
- その1 “会話の内容”よりも“誰と話すか”が重要
- その2 “ミュート”はせず“相づち”を打って話す
- その3 質問は答えやすいところから深掘りする
- その4 途中参加者にも会話の流れを共有する
- その5 “マイク離さないおじさん”にはならない
日本で招待制・音声SNSの「Clubhouse」が爆発的な盛り上がりを見せはじめてから早くも2週間。筆者が見た限りでは1月23日ころからスタートアップ経営者を中心にIT業界関係者から利用が進み、そこから一気に芸能人など多くの著名人が配信を開始した。多くのメディアが「音声版Twitterとも言える次世代SNS」と取り上げたこともあり、最近では一般ユーザーも増加した印象だ。
だが、Clubhouseは招待制。登録時には1ユーザーあたり2人分の招待枠しか持たないため、「やっと参加することができた」という人も少なくないだろう。そしてユーザー同士が会話する「ルーム」では、自ら発言しない“聞き専”に徹しているユーザーも多いのではないかと思う。
そこでDIAMOND SIGNALでは、すでにClubhouseを積極的に活用し多くのリスナーを集める3人の起業家から、Clubhouseで発信する上で意識しているコツを聞いた。これからClubhouseで配信を始める際には参考にしてほしい。
参加してくれたのは、日本発音声メディア「Voicy」を運営し、音声サービスにも詳しいVoicy代表取締役の緒方憲太郎氏、農家や漁師といった生産者から食材を取り寄せできる産直通販サイト「食べチョク」を運営し、Clubhouse上でも生産者をゲストにした発信を毎日続けているというビビッドガーデン代表取締役社長の秋元里奈氏、そして今年の7月に沖縄県・石垣島にライフスタイルホテル「THIRD石垣島」をオープンし、Clubhouse上では起業家から芸能人までのルームでモデレーターを務めるスターリゾート代表取締役の佐々木優也氏だ。なお取材も3人に録音と記事化の承諾を得た上で、Clubhouse内で実施した。
その1 “会話の内容”よりも“誰と話すか”が重要
Clubhouseは優れた音声コンテンツが揃っているプラットフォームというよりは「人と人とが知り合うための場」として捉えているという緒方氏。自身でルームを開く際には“会話の内容”がどうかではなく、“誰と話すか”を意識して準備を進めるという。
「Clubhouseではそれぞれのスピーカーが自分の持論をしゃべり続けるルームが多いので、そうならないように注意しています」と語る緒方氏。以下の5点に注意して、上手く会話のキャッチボールができる相手を選んでいるという。
- スピーカー(登壇者)には一方的にしゃべり続ける人ではなく、話を聞ける人を選ぶ
- あるスピーカーが話したらその話の上に次の話題を乗せられる人が理想的
- 内容は事前に準備しすぎない。出たとこ勝負でさまざまな方向に進んだほうが面白い
- お題について「全てを話しきろう」とすると面白くなくなる危険性もある
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何よりスピーカーやモデレーターをする自分自身が会話を楽しめることが重要
その2 “ミュート”はせず“相づち”を打って話す
「Zoom」や「Google Meet」といったビデオ会議ツールでは、自身の発言時以外は基本的に音声をミュートに設定している人は多いだろう。だが、Clubhouseは声のみのやりとりになるので、お互いに顔が見えない。相手がミュート状態では「本当に話を聞いているのか」と心配になることもある。
スピーカーの多くがミュート設定にしていては会話が盛り上がっているようには見えずらい。そこで佐々木氏はあえてミュートを外して相づちを打つことが重要だと説明する。
「顔が見えない分、大げさに相づちを打つことを心掛けています」と佐々木氏は言う。緒方氏は「ミュートのスピーカーが多いと寂しい印象になってしまい、ユーザーは『この部屋はでたいな』と思ってしまいます。何よりも楽しそうにしゃべることが重要で、元気を届けられるようにしゃべるのが基本中の基本だと思います」と付け加えた。
その3 質問は答えやすいところから深掘りする
ビビッドガーデンでは農家や漁師といった生産者をClubhouseに招き、「農家漁師の井戸端会議 #食べチョクハウス」と題したルームで毎日配信している。このルームには農家や漁師であれば誰でも参加できるため、初対面の生産者と話すことが多いと秋元氏は言う。
相手が緊張していたことを後にTwitterでの投稿などで知ることもあるという。自己紹介をお願いしても「何を作っているのか」といった基本的な情報の説明を忘れてしまう生産者もいるため、「答えやすい質問をする」ことで相手が答えるべき内容を明確にしているそうだ。
「すぐに答えられるような質問から始めて、徐々に気になった内容を深掘りしていくように心掛けています」(秋元氏)
その4 途中参加者にも会話の流れを共有する
Clubhouseでは各ルームへの入退室が自由だ。リスナーは配信開始時間に間に合わなかったとしても入室でき、会話がつまらなければすぐに退室することも可能だ。だが、途中で入室したリスナーが会話の流れについていけないことも多いと秋元氏は言う。
「お題や会話の内容について適度に繰り返し説明することで、途中から入室したリスナーにも内容が理解しやすいようにしています」(秋元氏)
その5 “マイク離さないおじさん”にはならない
Clubhouseでは日本社会特有の“トップダウン”な人間関係を目の当たりにすることも珍しくない。中高年男性が説教や演説が繰り広げ、一方的にしゃべり続けているルームも筆者は多く目の当たりにしてきた。
佐々木氏は「Clubhouseでは会話がテンポ良く進むことが重要なので、10秒以上マイクを握らないようにしましょう」とアドバイスする。
「最近は“マイク離さないおじさん”が増えたように感じます。ですが、リスナーはある特定のユーザーの講演会を聞きに来たわけではありません。しゃべる時間が長いとフォロワーが増えるんじゃないかと思っている人もいるのではないかと推測しますが、マイクを回しましょう」(佐々木氏)
もちろんClubhouseの楽しみ方は人それぞれだ。俳優の浅野忠信氏は自身のみがスピーカーとして参加するルームでぽつりぽつりと独り言のようにしゃべっていたし、「アナゴハウス」という名のルームでは人気アニメ「サザエさん」に登場するキャラクターを中心とした声真似合戦が繰り広げられていた。
だが、コロナ禍で「偶然の出会い」が失われている今、Clubhouseは声だけで気軽に繋がりを増やせるチャンスの場だと言える。多くのリスナーを集める3人の起業家が意識する上記5つのコツは、新たに知り合ったユーザーとの会話を弾ませる上では参考になるだろう。