
住所を知らない相手にも、SNSやメールで贈り物ができる──そんなコンセプトがウリの“ソーシャルギフト”の需要が年々拡大している。
矢野経済研究所が2019年に実施した調査によれば、ソーシャルギフトの市場規模は2014年度は82億円だったが、2018年度には約1167億円に拡大。4年間で約14倍の規模になっている。ソーシャルギフトの需要はさらなる拡大が見込まれており、2023年度には約9687億円の市場規模まで拡大すると予測されている。
また、コロナ禍もソーシャルギフトにポジティブな影響をもたらしている。緊急事態宣言の発令などによって冠婚葬祭が軒並み中止となり、対面でギフトを贈る機会は大幅に減少した。その一方、外出自粛によって気軽に家族や友人と会えなくなったことで、コミュニケーション手段としてソーシャルギフトが利用されるようになった。
「前年比で売上が約2倍に成長しました」と語るのは、ソーシャルギフトサービスを展開しているギフトパッド代表取締役の園田幸央氏だ。同社は4月12日、JICベンチャー・グロース・ファンド1号投資事業有限責任組合を引受先とする第三者割当増資により、4億円の資金調達を実施したことを明かした。
今回調達した資金は、ギフトパッドのデータベースと販路開拓を強みに、商品・販路・販売手法の3方向から、企業や自治体のDXを行う「GDX(Gift Pad Digital Transformation Platform)」の推進に充てる。園田氏は「短期間でのGDXの導入、ギフト市場を始めとする多くの企業や自治体を活性化していきたいです」と語った。

ギフトパッドの創業は2011年12月。同社は現在、個人向けのギフトサービス「Gift Pad(ギフトパッド)」や、法人向けのギフトサービス「3X’s ticket(サンクスチケット)」のほか、旅行先の名産品が手軽に送れるギフトサービス「みやげっと」など、複数のソーシャルギフトサービスを展開している。
ギフトパッドにはすでに10万個以上の商品が登録されており、2020年内に発行されたギフトコード数は3000万件を超えた。
「メーカーや産地が新たな販路を求める場合、価格競争はもちろん出店のためのコスト、認知度向上のためのコスト捻出を避けられません。ギフトパッドは登録するだけでさまざまな販路(案件毎のユニークなランディングページ)に自動的に商品が紹介されていきます。また、商品提供側が求める販路だけに紹介するなどターゲットを絞ったマーケティングも可能です。例えば、親和性の高い利用企業と商品提供メーカーがコラボすることで新たな顧客との接点を創出することもできます」
「商品提供者とサービス利用者の双方のニーズに合わせて、絞り込んだターゲットへのアプローチができるため、ブランド毀損を避けたいメーカーにとっても安心かつ信頼ができるプラットフォームとなっている。それがギフトパッドの強みです」(園田氏)
コロナ禍で、ますます注目を集めるソーシャルシフト市場。LINEのトークを通じて友だちとギフトを贈り合うことができる「LINEギフト」の2020年の年間総流通額は前年比250%増を記録するなど、急成長を遂げている。また、そのほかにもカジュアルギフトサービス「giftee」を展開するギフティやギフト特化型EC「TANP」を運営するGraciaといったプレーヤーも存在している。
「基本的にギフトパッドはあらゆる企業体をパートナーにできるプラットフォームを提供しています。例えば、カタログギフト大手のリンベルにはシステムを提供しながら同時に彼らの商材をギフトパッドでも取り扱っているほか、ギフティからはデジタルクーポンのギフトコードを仕入れ、低単価のキャンペーン利用などの場面を提供しています。ギフト業界においてそれぞれの得意分野を尊重しつつ商材を動かし、必要なシステムを提供するビジネスモデルなので競合とは認識していません」(園田氏)

市場の盛り上がりとともにGift Padや3X’s ticketも堅調に利用者を増やしているが、ギフトパッドが展開するサービスの中でも大きな注目を集めているのが、みやげっとだ。園田氏によれば、2020年に東京、大阪、神奈川をはじめ8つの自治体がギフトパッドのプラットフォームを活用した施策を実施。さらに10以上の自治体が今年度中の施策開始に向けて準備を進めている、とのことだ。
「県産品の域外販売は全国自治体の重要な課題となっていることもあり、みやげっとには大きな期待が寄せられています。今回、JICからの出資によってオールジャパンで取り組む地方創生事業への準備は整いました。今後はGDXの推進に加えて、みやげっとも一層のサービス拡充に取り組んでいきます」(園田氏)