画像:InnerSlothのホームページより
画像:画像:InnerSlothのウェブサイトより
  • 宇宙を舞台にした「人狼ゲーム」
  • コミュニケーションが苦手な人でも楽しめる
  • Among Usはなぜヒットしたか?
  • 常時接続時代のゲームのあり方

皆さんは「Among Us(アマングアス、アマンガス)」というゲームをご存知だろうか?

2020年9月にはYouTube上で「Among Us」に関するビデオの視聴数が40億を突破するなど、“2020年に大ブレイクしたゲーム”としてSNSなどで話題を集めているが、実は発売から2年ほどはほとんどの人がゲームの存在すら認知していなかった。

Among Usの原型が誕生したのは2018年6月。当時、社員がわずか3人しかいなかったInnerSlothが「Space Mafia(スペースマフィア)」という名前のゲームを発売した。このゲームこそが後に世界中で大人気となる、Among Usの初期バージョンだ。

2年ほど鳴かず飛ばずだったゲームがなぜ、大ヒットするに至ったのか。その背景には、コロナ禍で人々のコミュニケーションの形が変化したことがあると思う。今回、スマホゲーム向け通話アプリ「パラレル」という常時接続型サービスを提供する筆者が、日々感じていたゲームやオンラインコミュニケーションの変化を交えて、Among Usの流行についてひもといていきたい。

宇宙を舞台にした「人狼ゲーム」

Among Usは一言で説明するなら、「スペース人狼ゲーム」。若者の間で大流行している会話と推理を中心にしたパーティーゲーム“人狼“の舞台を宇宙船に移し、より強くゲーム要素を足したものだ。そのため同ゲームは別名「宇宙人狼」とも呼ばれている。

ゲームに参加できるプレイヤー数は4〜10人。参加者はインポスター(詐欺師を意味する、人狼役)とクルー(人間)の二手に分かれ、インポスターになった人はクルーになりすましながらクルーをすべて殺すこと、一方のクルーは宇宙船内に用意されたタスクをすべてこなすか、インポスターを探し当てることが目的となっている。

舞台となる宇宙船内にはさまざまなギミックが用意されており、クルーは全員が殺される前にすべてのタスクを完了させることで宇宙船から脱出することができる。インポスターはクルーが脱出するのを阻止するような仕掛けを作動させることも可能だ。

基本的にインポスターはバレないように、宇宙船内でタスクをこなすクルーを殺害していくが、殺害されたクルーが見つけられると緊急会議が開催される。この緊急会議では殺害されたクルーの遺体の場所などをもとに、不審な動きをしていたプレイヤーが誰なのかを話し合い、多数決で選出されたプレイヤーは追放されてしまう。

このようにAmong Usは殺害、追放の緊急会議、脱出作業が繰り返し行われていくことで勝敗が決まるゲームとなっている。所要時間も1ゲーム10分ほど。ルールもシンプルで、誰もがカジュアルにゲームを楽しむことができる。

コミュニケーションが苦手な人でも楽しめる

Among Usの最大の特徴は、従来の人狼ゲームにシンプルなオンラインゲームの要素を掛け合わせた点にある。人狼は参加者同士のコミュニケーションをメインに村人に化けた狼人間を探し当てるゲームだが、Among Usは特徴的なアバターを操作しながら、クルーに化けたインポスターを探し当てるゲームとなっている。

また、インポスターに殺されたとしても、幽霊となった自分のアバターを操作してタスクをこなせるため、殺害された人もゲームが終わるまで楽しめる。人狼というゲーム性を担保しつつも、コミュニケーションが苦手な人もずっとゲームを楽しめるそのハードルの低さが大量のユーザーに親しまれるようになった要因だと思う。

画像:InnerSlothのホームページより
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Among Usはなぜヒットしたか?

Among Usには以下のような特徴がある。

  • クロスプラットフォーム対応なので、今持っている端末で誰でも始められる
  • ゲーム性は非常にシンプルだが奥深い駆け引きが存在する
  • 1ゲームが10分程度で長過ぎず、短過ぎずちょうど良い
  • おしゃべりが苦手な人でも楽しめる仕掛けがたくさんある

そのほか、最近になって一気に世界中でヒットした背景には、下記2つの要因があると考えている。

  • プレイには最低4人必要で、大人数であればあるほど面白い
  • 配信映えするため、動画配信サイトで拡散されやすい

まず、Among Usをプレイするためには一緒にゲームする人を最低でも3人は用意しなければならず、一緒に遊ぶためにはゲームに招待する必要がある。実際、Discordなどのコミュニティ系サービスでプレイする人を募っているケースも多い。

コミュニケーションが勝敗の肝となっているため、友人を招待して始めることで口コミを急増し、大ヒットにつながったのではないか、と考えている。

また、特徴的なアバターが宇宙船の中でタスクをこなしながらも、毎回異なるコミュニケーションの駆け引きで誰がインポスターなのかを暴いていくスタイルのため、実は単調に見えて奥が深い。

そのため、YouTubeやTwitchなどの動画配信サービスとの相性も良く、有名配信者が有名配信者を呼び込む形で急速に広がったことで、お金をかけてプロモーションすることなく人々の目に触れるようになった。

実際、Among Usはサービスリリースから2年近くはユーザーがほとんどいなかったが、Sodapoppinという海外の超有名Twitch配信者がゲームプレイを配信してから、その周りの有名実況者も配信を開始したことで一気に認知が拡大した。

ちなみに、日本ではVTuberが最初に配信を開始したことで人気に火がついたと言われている。もともと親しみのあった「人狼」というキーワードの入った「宇宙人狼」がSNSでバズワードになったことも大きいだろう。

常時接続時代のゲームのあり方

この10年でスマートフォンは完全に浸透し、5Gの開始などにより通信環境も劇的に向上してきている。そうした中、コロナによって人々が強制的に分断されることになった結果、Among Usをはじめとしたゲームも新たな形で進化をしている。

ゲームと言われると、「ファイナルファンタジー」シリーズのようなハイクオリティのものをイメージする人もきっと多いだろう。ただ、誰もが一度はプレイしたことがある大富豪などのトランプゲーム、もっと言えば鬼ごっこや隠れんぼのようなもの、はたまたサッカーや野球のようなスポーツも“ゲーム”と言える。

このように、ゲームの本質が人々を巻き込み、人々のつながりをより強固にする力だと仮定すると、当然オンラインで常時接続状態となった時にもゲームは必要になってくると思う。実際に、私たちが運営しているパラレルのユーザーたちは音声通話でいつものたまり場(通話ルーム)に集まると、一緒にオンラインゲームを楽しんだり、動画を閲覧したり、画面共有でインスタグラムやTikTokをみたりしながら、平均で1日3時間もコミュニケーションを楽しんでいる。

つまり、ゲーム自体がこれまで考えられていたような可処分時間を奪うものから、コミュニケーションを促進させる潤滑油として捉えられるようになっていくと考えている。人が集まり、コミュニケーションをする時には必ずその媒介となるコンテンツが存在している。それはオフラインで言えばお酒やカラオケ、ゲームセンターだ。

オンラインでも同様に人を結びつける媒介となるコンテンツは求められ、Among Usをはじめとしたオンラインゲームもその媒介の一つになっている。

コロナの脅威によって会議など仕事のコミュニケーションがオンラインに置き換わってきた人は多いと思うが、一方で仕事後の一杯や休日の外出など、友人とのコミュニケーションは失われただけの人が多いと思う。

そのような時代だからこそ、ゲームは失われた友人とのコミュニケーションの隙間を埋めるオンラインコミュニケーションの解となるはずだと考えている。