10Xが展開する「Stailer」はスーパーを中心とした多店舗運営(チェーンストア)を行う小売・流通事業者のEC立ち上げ〜事業の成長を包括的にサポートする
10Xが展開する「Stailer」はスーパーを中心とした多店舗運営(チェーンストア)を行う小売・流通事業者のEC立ち上げ〜事業の成長を包括的にサポートする すべての画像提供 : 10X
  • 「スーパー事業者がDXするための3つのハードル」を解消
  • 10Xとの協業でさらなるEC事業の拡大へ

開発なしでネットスーパーのアプリを立ち上げられるサービス「Stailer(ステイラー)」。同サービスを開発する10Xが事業を拡大している。

昨年5月のローンチ後、最初のパートナーとして大手スーパーのイトーヨーカ堂とタッグを組み同社のネットスーパーアプリを展開。12月には広島の老舗スーパー・フレスタとも共同でアプリの運営を始めた。

その10Xが新たに首都圏と近畿圏で275店舗のスーパーを展開するライフコーポレーションの支援に乗り出す。

10Xとライフは3月8日より「ライフネットスーパーアプリ」の提供をスタートした。同アプリはライフが自社で運営してきたネットスーパーのモバイルアプリ版という位置付け。ライフにとってモバイルアプリの提供は、初めての試みとなる。

「スーパー事業者がDXするための3つのハードル」を解消

Stailerはスーパーを中心とした多店舗運営(チェーンストア)を行う小売・流通事業者のEC立ち上げ〜事業の成長を包括的にサポートするサービスだ。

大きな特徴の1つがECに必要なシステムをまるっと開発していること。数万単位のSKUを日替わりで管理できる商品・在庫マスタシステムや効率的なピッキングを実現するオペレーションシステム、ユーザーに快適な買い物体験を提供するモバイルアプリ、少しでも素早くユーザーの元へ商品を届けるための配送システムなどを全て自社で構築する。

Stailerでは小売事業者向け、エンドユーザー向け、配送事業者向けのシステムを全て開発している
Stailerでは小売事業者向け、エンドユーザー向け、配送事業者向けのシステムを全て開発している

そのため、すでにネットスーパーを運営する企業であれば既存のシステムを改修することなくモバイルでの購買体験に最適化したアプリをラインナップに加えることが可能。ネットスーパーに着手してこなかった企業の場合でも、商品データを連携させるだけでネットスーパーに挑戦できる。

もともと店舗の価値を拡張する手段としてネットスーパーに取り組み始める事業者が近年増え始めていたところに新型コロナウイルスの感染拡大が重なり、人との接触を避け自宅にいながら買い物ができる体験への需要が急拡大した。一方で国内ではその需要に供給が追いついていない状況。コロナ禍では主要事業者が相次いでネットスーパーを休止するなど機会損失も発生した。

10X代表取締役の矢本真丈氏によると、これまでスーパー事業者がDXに取り組む際に3つの要素が大きなハードルになってきたという。

スーパー事業者がDXするための3つのハードル

スーパーの大きな価値は膨大なSKUの中から数十もの商品を同時にまとめ買いできる“ワンストップショッピング”にあるが、モバイルの小さな画面上で目的の商品を迷わず探せるようなUXを実現するのは難易度が高く、最適化が進んでいない。またネットスーパーでは「注文後に欠品が発生する」といった問題もあり、その際に適切な代替手段を提案するなど機転の利いた顧客体験創出、反映も必要だ。

そもそもネットスーパーと実店舗では必要なシステムが全く異なるので、ネットスーパーを作るには専用のシステムと複雑なサプライチェーンを構築しなければならない。従来はそれを作り上げるのに複数のシステムベンダーが関与し、構造が複雑化してしまうケースも多かった。

Stailerが目指してるのはこれらの課題を解消し、事業者のデジタル化を後押しすること。同サービスの詳細や立ち上げの背景などについては、以前の記事でも紹介しているのでそちらも合わせて参照いただくとわかりやすい。

課題に対する10Xのアプローチ。初期費用をなくし、月額利用料と売上に連動した従量課金制(レベニューシェア)を採用している点も特徴の1つ
課題に対する10Xのアプローチ。初期費用をなくし、月額利用料と売上に連動した従量課金制(レベニューシェア)を採用している点も特徴の1つ

10Xとの協業でさらなるEC事業の拡大へ

今回10Xとパートナーシップを組むライフでは2011年からネットスーパーに取り組むなど、デジタル活用に積極的に取り組んできた。店舗から商品を出荷する店舗型のネットスーパーで、2021年2月時点で61店舗にてサービスを提供。2020年度のEC売上高は前年同期比50%増で伸長し、着実に事業を拡大している状況だ。

Amazonとも協業し、2019年には「Prime Now」上、2020年11月には「Amazon.co.jp」上にもライフのストアを開設。自社のネットスーパーとAmazonを組み合わせると東京23区・4市、神奈川2市、大阪府大阪市21区・3市をカバーしており、主要エリアの大部分には自社の商品を供給できる体制が整いつつある。

一方でライフのCX共創推進室で室長を務める加藤崇氏の話では10年前に先がけて作った仕組みのまま運営してきたため、ここから急拡大した需要に対応しさらに事業を成長させていく上では「現在の仕組みでは対応できない」という課題感があるそう。

まさに上述した「スーパー事業者がDXするための3つのハードル」をライフでも抱えており、それを乗り越えて「顧客から支持されるネットスーパー」を作るためのパートナーとして今回10Xとタッグを組むに至ったという。

ライフネットスーパーアプリの画面イメージ
ライフネットスーパーアプリの画面イメージ

両社が新たにローンチしたライフネットスーパーアプリは一覧性の高い売り場が特徴で、店舗を回るようにアプリからサクサク商品を探せる設計を重視。ライフのウリでもあるプライベートブランド商品を手軽に購入できる仕組みを作っているほか、お気に入りの商品をスムーズにカートに追加できるマイリスト機能なども実装している。

ライフとしては2019年度には30億円だったEC事業売上を2020年度で50億円、2021年度には100億円まで拡大する計画も掲げる中で、ネットスーパーを自社の大きな武器にしていきたい考え。10Xとは単なるシステムパートナーとしてではなく、「顧客にどんな体験を提供できるのか」を一緒に考える事業パートナーとして協業していくという。