LayerX 代表取締役CTOの松本勇気氏 画像提供:LayerX
LayerX 代表取締役CTOの松本勇気氏 画像提供:LayerX

DX関連サービスの開発を手がけるLayerXは3月1日、代表取締役CTOに元DMM.com CTOの松本勇気氏を選任したことを発表した。これにより、LayerXの代表取締役は松本氏と福島良典氏の2人となるため、同社は“共同代表体制”に移行する。

松本氏は今後、代表取締役CTOとしてブロックチェーン技術を活用した、不動産・インフラを中心とする実物資産のアセットマネジメント事業を手がける合弁会社「三井物産デジタル・アセットマネジメント(以下、MDM)」を推進するMDM事業部、ブロックチェーンや秘匿化技術の技術開発及び技術の社会実装に長期的な目線で取り組む研究開発組織「LayerX Labs」を管掌する。

松本氏といえば、福島氏が創業した「Gunosy(グノシー)」でCTOを務めていた人物。なぜ、松本氏は再び、福島氏と共に歩むことを決めたのか。

自分の課題感とLayerXの向かう先が一致

──どういった経緯でLayerXの代表取締役CTOに就任することになったのでしょうか?

松本:GunosyのCTOを退任した後も福島とは継続的にコミュニケーションを取っていました。その中で、自分が取り組みたい社会課題とLayerXの方向性が揃ったタイミングだったのでLayerXの代表取締役CTOに就任させていただく流れになりました。

また、共同代表に技術者である私を据えることで、LayerXが向かう先における技術の重要性をはっきりと示していく狙いもあります。もともと、自分がDMM.comという大規模な組織の改革に乗り出した理由のひとつが日本全体でデジタル化、組織変革のノウハウが将来ますます求められるようになるだろう、という課題感にありました。

2025年ごろから、そうした潮流が強くなっていくだろうという想定に対して、昨年春からのコロナ禍による急激な環境変化で、想定よりも早くさまざまな企業や行政の人たちから、デジタル化を必要とする声が聞かれるようになっています。この環境下で、自分のノウハウをソフトウェア活用に悩む企業や行政のためにより役立てたい、その活動によりフォーカスしたい、と考えるようになりました。

この課題感とLayerXの向かう先が一致していたため、「一緒に戦いたい」という思いが強くなり、オファーを受諾しました。

──なぜ、1000人規模の大きな組織からLayerXだったのでしょうか?

松本:先述の社会課題に対する取り組みは1000人規模の組織でも、小さな組織でもさまざまなアプローチから取り組むことができます。しかし、多数の事業を抱える組織を支える立場では、どうしても領域を絞って活動することが難しい。一方、時代はどんどん前に進んでいこうとしています。

今の日本を「デジタルで生まれ変われる最後のチャンス」というふうにも捉えている中、最も適した場所はなにかを悩み続けた結果、この領域に自分をフォーカスさせてくれて、なおかつ同様の思いを抱いた組織で戦おうと考えました。その組織がLayerXだったんです。LayerXはこうした課題に取り組むには非常に良いポジションにあります。

さまざまな大企業との連携や行政との電子投票などの取り組みが進んでおり、実際の現場で抱える課題に眼前で取り組める環境がそこにありました。また、少数精鋭の高い開発力を持ったチームでもあり、このチームがあればより大きな事業を成せるのではないか、と考えています。

チームの力がLayerXの源泉

──それ以外に松本さんはLayerXの可能性をどう見ていますか?

松本:現在のLayerXでは、SaaSを通じた企業のソフトウェア活用の支援、三井物産との合弁会社である三井物産デジタルアセットマネジメント、そしてブロックチェーンにおける次世代のプライバシー保護技術「Anonify(アノニファイ)」を始めとしたコア技術を開発するLayerX Labsという3つの軸を持っています。

その一つひとつが目をみはる速度で開発・改善されており、このチームの力がLayerXの源泉となっています。この組織の力を高め続けることで、それぞれの領域で今後5年、10年の間に社会に何かしらのインパクトをもたらせるものが、いくつも生まれるのではないかと思っています。

──代表取締役CTOに就任後、LayerXでどのようなことを行っていく予定ですか?

松本:代表として、もちろん全体を見ることにはなるものの、福島とそれぞれ重心をずらしてフォーカスする領域を設けることになります。私の方では、三井物産デジタルアセットマネジメントとLayerX Labsを主に管轄していくことを予定しています。

この2つの組織の中で、より深い課題の理解や継続した改善、コアとなる技術の磨き込みと実際の活用事例づくり、さらには見つけた課題から新たな事業をを生み出していきたいと思っています。