BRANDITではアパレルECを展開する事業者向けに、生産から物流までをワンストップで支援するサービスを提供している
BranditではアパレルEC事業者向けに、生産から物流までをワンストップで支援するサービスを提供している

アパレルECを展開する事業者向けに、生産から物流までをワンストップで支援するサービスを提供しているBrandit。同社が資金調達を機に事業を加速させる。

4月12日に大広、SMBCベンチャーキャピタル、DIMENSIONを引受先とした第三者割当増資を実施したことを明らかにした。

今回の調達はBranditにとって3回目となるシリーズAラウンドとなり、累計の調達額は2.35億円となった。シリーズAのみの具体的な調達額は非公開だが、昨年8月に実施したプレシリーズAラウンドの調達額が1億円であることなどから1億円前後の調達になるとみられる。

リード投資家の大広とは業務提携も締結しており、D2Cブランドを手掛ける事業者のサポートに関して連携を進めていく計画。DIMENSIONはシードラウンドからの既存投資家であり、今回が3度目の出資になるという。

Branditは動画事業などを展開するCandeeからスピンアウトする形で、2019年9月に設立されたスタートアップ。代表取締役CEOの鍛治良紀氏はサイバーエージェントなどのIT企業やアパレルブランドのMARK STYLERを経て、Candeeで執行役員としてD2Cブランド「TRUNC 88」やライブコマース事業を牽引してきた人物だ。

現在BranditではCandeeから引き継いだTRUNC 88と並行して、これまで培ってきたナレッジを基にアパレルEC事業者をサポートするD2Cソリューション事業を手掛けている。

その中核を担うのが2020年6月にローンチした「BRANDIT system」だ。このサービスでは従来複数のツールに散らばっていた“アパレルECの根幹となるデータ”を一元管理できる。

BRANDIT systemでは複数のツールに散らばる情報を一元管理できる

具体的には受注、原価、チャネル別の手数料、販売開始日、配送データ、出荷売上などの情報を1カ所に集約。全ての担当者が同じツールを使うことで「大幅な業務効率化」が見込めるだけでなく、データが統合されることで新しい気づきも得られる。

たとえばBRANDIT systemに搭載されている「勝ち負け表」は、アイテムごとに損益分岐点を超えているかが一目でわかるのが特徴だ。

“勝ちに至るまでの日数”も把握できるため、見込みのある商品であれば追加発注など攻めのアクションを実行しやすい。一方で負けている商品はいち早く値下げなどの対策を実施することで、大きな損失を防げる可能性もある。

これまでは担当者の感覚や経験に頼りがちだった意思決定を、データに基づいて論理的に実行できるようにサポートするのがBRANDIT systemの役割だ。

「顧客に最も刺さっているポイントはデータが(複数のシステムに)バラバラにならないということです。販売管理システムや在庫管理システムなど個々のツールに関してはすでに複数のものが存在し、それらを同時に使いこなしていくのが一般的だったため、分散してしまうのはしょうがないと思われていました」(鍛治氏)

複数のツールを連携させることもできなくはないが、その際にありがちなのが「それぞれのツールで取得できるデータの素数(粒度)が異なるため、連携させようと思った際に上手くいかない」ことなのだという。

それを踏まえてBRANDIT systemを開発するにあたっては「各データをできるかぎり最小単位で集めること(マイクロデータ)」を重視し、データ同士を掛け合わせることで発見を得られる仕組みを磨いてきた。

鍛治氏自身、MARK STYLER時代も含めてアパレルECの経験が豊富で、現在も自社でD2Cブランドを手掛ける。自分たちがプレーヤーの立場を経験して「こういうことができれば便利なのに」と感じていたことをBRANDIT systemには詰め込んでいるという。

昨年8月に1億円の資金調達を実施して以降は社内の開発体制を整え、特にマーケティングに関連する機能のアップデートに力を入れてきた。

11月に「カゴ落ち対策ツール(カート離脱者への対策ツール)」を実装したほか、今後はCRMや分析ツール、AIを活用した販売支援ツールなどを順次提供する。

今後はマーケティングツールの機能拡充を進めていく計画

「ブランドとしては自社で顧客データを蓄積していきたい一方で、集客ができないために外部のECモールなどに頼らざるを得ないことも多いです。そうであれば、マーケティング面についてもBRANDIT systemでしっかりサポートしていこうということで機能開発を進めています」(鍛治氏)

CRMが搭載されれば、各ユーザーごとのサイト上での行動履歴や購買履歴、そのユーザーに対するメールの送信履歴などがきちんと追えるようになる。ゆくゆくはそれらのデータを活用してユーザーごとにトップページのレイアウトを変えたり、商品をレコメンドしたりできる機能も搭載する計画だ。

BRANDIT systemは初期費用のほか、売上の11%が月額のシステム利用料として必要になる仕組み。そのため顧客の事業が成長するほどBranditの収益も増える構造になっており、上述したようなマーケティングツールも既存顧客には基本的に無償で提供するという。

現在Branditでは12ブランドにサービスを提供している状況。今回の調達を機に組織体制を強化し、BRANDIT system上で使えるツールを拡充しながら顧客の拡大を目指す。