
- この行動が正しいことを信じています──ヤシマ作戦、発動
- そのためのNERVです──看板を背負い、アプリの動作にかける矜持
- 世界観を応援してくれるファンを大切に、アプリの公共性を重視
- 防災への本気度から災害対策車を製作、行政や自治体も動かす
今日で東日本大震災から10年。あの日を振り返り、この10年の変化に思いをはせる人も多いことだろう。そんな時だから、今日は筆者が震災をきっかけにその活動に注目してきた起業家とその会社を改めて紹介したい。
会社の名はゲヒルン。安全保障を軸に情報セキュリティ、インフラストラクチャー、防災の3つの事業を展開するゲヒルンは、10年半ほど前に20歳の青年によって設立された。だが企業名よりも彼らが提供する防災アプリ「特務機関NERV(ネルフ)防災」の方がよく知られているかもしれない。
ゲヒルン創業者で代表取締役の石森大貴氏は宮城県石巻市の出身で、家族は東日本大震災で被災している。彼はこの10年をどう振り返るのか。今回、震災からの10年とゲヒルンの歩み、特務機関NERV防災アプリリリースの背景と最近の活動について石森氏と専務取締役の糠谷崇志氏に話を聞いた。
この行動が正しいことを信じています──ヤシマ作戦、発動
ゲヒルンは2010年7月、石森氏が大学在学中に情報セキュリティ事業を営むために設立した会社だ。当初、防災事業は手がけておらず、石森氏が同年2月から個人で運用するTwitterアカウント「特務機関NERV」を通じて、気象警報を自動ツイートで配信していただけだった。
(筆者注:特務機関NERVはアニメ「新世紀エヴァンゲリオン」作中に登場する国際連合直属の非公開組織で、国連直轄組織・ゲヒルンを前身として誕生。「使徒」と呼ばれる謎の生命体殲滅を主要任務とする超法規的機関という設定)
2011年3月11日。東日本大震災が起きたとき、石森氏は東京の自宅マンションで仕事をしていた。同じ年の2月に茨城県つくば市から東京に引っ越したばかりだった。

東京でも震度5強を記録した地震の直後、石森氏が石巻の実家に連絡したところ、最初は電話もメールもつながる状態だった。ただ、停電の影響もあって現地ではテレビが見られなかったようだ。大津波警報が出ていることを石森氏が電話で家族に伝え、「分かった」という言葉を聞いて電話を切った後、連絡がしばらく取れなくなったという。
「家族は『津波はここまでは来ないだろう』と逃げなかったらしいんです。そうしたら2〜3メートルぐらいの津波が来て『もう逃げ場がない』となって2階に上がり、波が引くのを待っていたそうです」(石森氏)
震災の翌日から石森氏は、3月14日からの実施が発表された計画停電に合わせ、NERVアカウントを通じて「ヤシマ作戦」の名で節電の呼びかけを始めた。それと並行して石巻の情報を集めてブログで発信。1カ月ほどは、ずっとこうした活動を続けていた。
(筆者注:ヤシマ作戦の名は、エヴァンゲリオン作中で日本全国から全電力を徴発し、ポジトロンライフル(陽電子砲)により超長距離から使徒を狙撃する作戦の呼称にちなんだもの)
4月になって、ようやく石巻の実家に戻った石森氏だが、当時はまだ電気は通じておらず、「暗くなったら寝て、明るくなったら起きる原始人のような生活でした」と振り返る。
NERVアカウントでは2011年の夏季の電力需給逼迫にともない、フェーズを変えて再びヤシマ作戦を実施。節電の呼びかけを行った。その後も気象情報や災害情報を発信するTwitterアカウントとして、活動を継続している。
糠谷氏によれば、3.11以前のNERVアカウントは、フォロワー300人ほどのごくありふれたアニメファンによる趣味のアカウントにすぎなかった。それが震災後、ヤシマ作戦の呼びかけに応える形で一気にフォロワーが3000人ほどに増えた。
ここで改めて浮かび上がったのが「著作権」の問題だ。もともと、NERVアカウントの運用はいちファンとしての活動だったため、当然、著作権を持つカラーやガイナックスの許可を得てアイコンやイメージなどを使っていたわけではなかった。
ゴメンナサイ、このアカウントは非公式アカウントです。紛らわしくてゴメンナサイ。災害が収まったら消えるかもしれませんが、この行動が正しいことを信じています。
— 特務機関NERV (@UN_NERV) March 12, 2011
石森氏は3月12日にカラー、13日にガイナックスのアカウントへ連絡を取り、メールや電話でもカラー、ガイナックス、キングレコードやエヴァンゲリオン関連の著作権管理を行うグラウンドワークスなどの各社にも連絡を取っていた。
「20歳ぐらいの若者が大人の人に、通常はOKをもらえないことの許可をもらうために、何をどう説明すればいいのか分からず、しかも自分の好きな作品に対してご迷惑になっていることも分かっていて……。思ったよりも(節電呼びかけとしてのヤシマ作戦が)広まってしまったというのが正直なところで。やめるにやめられないけれども、著作権者と話してダメだと言われればやめるしかない。ただ、(作戦が盛り上がったことから)エヴァ側からも『やめて』とは言いにくい状況になっていました。最終的には非公認ですが黙認という形で落ち着き、カラーからブログで“賛同”もいただきました」(石森氏)

石森氏は「ここで話がなくなっていたら(NERVの名前が使えなくなっていたら)、今みたいな『NERV防災』のようなプロジェクトにはなっていなかったと思いますし、10年たってヤシマ作戦の話を取材で聞かれることもなく、黒歴史で終了していたでしょう。このときの著作権者側の判断があって、今の僕たちの活動につながっています」と語る。
そのためのNERVです──看板を背負い、アプリの動作にかける矜持
TwitterのNERVアカウントでは今に至るまで、防災情報のツイートが続いている。ただ、最初は全国の気象警報や地震情報などの防災情報を対象に自動ツイートを行っていたので、ツイート数も大量だった。フォロワーにとっては地域の違いなどにより、必ずしも重要ではない情報も含まれる状況になっていた。
「アプリにしないんですか」というフォロワーからのリクエストもあったそうだが、石森氏はアプリ化には当初、消極的だったらしい。
「『Yahoo!防災速報』や『NHKニュース・防災』といったアプリがすでにあり、情報源はいずれにしても気象庁ということで、差別化が難しいと思っていました。だから『(すでにある)NHKのアプリで良くない?』と思っていたんです。ただ、使いやすさ、見やすさの部分で『もうちょっと、こうできるんじゃないか』というところはあって、ゲヒルン社内で一応デザインを組んでみようかということになりました」(石森氏)
石森氏によれば、最初に予定していたアプリは「非常にダサいデザインのもの」だったようだ。「さすがにいつまでもNERVの名前を使い続けるのはイタいだろうし、『いつまで人のふんどしで相撲を取っているのか』とも言われていた」ということで、新しいアプリは「ゲヒルン防災アプリ」という名称でリリースが計画されていた。
ところが、開発が進んでいた2018年の忘年会シーズンに転機が訪れる。エヴァンゲリオン関係者との会食で防災アプリの話題が出たときに、「名称にはNERVは使わない」と石森氏らが伝えたところ、逆に関係者からは「別にNERVの名前でもいいんだけど」と言われたという。悩んだ結果、「NERVの名前が使えるチャンスはこれが最初で最後じゃないか」と考え、石森氏らはNERVの名前でアプリを出す決断をした。
「NERVの看板を背負う以上、『こんなダサい画面じゃダメだ』ということでデザインを作り直しました。本当は2019年の3月11日にリリース予定だったのですが、デザインが間に合わず、半年後の9月1日、防災の日にリリースをずらすことにしました」(石森氏)
このことがゲヒルンと石森氏にはプラスに働いた。気象庁がその年の5月8日に「大雨・洪水警報の危険度分布」通知サービスの協力事業者公募を開始したのだ。
これは気象庁が提供する土砂災害や洪水害などの危険度の変化を示すデータをもとに、ユーザーに危険度をプッシュ型で通知するサービス。協力事業者は気象庁から技術的な支援が一定期間得られるというものだ。
ゲヒルンは協力事業者としての技術的要件を満たしていたため、さっそく応募。リリースをずらしたことで事業者としての選定が間に合い、危険度分布のプッシュ通知機能を開発中のアプリに取り込めることになった。
「その年のゴールデンウィークには、緊急地震速報の予報ができる地震動の予報業務許可事業者の申請書類約60枚も、休みなしで書き上げました。こちらも6月に気象庁から許可を受けることができました」(石森氏)
2019年7月には、ほかの危険度分布通知サービスの選定事業者や気象庁と共同で記者会見も実施した。
「NERV防災アプリが初めて公表されるのが、なんと気象庁との会見というスペシャルな機会が巡ってきた。特務機関NERVのTwitterアカウントでもそのことを報告したところ、Yahoo!リアルタイム検索の1位が『NERV』になるという事態になり、これまでのフォロワーが喜んでくれました」(石森氏)
アプリの開発は、リリース日直前の8月27日ごろまで続いたという。
「8月最後の1週間は、物事が爆速で進んでいくので、1日1日、時間が進むのが遅く感じました。『ウォーターボーイズ』(シンクロナイズドスイミングに取り組む男子高校生の物語を描く映画)の水泳部が文化祭に向けて本番直前まで練習しているような、すごい状況がずっと続いていました」(石森氏)
こうして9月1日には無事に「特務機関NERV防災アプリ」iOS版のリリースにこぎ着けた、石森氏とゲヒルン。プレスリリースには情報を提供する気象庁からも「災害をもたらす現象は、使徒と同じように、いつも違った形で突然やってきます」などとコメントが寄せられ、注目を集めることとなった。
ネットなどで話題となったことで、当日だけで10万ダウンロード、2日で20万ダウンロードを突破したNERV防災アプリ。石森氏は「10万人の人たちが、NERVアプリに期待を込めてダウンロードボタンを押してくれたことを実感して、ちょっと驚きました」と感想を述べている。
糠谷氏が「1年で100万ダウンロード行けばいいね、48時間で1万人使ってくれたらうれしいよね、と話していたのが2日で20万を達成した。うれしいというよりは不思議な気持ちになりました」と振り返ると、石森氏も「大晦日に除夜の鐘を待っているような、なんとも言えず落ち着いた気持ちだったよね」と応じる。

一方、リリース直後の2019年9月から10月には、千葉県を中心に大きな被害をもたらした台風15号をはじめ、次々と台風が日本列島に接近・上陸した。
「アプリを出したからこそ、チームとしては目の前の事態に対応しなければならず、多くの人に使ってもらえているという感慨よりは、今来ているものに無心で対応している感覚でした」(糠谷氏)
「雨雲レーダーや台風情報の配信を落とさないようにずっと見守ったり、調整したりしていましたね」(石森氏)
7月の発表以来、初めて危険度分布のデータが気象庁から出たということもあって、「設計通り通知が飛ぶか、ずっと見守っていました」と石森氏は振り返る。

「台風19号では、他社のアプリがアクセス殺到によって調子が悪くなったり、障害があったりしたということも聞いています。NERV防災アプリでもデータベースの読み書きが2億回を超え、アクセスは集中したのですが、うちはそうした大規模なリクエストでも落とさないような設計にしていたので、正常にずっと動いていました。エヴァンゲリオンに『そのためのNERVです』というセリフがあるぐらいなんで、『NERVなんだから、これくらいはがんばらないと』という気持ちはありました」(石森氏)
(筆者注:「そのためのNERVです」は、NERV総司令・碇ゲンドウのセリフ。使徒が初めて襲来した際に迎撃し、壊滅的な打撃を受けた国連軍から『だが、君たちになら勝てるのかね』と挑発されて碇司令が放った回答)
世界観を応援してくれるファンを大切に、アプリの公共性を重視
特務機関NERV防災アプリは、通知の早さときめ細やかさに特徴がある。通知の早さについては、今年2月13日23時7分頃に起きた福島県沖地震でも、複数の人がSNSなどで「NERVの通知が一番早かった」と投稿していた。

石森氏は「通知は命を削ってチューニングしています」と自信をのぞかせる。プッシュ通知サーバーやスマートフォンなどの通信環境にもよるが、2月13日の福島県沖地震の例では、気象庁発表の緊急地震速報を受信・解析し、対象を選んで情報配信を開始するまでに0.466秒。早ければユーザーの端末には約2秒後には通知が届いていたとみられる。
「受信から通知までの経路のどこで何ミリ秒かかっているかはログで追跡していて、日々チューニングによって速度を改善しています」(石森氏)
また、NERV防災アプリは「通知を賢く出す」ことにも腐心している。石森氏は「全員のニーズを満たすのは難しいのですが、レベル、緊急度によって細かく制御しています」と説明する。
「夜中の緊急地震速報で、震度が1〜2なら、音やバイブレーションを出さずに表示だけで通知します。『起きていれば見るだろう』ということです。震度3〜4だと、ちょっと気づいてもらいたいので、マナーモードやおやすみモードでなければ音やバイブレーションでも通知。震度5以上では『重大な通知』としてマナーモードやおやすみモードに設定していても強制的に音や振動で通知するようになっています」(石森氏)
デザインについては、エヴァンゲリオンの世界観を反映しつつ、実は色覚異常の人でも見やすい配色を使用。また視覚障害などの人でも利用できるように、音声読み上げといったアクセシビリティも重視している。
2019年12月にはiOS版に続き、Android版の配信も開始し、現在は132万ダウンロードと多くのユーザーに利用されているNERV防災アプリ。だが事業運営費は持ち出しで、情報セキュリティ事業などゲヒルンの別の事業の収益から充足している。そこで安定的にサービスを継続し、開発体制を強化するために、アプリリリースからちょうど1年を迎えた2020年9月1日、月額サブスクリプションによる「サポーターズクラブ」がスタートした。
「震災から10年たってモチベーションが下がり、食べていけない、(本業の)合間ではやっていけないとなって防災事業から撤退する事業者や団体も多く見てきました。防災もビジネスとして継続しなければならない。NERV防災は僕たちができなくなったとしても、継続できるようにして残したい。儲かる必要はないけれど、動かせる仕組みが必要だということで、めちゃくちゃ議論しました」(糠谷氏)

「アプリで王道の課金だと、広告表示や機能に制限を付ける形になります。広告の場合、災害が起きてアプリを使われれば使われるほど儲かるということになり、収益を得るためには災害が起こらないといけないということになってしまいます。僕らはそれは受け入れられない。また、アプリの課金ユーザーは全体の1%ほどと言われています。機能制限を付けた場合、100万人ユーザーがいても99万人の人には、せっかく開発した地震波到達カウントや震源位置予測などの仕組みが届かなくなってしまう。それはエンジニアのプライドとしても悔しいという話が出ました」(石森氏)
「防災は公共性があると認識しています」と石森氏は続ける。「僕らには、他社よりも防災に高い認識を持ってやっているという自負がある。特務機関としてユーザーががっかりしないようにしたいし、自分たちの世界観にも合うようにしたいと考えました」(石森氏)
糠谷氏も「Twitterアカウントについても何十万人というフォロワーがいるので、防災系の企業とコラボして(アフィリエイトやPRといった)『案件』にもできたけど、それはやりませんでした。その信念をアプリにも反映しました」として、サポーターズクラブを「サブスク型のクラウドファンディングのようなもの」と説明する。
「売り上げ目標とかはちょっと脇に置いておいて、世界観や僕らの価値観を応援してくれるファンを集めようということになりました」(糠谷氏)
価値観に沿ったお金の集め方という観点では、石森氏は国連児童基金(ユニセフ)や赤十字などのサイトも参考にしたという。
「特務機関NERVは国連直属の非公開組織という設定ですから、そうしたサイトからも研究しました。中立的であるということは非常に重視しています」(石森氏)
採算については「国がひとつ傾く」ほどではないが、「会社がひとつ傾く」ぐらいには厳しい(サポーター制度の募集を始めた2020年9月当時で運営費用は年間6000万円だった)ということで、現在ゲヒルンは一般向けのアプリだけでなく、法人向けにも防災情報配信サービスを提供するようになっている。「儲からなくてもよいので、収支とんとんにはしたいところ」と石森氏は打ち明ける。
防災への本気度から災害対策車を製作、行政や自治体も動かす
ゲヒルンの防災への“本気度”は、スマホアプリだけにとどまらない。災害による長期的・大規模な停電や通信網が途絶した場合にも防災情報を配信し続けるにはどうすればいいか検討した結果、プラグインハイブリッドカー(PHEV)をベースにした特別仕様の災害対策車までつくってしまったのだ。

「無停電ビルへのオフィス入居なども検討しましたが、そのいっときだけの備えのために、ずっと家賃を出すのは費用が合わないということで見送りました。ほかに方法はないか探した結果、PHEVなら電源車のコンパクト版のように使えるということになりました」(石森氏)
ゲヒルンと三菱自動車工業、スカパーJSATの3社が共同製作した災害対策車「特務機関NERV制式 電源供給・衛星通信車両 5LA-GG3W(改)」(以下、災害対策車)は、災害時にも電力と通信を独自に確保し、防災情報配信サービスが継続できる。またサービス継続に支障がないときには被災地へ出動して災害対策本部や避難所の支援を行うことができる。
災害対策車のベースは三菱自動車の「アウトランダーPHEV」で、衛星通信用に米国のカイメタ社製平面アンテナ端末を搭載。スカパーJSATの通信衛星を経由してインターネットに接続が可能だ。また、内閣府から準天頂衛星「みちびき」を利用した衛星安否確認サービス「Q-ANPI」の端末貸与を受けて搭載。みちびきを利用した災害用通信も確保できる。

ゲヒルンは2020年9月、この災害対策車の派遣などによる災害時支援業務協定を神奈川県箱根町と締結した。災害対策基本法が規定する災害の発生時に箱根町から要請を受けた場合、災害対策車を派遣し、給電サービスやWi-Fiサービス、IP電話サービスを災害対策本部や避難所などに提供する。
この協定が結ばれたことにより、災害対策車は2020年10月、東京都公安委員会から緊急通行車両等事前届出済証の交付を受け、大規模災害発生時の交通規制下でも規制区間を通行することができるようにもなっている。
箱根町といえば、エヴァンゲリオンの舞台である第3新東京市のモデル。もはや現実と虚構の区別が付かなくなってきているような感もあるが、一つひとつ、本気で防災に取り組んできたからこそ、今のNERV防災があるのだとも言える。
システムの冗長化についてもそうだ。ゲヒルンでは、東京と大阪にある気象庁の気象情報伝送処理システムにそれぞれの拠点から専用線で接続。システムも東京と大阪とで2重化して独立させ、障害時には処理を引き継げるようにしている。実際に気象庁の配信障害の際に東京の拠点にはデータが来ないことがあって、大阪の拠点にシステムを切り替え、ユーザーにはいつも通りに地震のプッシュ通知が配信されていたという。
防災アプリがどんなときにも「いつも通り使える」ことを目指して、ゲヒルンでは地理的冗長、複数データセンターへの分散にとどまらない、かなり高度な冗長化を防災情報配信システムに取り入れている。
「2010年、最初は色モノだったNERVアカウントですが、気象庁の協力事業者となり、予報業務許可事業者となり、Lアラート(地方公共団体が出した避難指示・勧告といった災害関連情報などの公共情報を一斉送信するための共通基盤)にも一般情報伝達者としての立場に加えて、新たな活用を実証するための特別利用者区分でも登録されました。『特務機関NERV』の名前で避けられているのだとしたらもったいないので、ぜひ、しっかりやっていることも知ってほしいと思います」(石森氏)
また最後に石森氏は、情報の受け止め方について「どの防災情報を受け取るか考えること、あるいは防災情報だけに依存せずに自分の想像力で判断することは非常に重要なこと。せっかくですから、いろいろな防災情報のアプリをつかってみてほしいなと思います」とも語っていた。