Levettyが手掛ける「SmartQA」ではiOSアプリのE2Eテストをノーコードで自動化できる
Levettyが手掛ける「SmartQA」ではiOSアプリのE2Eテストをノーコードで自動化できる すべての画像提供 : Levetty
  • エンジニアでなくてもE2Eテストを自動化、UI変更にも対応
  • 10歳からプログラミング、iOSで10個以上のサービスローンチを経験

スマホアプリを運営する企業にとって、 「E2Eテスト(動作テスト)」はユーザーに快適な体験を提供する上で絶対に欠かせない業務だ。実際に多くの企業ではアプリの品質を担保するべく、この工程にかなりの工数をかけている。

従来テスト業務はQA(品質保証)担当者が手動で実施するか、外部の専門企業に委託することが多かった。知見のあるエンジニアがいればテストを自動化することで担当者の負担を減らすことができるが、アプリのUIを変更するたびにテスト用のコードを書き直す必要があるため“メンテナンスコストの高さ”がネックになりやすい。

こうした課題を解決する目的で作られたのが、2月26日にベータ版をローンチした「SmartQA」だ。

SmartQAの特徴はブラウザ上の簡単な操作だけでiOSアプリにおけるE2Eテストのシナリオを作成し、テスト業務を自動化できること。プログラミングのスキルが必要ないため、エンジニア以外のメンバーでもテストの自動化に取り組める。加えてAIを活用した自動修復機能により、UIが変更された際にはテストのシナリオを自動で調整してくれる点もポイントだ。

エンジニアでなくてもE2Eテストを自動化、UI変更にも対応

SmartQAではアプリをアップロードし、タップするだけでテストシナリオを作成することが可能
SmartQAではアプリをアップロードし、タップするだけでテストシナリオを作成することが可能

SmartQAの使い方はシンプルだ。テストをしたいアプリをSmartQAにアップロードするとウェブ上でアプリが立ち上がるので、まずは表示される画面をタップしながらテストケースを作る。次に作成したテストケースの各操作に対して、「このUI要素は●●のようなテキストであって欲しい」「同じサイズであって欲しい」などの条件を定義していけば基本的な準備は完了だ。

あとは「アプリの新しいアップデートがあるたび」「毎週火曜日と金曜日の23時」など自分たちでタイミングを設定しておくと、それに合わせて自動でテストが実行される。

UI要素ごとにテストの条件を設定(アサーション)していく際にもコーディングは必要ない
UI要素ごとにテストの条件を設定(アサーション)していく際にもコーディングは必要ない
タイミングを設定しておけば、自動でテストが実行される
タイミングを設定しておけば、自動でテストが実行される

SmartQA開発元のLevettyで代表取締役を務める岩佐晃也氏の話では「リリース前に何百件ものテストケースを手動で実行しているようなケースも多く、現場の負担が大きかった」という。これまでテストを自動化するにあたっては“プログラミングスキル”が1つの壁になっていたが、SmartQAではノーコードで実現できる仕組みを作ることでその敷居を下げたわけだ。

簡単にシナリオを作成しテストを自動化できるようになると、テストの頻度も増やせるようになる。近年は多くのスマホアプリで細かい仕様変更や機能改善が頻繁に実施され、その開発スピードがサービスの成長を決める要因になることも珍しくない。テストのサイクルを早めることは「サービス全体の開発サイクルやリリースサイクルを早められる」(岩佐氏)ことにも直結し、その点でも効果的だという。

またボタンのデザインなどUIの仕様が変わるとテストコードが壊れてしまうため、その都度新しいコードを用意しなければならない点も自動化の大きな課題となってきた。そこでSmartQAではUI変更があった際にAIを活用して対象の要素を発見し、テストシナリオを自動で修復する機能を開発。自動化におけるメンテナンスコストを大幅に下げている。

テストシナリオの自動修復機能も特徴だ
テストシナリオの自動修復機能も特徴だ

10歳からプログラミング、iOSで10個以上のサービスローンチを経験

岩佐氏はこれまで複数のアプリ開発にiOSエンジニアとして携わってきた。10歳の頃にプログラミングを始め、京都大学在学中には複数のスタートアップに勤務。iOSエンジニアとして10個以上のサービスローンチを経験した。

岩佐氏にとって1つの転機となったのが、2020年の夏に“ウェブアプリのE2Eテストを自動化できるサービス”の存在を知ったこと。iOSエンジニアとしての経験を活かせれば、iOSアプリのE2Eテストにおいても同じような形で便利なサービスが作れるかもしれない──。

そんなことを考えていた時、アメリカでモバイルアプリのテストを自動化するサービスに取り組む「Waldo」が650万ドルの資金調達を実施したニュースを見て、自身もこの領域でチャレンジすることを決めた。

SmartQA開発元のLevettyで代表取締役を務める岩佐晃也氏
SmartQA開発元のLevettyで代表取締役を務める岩佐晃也氏

10月頃から本格的にSmartQAの開発をスタートし、12月より数社にクローズドアルファ版を提供。テストユーザーにフィードバックをもらいながら機能開発を進め、本日のベータ版ローンチに漕ぎ着けた。

まずはQAチーム(もしくはQA担当者)を有するスタートアップやベンチャー企業を中心に順次サービスを提供していく計画とのこと。価格は月額数万円程度の定額モデルを予定していて、スタートアップ割引なども検討しているという。

この領域では、日米に拠点を構え300社以上にウェブアプリのテスト自動化プラットフォームを展開してきた「Autify」が4月にモバイルアプリ版をローンチすることを発表したばかり。これらのサービスを機に“モバイルアプリのテスト自動化”が加速していきそうだ。