
- 1200件以上の経験談が登録、自分と近しい人から話を聞けるサービス
- 今夏には法人向けサービスも提供予定、“社会人OB訪問”で採用課題の解決へ
新卒採用の過程では、多くの学生がキャリアの方向性を考える手段として「OB・OG訪問」を実施している。かつては同じ大学の先輩に話を聞きにいくことが一般的だったが、近年は複数の「OB訪問サービス」の登場により、大学の垣根を超えてOBやOG訪問ができる環境が整ってきた。
このような仕組みは何も新卒採用だけでなく、社会人が転職活動をする際やキャリア形成について考える際にもニーズがあるのではないか。そのような考えから生まれたのが社会人向けのOB訪問サービス「CREEDO(クリード)」だ。
同サービスは2020年3月のリリース以降SNSの口コミなどで広がり、1年で約3000人のユーザーが登録。社会人が社外の先輩から経験談を聞くためのツールとして、利用者を拡大している。
1200件以上の経験談が登録、自分と近しい人から話を聞けるサービス
CREEDOを運営するブルーブレイズは2019年設立のスタートアップだ。代表取締役の都築辰弥氏は東京大学を卒業後、2017年にソニーへ新卒で入社。スマートフォン「Xperia 1」などのプロデュースに携わった後、起業の道を選んだ。
会社のミッションは「世界に100億の志を」。健全な志を持つためには自身が納得いくキャリアを歩んでいることが不可欠だと考え、そのファーストステップとしてCREEDOを立ち上げた。
「5年後の自分から話を聞くことができれば、人生やキャリアに関して良いアドバイスをもらえるだろうとずっと考えていました。日本だけでも1億3000弱の人がいるのであれば、自分と同じような境遇や近しいキャリアを歩んでいる人がいるはず。その人たちとマッチングすることであたかも将来の自分からアドバイスをもらうように、実りのある経験談を聞けるのではないか。そのようなアイデアから開発したのがCREEDOです」(都築氏)
特に昨今は「ジョブ型雇用」や「人生100年時代」などと言われている中で、今まで以上にキャリアを主体的に選択していかなければならない時代になりつつある。だからこそ「個人の経験談を共有値にしていく」ことで、自分が本当に知りたい情報にアクセスできるサービスにはニーズがあると考えたという。
冒頭でも触れた通り、CREEDOは社会人版のOB訪問サービスと捉えるとイメージがしやすい。

サイト上には現時点で約1200件のキャリア経験談が登録されており、話を聞きたいユーザーはその中から企業や職種などを軸に候補を絞り込む。気になる経験談の投稿者にメッセージを送った後、マッチングが成立すれば対面かビデオ通話で話を聞ける。
経験談の登録は例文やテンプレートに沿って入力するだけでよく有料の設定も可能。実際にOB訪問を受けるほど上限金額が上がっていく仕様になっており、最大で30分1万円の報酬を設定できる。有料の場合は料金の20%をCREEDOが受け取る仕組みだ。
都築氏によると20〜30代を中心に、転職したいと考えている業界や職種、企業の関係者へ話を聞くための手段として使われることが多いそう。たとえば大手企業からスタートアップへの転職を考えているものの「周囲には大手企業の知り合いしかおらず、業界をよく知っている人の経験談を知りたい」というシーンでCREEDOが役立つ。
また転職に限らず、担当している領域ですでに成果を残している先輩やロールモデルになるような社外の人材と会うために活用されることもあるそう。これについてはビジネスマッチングサービスに近い用途と言えそうだ。
一方で経験談を話す側のユーザーは、他人のキャリア形成に貢献したいというモチベーションで登録するケースが中心。最近では「リファラル採用」の文脈や「副業」の一環として活用するユーザーも増えてきているという。

今夏には法人向けサービスも提供予定、“社会人OB訪問”で採用課題の解決へ
都築氏はここ数年で「個人がお金を支払って利用する有料のキャリア支援サービス」が国内でも広がってきており、CREEDO自体もその1つとして位置付けているという。
昨年1.5億円を調達した“キャリア版ライザップ”のポジウィルや先月4.4億円を調達した女性向けキャリアスクールのSHEを始め、個人向けのキャリア支援事業を展開するスタートアップも目立つようになってきた。
上述したようにジョブ型雇用の広がりなどを受け、個人がキャリア形成に対して主体的に取り組む流れが加速。実際にCREEDOもその要望に応える形で事業を伸ばしてきたほか、社会人向けのOB訪問ツールに限っても昨年1年で複数社が参入しているという。
ブルーブレイズとしては引き続きプロダクトの改良を進めるとともに、今夏を目処に法人向けの機能を提供していく計画。その元手としてDEEPCOREとラブグラフCOOの本間達也氏より3000万円の資金調達も実施した。

法人向けのプランでは“社会人のOB訪問”という手段を使って、現場の社員が持続的に母集団を形成していくための環境を提供する。同時にスカウト機能などを通じて攻めの採用に使える仕組みを作っていく予定だ。
ジョブ型雇用が広がると今まで以上に職種の専門性が高くなるため、新しい人を採用するにおいても現場の社員がより採用にコミットする必要性が生じる。また求職者・企業双方において「社風にマッチするか」と同じくらい「所属するチームにマッチするか」を見極めていくことがさらに重要になるという。
一方で、現場社員を採用に巻き込む上では課題も多い。本業と並行して採用業務を進めることになるため負担が大きい上に、リファラル採用が上手くいくほど徐々に紹介できる知人が枯渇してしまうジレンマにもはまる。
ブルーブレイズではそのような企業の採用課題を解決する手段としてもCREEDOを広げていきたい考え。同時に法人向けのサービスはブルーブレイズにとって収益の柱にもなるため、この事業を確立することでビジネスの拡大を目指すという。