある”という状態に集約されることで、新たに加わるメンバーもNotionさえ見れば、社内の状況を一通り把握できる。

議事録管理、タスク管理としての用途では、全社の議事録、あるいはタスクの概要をデータベース(DB)化して、Notion上に保存。個々の議事録やタスクの内容は、DBからノートとしてリンクされる各ページで確認できる。

全社向けの情報とは別に、プロジェクトごとに議事録やタスクのDBをつくっている企業もある。プロジェクトのDBと全社のDBをリレーション(関連付け)機能で連携させれば、1カ所に情報を入れることで、ほかの情報のページへ自動的に反映して見せることも可能だ。

Notionには、チームで使うページのテンプレートとして、社内用のホームページ、タスク管理DB、プロジェクトDB、チーム別のページなどが用意されており、実際にこれらをベースに利用している企業やチームが多いと西氏はいう。

最近、よく使われている用途として西氏は、メンバー紹介やメンバー管理を挙げる。これはノート/ドキュメントや議事録管理のDBとしての用途を「人」に応用したもの。詳細な議事録がDBからリンクされた各ページで確認できるのと同様に、メンバーをデータベース化しつつ、個々人の詳細なプロフィールや自己紹介が各ページで確認できるようになっている。

「社内の必要な情報を一覧できる」「各人の詳細プロフィールを集めてメンバー管理ができる」という2つの用法を組み合わせて、オンボーディング(組織への人材定着支援)に活用するスタートアップも増えている。

「Web Clipper」、いわゆるブックマーク作成用のブラウザ拡張機能も好んで使われているようだ。スタートアップやエンジニア・クリエイターの間では、勉強会のテーマに関連するウェブ上の情報をクリップして収集しておき、これに基づいて会が進められる例もあるそうだ。

Notion Web Clipper
Chrome拡張などでNotion上に簡単にブックマークとメモが作成できる
Web Clippierで生成されたページ
Web Clipperで生成されたページ

またOKR(Objectives and Key Results:Googleなどでも使われている目標管理の手法のひとつ)をNotionで行う企業もあるという。これはリレーションで関連付けられたDBの値を引用して、別のDBに表示する機能(ロールアップ)を活用したもの。このケースでは、チーム内1人ひとりの目標達成率をロールアップしてチームの達成率として総括し、別のページで表示する、といったことが行われている。

年内予定の日本語化は順調、気になるAPI公開時期は?

Notionでは、データベースに格納したタスクや議事録などの情報を、簡単に別の見せ方(ビュー)に切り替えられる。基本のテーブル(表)形式から、カンバン、ガントチャート、カレンダー、リスト、ギャラリー(カード)形式まで、ビューを切り替えることで、各自が好きな見方で情報を確認することができる。

カレンダー形式での表示例
カレンダー形式での表示例
表形式での表示例
同じ情報をカレンダー形式、表形式などワンタッチで簡単に切り替えて表示できる

「データベースがリレーションによってつなげられる点、好きなビューで情報を閲覧できる点が、他のツールとNotionの大きく違うところではないか」と西氏はいう。この2つの特徴により、Notionでは自分が見たいビューで、自分に関連付けられた情報だけを取りだして、閲覧したり編集したりすることが可能となっている。

半年前の2020年7月の時点では、全世界で400万人超とされていたNotionのユーザーは、2021年1月現在で1000万人を超えた。日本のユーザーの割合も多く、2021年中の日本語化も発表されている。日本語化の進捗は「順調」(西氏)とのことだった。

西氏に「Notionが人々に使われている大きな理由は何だと思うか」と質問してみると、「アイバン(Notion Labs CEOのIvan Zhao氏)は先日、インタビューで『プロダクトに愛を注いでいるから』と答えていましたが」と笑いながら回答した後で、「オールインワンであるというところと、フレキシビリティがポイントだと思います」と説明した。

「ユーザーへインタビューしていると『ツールがバラバラで情報が分散している。そのため探すことも大変だし、アウトプットの面でも、ずっと保存されるべき情報ではないのでは、と感じて入力するモチベーションにつながらない』という課題感がある。一カ所に情報を集中することによって、探す手間も省けますし、入力する側も(情報が可視化されて)『会社、チームの資産になるものだから、しっかり書いていこう』という意識になる。『だから使っているんです』という声が多いです」

「フレキシビリティという側面では、ユーザーが『こういうことがやりたいな』と思うことが、今までのツールでは『あとちょっと、一番自分がやりたいと思うところまではカスタマイズできない』というところがありました。その『自分のやりたいように細かなカスタマイズができる』という点が、Notionが日本のユーザーに特に気に入っていただいているんじゃないかと感じています」(西氏)

また、デザインやドキュメントツールとして“サクサク”動く点も評価を得ていると西氏は語る。

現在、ほかのツールとの連携は、Notionへの編集があったときのSlackへの通知のみ。ユーザーにNotionへの要望を聞くと、西氏は必ず「API公開はいつですか」と聞かれるという。APIについて西氏は「現在プライベートベータという状況。今年春のパブリックベータ公開に向けて注力しているところです。APIが公開されれば、多種多様なツールとの連携ができていくと思うので、大変楽しみです」と明かす。

DIAMOND SIGNALでは、実際にNotionを利用する企業・団体にも、組織での使い方、使ってよかったことなど、事例を現在取材している。近日中にその内容も紹介していく予定だ。