
国内最大級の成長産業領域向け情報プラットフォーム「STARTUP DB」。1万2000社を越える企業の情報を保有するSTARTUP DBのデータを元に、注目のスタートアップの資金調達情報をサマリ形式で紹介する。今回は3月2週の注目資金調達情報だ。
CureApp
- 調達額:21億円
- 合計資金調達額:62億8000万円
- 調達先:三井住友トラスト・インベストメント / 新生インパクト投資 / 社会変革推進財団/ SMBCベンチャーキャピタル / 豊島 / ヘルスケア・イノベーション / Saisei Ventures/ 第一生命保険 / 伊藤忠テクノロジーベンチャーズ / コシダカホールディングス / 商工組合中央金庫
- 備考:商工組合中央金庫からは融資で調達 / 三井住友トラスト・インベストメントは、ジャパン・コインベスト3号投資事業有限責任組合を通じて出資 / 新生インパクト投資、社会変革推進財団は日本インパクト投資2号投資事業有限責任組合を通じて出資 / ヘルスケア・イノベーションはヘルスケア・イノベーション投資事業有限責任組合を通じて出資
CureAppは医療機関向けに治療法アプリ「治療アプリ」を提供するスタートアップ。
治療アプリでは、従来の医薬品やハードウェア医療機器では治療効果が不十分だった病気を治すための、“デジタル療法”という新たなアプローチをとる。患者の行動変容に力点を置き、開発されている。スマートフォンなどを通じて得られる日々のデータを、医学的知見を搭載したアルゴリズムが解析し、患者一人一人に個別化された治療を実施。医療従事者にも適切な診療データを提示することにより、診療の質の向上を図る。
2021年3月には、三井住友トラスト・インベストメント、新生インパクト投資、社会変革推進財団、SMBCベンチャーキャピタル、豊島、ヘルスケア・イノベーション、Saisei Ventures、第一生命保険、伊藤忠テクノロジーベンチャーズ、コシダカホールディングスを引受先とした第三者割当増資と、商工組合中央金庫からの融資で、21億円の資金調達を実施した。調達した資金は、既存サービスの拡大に充当する。
アグリメディア
-
調達額:3億5000万円
-
合計資金調達額:13億3300万円
-
調達先:JR西日本イノベーションズ / 三井不動産 / 博報堂DYベンチャーズ / グローバル・ブレイン
-
備考:三井不動産は31VENTURES Global Innovation Fund IIを通じて出資 / 博報堂DYベンチャーズはHAKUHODO DY FUTURE DESIGN FUNDを通じて出資 / グローバル・ブレインは31VENTURES Global Innovation Fund IIを通じて出資
アグリメディアは畑のレンタルサービス「シェア畑」の運営などを行うスタートアップ。
シェア畑は郊外の遊休農地と都市住民のマッチングを行う日本最大の市民農園事業である。農家の高齢化、担い手不足などにより維持・管理できなくなった農地や、使われていない遊休地の再生を目的とし、誰もが気軽に農業と触れることができる農園を提供する。シェア畑では、野菜づくりに必要な種や苗、農具や資材が用意されており、手ぶらで通うことが出来るほか、講習会や農園アドバイザーによるサポートも受けることができる。
2021年3月10日には、JR西日本イノベーションズ、三井不動産、博報堂DYベンチャーズを引受先とする第三者割当増資を実施し、約3億5000万円の資金調達を行った。調達した資金は、コロナ禍で価値が高まる農ある街づくりやスマートシティ、都市と郊外をつなぐ生鮮野菜の流通の領域での事業を拡大や、成長領域の事業推進を担うテクノロジーに通じた人材の採用やシステム投資に充当する。
Revorf
- 調達額:3億円
- 合計資金調達額:3億円
- 調達先:NOW / i-nest capital / 新生企業投資 / 日本ベンチャーキャピタル / 谷家衛
- 備考:その他個人投資家を含む
Revorfは遺伝子科学、医学、計算科学の英知を融合し、画期的な診断法と新しい治療薬を開発し提供するスタートアップ。
Revorfは遺伝子診断や創薬支援を行っている。遺伝子診断事業では、同社のRNAトランスクリプト検出解析技術を用いて、外部の遺伝子診断関連企業における最先端のバイオマーカー(病気の変化や治療に対する反応をみる指標)の開発などの支援を実施。創薬支援事業では、同社のゲノム検出解析技術と集積した非公開の疾患サンプルデータを活用し、外部の製薬企業の創薬を支援している。また、医療情報解析事業では、最先端のバイオインフォマティクス技術を活かし、外部企業やアカデミアとの間で感染症やヘルスケアなどに関するデータ解析やAI開発を実施している。
2021年3月にはNOW、新生企業投資、日本ベンチャーキャピタル、 i-nest capital、ならびに谷家衛氏を含む個人投資家を引受先として総額約3億円の資金調達を実施。調達した資金をもとに、同社は引き続き企業や研究機関とともに創薬・医療技術基盤手法の革新を推進していく方針だ。
ボールウェーブ
- 調達額:1億8144万円
- 合計資金調達額:11億5500万円
- 調達先:JA三井リース
ボールウェーブはガス計測に用いるガスセンサ「ボールSAWセンサ」の開発、販売を行っている東北大学発のスタートアップ。
ボールSAWセンサは物理学の常識を超えた球上のSAW (Surface Acoustic Wave:弾性表面波)の長距離伝搬現象を利用した高速・ 高感度なガスセンサである。応用した微量水分計は露点マイナス100℃以下の水分を検出でき、小型(センサの直径は3.3ミリメートル)で高速応答であるため、最先端半導体製造ファシリティや製造装置などへの導入が進められている。また天然ガスパイプラインや再生可能エネルギーで作られた水素ガスに含まれる微量水分モニタリングへの応用も検討されている。
2021年3月には事業拡大に向けた第三者割当増資を実行し、1億8144万円の資金を調達した。同時にこのラウンドの出資者である豊田合成、JA 三井リース、創新工業技術移転股份有限公司(ITIC)との共同開発・事業協力を開始。水素ガスセンサや空気中のウイルスセンサの商品化を進めることで、水素社会の実現や環境空気の安全・安心に寄与することを目指している。
CROSS SYNC
- 調達額:1億5000万円
- 合計資金調達額:1億5000万円
- 調達先:コニカミノルタ / ファインデックス / 日本政策投資銀行 / 豊田通商
CROSS SYNCは重症患者管理システム「iBSEN」を提供する横浜市立大学発のスタートアップ。
iBSENはAIを活用した画像解析などにより高度な患者モニタリングや情報共有を行うシステム。医療現場に散財するさまざまな医療情報を集約、解析し可視化することで、医療従事者は経験や知識に依存せず、患者に対して高品質な見守りと評価をいつでも、どこからでも、どんなデバイスからでも提供することができる。
2021年3月にはファインデックス、日本政策投資銀行、豊田通商、コニカミノルタらを引受先とする第三者割当増資により総額約1億5000万円の資金調達を実施した。調達した資金は、iBSENの開発および採用・組織体制の強化に充てる予定だ。今後はiBSENの医療現場への実導入を推進し、幅広い現場のニーズや課題に対応できる製品へ発展させることや、リアルワールドデータを活用したAIモデルの量産によるユースケースの拡大、他の先端研究機関との連携、並びに海外でのサービス展開へ向けた検証などを実現していく方針。
Blue Industries
- 調達額:1億2,000万円
- 合計資金調達額:1億2000万円
- 調達先:boundary spanner / アクシス / 宇野佳孝 / 日本ジェネティクス / 高橋祥子
- 備考:その他個人投資家と融資を含む
Blue Industriesはオンライン尿検査サービス「Pastool」の開発、運営を行っている筑波大学発のスタートアップ。
Pastoolは尿で体の状態を分析することを可能にする最新の検査キットサービス。独自の技術とアルゴリズムを用いて、体内の臓器から血管を通して尿と一緒に排出される物質を測定し、体の状態を把握することができる。自宅で尿を採取・郵送するキットで採尿し、郵送で送れば検査自体は完了。検査結果は簡単にウェブで確認することができる。AI活用により、検査時点での健康状態に加えて、未来の体の状態も予測することが可能である。
2021年3月には日本ジェネティクス、高橋祥子氏ら個人投資家を引受先とした第三者割当増資、加えて融資などにより、総額1億2000万円の資金調達を実施した。本資金調達と同時に、Pastoolのα版を提供開始した。
Frich
- 調達額:1億2,000万円
- 合計資金調達額:1億2000万円
- 調達先:インクルージョン・ジャパン
- 備考:ICJ2号ファンドからの出資 / その他デットによる調達も含む
Frichはグループ間で相互扶助的にリスクをカバーするコミュニティベースの新しい保険の仕組みとして注目されているP2P保険サービス「Frich」を展開しているスタートアップ。
P2P保険は海外においてはさまざまな形で提供されているが、日本においては法規制や明文化されていない慣習などをはじめとして、事前に確認しなければならないポイントが多く存在する。事業展開にあたっては、保険というものが有する公益性を最大限尊重したうえで事業開発を図らねばならない難しさがある。そのため、Frichは日本におけるP2P保険の土台作り、さらにその先にあるオープンイノベーションを目指している。またその他の事業として、損害保険代理店の業務、また生命保険の募集も行なっている。
2021年3月には、インクルージョン・ジャパンが運営するICJ2号ファンドなどから総額1億2000万円の資金調達を実施。今回の資金調達により、インクルージョン・ジャパンがもつInsurTechの高度なノウハウや経験を取り込み、着実に積み重ねてきたP2P互助プラットフォームのノウハウをもとに、さらなる事業開発を進めていく見込みだ。