
ZOZO傘下でECサービスを提供するアラタナの創業者・濱渦伸次氏が、コロナ禍で痛手を受けるホテル業界にあえて参入すると明かしたのは2020年6月のことだった。濱渦氏が率いるホテルのD2Cブランド「NOT A HOTEL」は2月10日、サービスの概要を公開した。
そのコンセプトは「ホテルとしても運用可能な住宅」だ。NOT A HOTELでは、各室を住宅として2021年夏から順次販売開始する。購入したオーナーは、住宅や別荘として部屋を利用できるだけでなく、旅行や出張で家を空ける際には、専用アプリですぐにホテルとして運用することが可能だ。ホテルとしてのオペレーションはNOT A HOTELが行うため、オーナーはアプリで不在の日を指定するだけで、簡単にホテル運営が可能となる。

第1弾となる今夏の販売では、東京・渋谷の「hotel koe tokyo」や「千駄ヶ谷駅前公衆トイレ」などを手がけたSUPPOSE DESIGN OFFICEが、9棟の設計・デザインを担当。販売は全てオンラインを通じて行う。

購入したオーナーは、順次サービス開始が予定されている、ほかのNOT A HOTELを相互に利用することもできる。宿泊費は清掃費用などの実費を除いて無料だ。
濱渦氏はnoteに公開した自身の記事で「住宅としても、ホテルとしても、とにかく面白くてワクワクするものを作っていきたい」とコメント。今後はツリーハウスやトレーラーハウスのようなラインナップも検討しており、自然の中だけでなく、都心にも準備していく予定だという。
多拠点に住み放題になるサービスとしては、これまでにも定額制の「ADDress(アドレス)」や「HafH(ハフ)」などがあった。また、賃貸では、NOT A HOTEL同様、外泊する日の家をシェアすることで家賃を安くすることができる「unito(ユニット)」といったサービスもある。
今回NOT A HOTELが提示したのは、ホテルとして運用することを前提に設計・建設された住居を購入し、運営まで任せられるというスタイル。かつてのリゾートマンションやコンドミニアムを、ポストコロナ時代の新しい解釈で再発明したサービスとも言えるかもしれない。
濱渦氏は上述したnote記事で、コロナ禍を背景に地方移住者や別荘需要も増加していると指摘。「ホテル」「住宅」、在宅ワークを含む「オフィス」の境目が溶け始めているとして「NOT A HOTELはそれらが重なりある部分に可能性を感じている」と述べている。
濱渦氏はまた、オーナーだけでなく「ホテルとして利用するユーザーの皆さんにもスペシャルな体験を準備しています」とも示唆している。無人チェックインやボットによるレストラン予約等のサービス、IoTシステムによる部屋のコントロールや精算システムなどの機能が搭載されたNOT A HOTEL用のアプリ開発については、これまでにも触れられてきたところだが、そのほかの機能やユーザー体験についても気になるところだ。
「ホテルとしての利用も、住宅としての暮らしも、世界をもっと楽しく自由なものにしていく事が僕たちのミッションです。NOT A HOTELがつくるあたらしい暮らしに、どうぞご期待ください!」(濱渦氏)とのことなので、続報を待ちたい。