MFSが運営するオンライン住宅ローンサービス「モゲチェック」
MFSが運営するオンライン住宅ローンサービス「モゲチェック」
  • ローンの融資承認確率を事前に推定しユーザーの心理的負担を削減
  • 1年で利用者数は3万人以上増加、資金調達でさらなる成長へ

ウェブ上で自分に最適な住宅ローンを簡単に探せる「モゲチェック」が好調だ。

コロナ禍で家計の見直しを図るユーザーが増えた結果、住宅ローンの借り換えニーズが拡大。同サービスを通じた借り換えの申し込み数は2020年2月以降12カ月連続で前年同月比の2倍以上を記録し、現在も前年を上回る水準で登録者が増え続けている。

新規借り入れについても同様だ。在宅勤務が普及したことによる住環境の見直しなどが要因となり、2020年9月以降に申し込み数が増加。こちらもそれ以来、前年同月比で2倍以上の申し込みが続く。

そのような背景から直近1年でサービスの利用者数は3万人以上増え、2021年3月には累計で5万人を超えた。

サービス開発元であるMFSはこの勢いを加速させるべく、プロダクト開発や組織体制の強化に向けた投資を進める。そのための資金として、複数の投資家を引受先とした第三者割当増資と金融機関からの融資により総額で約12.8億円を調達した。

MFSでは2月に先行して新生企業投資、中銀リース、ディープコア、日本ベンチャーキャピタル、伊藤忠テクノロジーベンチャーズなどから6.3億円を調達したことを発表済み。3月31日に同ラウンドにおける6.5億円の追加調達を実施し、新たにJICベンチャー・グロース・インベストメントとあおぞら企業投資が株主に加わったことを明かしている。

ローンの融資承認確率を事前に推定しユーザーの心理的負担を削減

「住宅」は多くの人にとって人生で最大級の買い物になるとも言われる。その住宅購入を支える仕組みとして重要な役割を果たしてきたのが住宅ローンだ。

従来は住宅購入時に不動産会社からローンの案内を受けるケースが多かったが、近年はローンの選択肢が多様化してきた。そんな中でインターネットでさまざまな金融機関を比較し、オンラインから申し込みをする人も少しずつ増えている。

ただ、条件自体はネットで比較しやすくなっても、変わらずネックになっているのが「審査」だ。比較できたところで、肝心の審査に通らなければ意味がない。

「オンラインで住宅ローンを申し込む場合、多いときには150ほどの項目を記入する必要があり、最低でも20〜30分はかかります。審査に通るか全くわからない状態で申し込みをした結果、落ちてしまう人も一定数存在するのが現状です。早い段階で承認される確率を算出し、最初から通過する可能性の高い銀行を絞り込める仕組みがあれば便利だと考えました」(MFS代表取締役CEOの中山田明氏)

モゲチェックでは2015年8月のサービスローンチ以来、この仕組みを磨き続けてきた。

同サービスの特徴は過去5000件以上の審査結果データを分析して構築した独自のモデルにより、金融機関ごとの「融資承認確率」を事前に推定してくれる点にある。

モゲチェックの画面イメージ

ユーザーがやることはモゲチェック上で年収や用意している頭金など12項目を入力することだけ。その情報から各ユーザーに「審査に通る確率が高く、条件の良い金融機関」を絞り込んで提案する。

もちろんモゲチェックを使いながら各銀行の承認確率を見比べ、自身で納得のいくプランを探して申し込むことも可能。サイトでは細かい条件を調整しながら承認確率をシミュレーションすることもできる。

また中山田氏によると近年は住宅ローンの金利もかなり低くなってきており、金融機関ごとの金利差がほとんどない場合も多いという。そこで着目すべきなのがローンに付帯する団体信用生命保険(団信)だ。

団信のバリエーションは各商品ごとに異なるため、「実質的な金利」を把握する上では各住宅ローンに含まれる団信のメリットを押さえておく必要がある。

一般の人にとってはなかなかハードルの高い作業だが、モゲチェックでは最低限の情報を入力するだけで実質的な金利を算出。手軽に条件の良い住宅ローンを見つけられる仕組みを作った。

1年で利用者数は3万人以上増加、資金調達でさらなる成長へ

MFS代表取締役CEOの中山田明氏
MFS代表取締役CEOの中山田明氏は20年以上にわたって金融機関で住宅ローンの証券化業務に従事。消費者が知識のない中で住宅ローンを選ばざるを得ない環境を変えるべくMFSを立ち上げた

直近1年で大きくサービスが成長した要因としては、冒頭で触れたニーズの変化やプロダクトの進化に加えてビジネスモデルを改良した点も大きい。

当初MFSでは「さまざまな選択肢の中からユーザーにとってベストなものを提案する」ことを重視し、金融機関からではなくユーザーから手数料を得るモデルを採用していた。直接金融機関からマネタイズをすると銀行代理にあたり、銀行の監督下でビジネスをしなければならず、柔軟性に欠けることを懸念したからだ。

そのため実店舗を設けてユーザーと面談しながら住宅ローンを提案するところから始め、そこから電話、さらにはオンラインへと徐々にチャネルをアップデートしていったという。

転換点となったのは、アフィリエイトのような仕組みで広告代理店から手数料を得るモデルであれば、銀行代理にならないことがわかったこと。サービスの特徴を維持したままユーザーには無料で提供できるモデルに変えたことで、利用者が一気に広がった。

まさにこの1年はMFSとして「しっかり認知を獲得できれば今後さらに大きく成長できる」という手応えを掴めた期間にもなった。今回調達した資金を使って今後マーケティングにも大きく投資をしていく計画だ。

住宅ローン借入可能額を判定した上で、提携不動産会社から物件探しをサポートしてもらえる「モゲパス」も展開
住宅ローン借入可能額を判定した上で、提携不動産会社から物件探しをサポートしてもらえる「モゲパス」なども展開

モゲチェック関連ではAIの開発を進め「何をすればローンの承認確率が上がるのか」をAIがアドバイスしてくれるような機能の提供も見据える。これが実現すれば、ユーザーの希望する条件でローンを借り入れやすくなることにもつながりそうだ。

同社ではこれらの取り組みと並行して地銀や不動産会社などとの連携も進めながら、住宅ローンプラットフォームのさらなる普及を目指していくという。