
RFIDを用いてモノの位置をデジタルマップ上に表示できる技術を手がけるRFルーカスが事業を拡大している。小売業や製造業の在庫管理を効率化する「Locus Mapping(ルーカスマッピング)」の拡販を進めるべく、安田倉庫、三井不動産より新たに3億円の資金を調達した。
RFIDは“ユニクロの無人レジ”を始め、近年アパレル業界などで利用が広がっている自動認識技術だ。
電波によってRFタグ(ICタグ)のデータを読み書きする仕組みで、バーコードやQRコードと異なり一括で複数のタグを読み取ることが可能。離れた場所にあるタグや箱の中に入っているタグにも対応できるため、棚卸し作業や入出荷作業の効率化に繋がることが期待されている。

一方で「位置特定の精度においては課題もあった」とRFルーカス取締役COOの浅野友行氏は話す。RRIDはその性質上、周辺のタグをまとめて読み取ってしまうため、それぞれのタグがどこにあるかまでを細かく識別することは難しかった。
RFルーカスの強みはまさにその課題をクリアできる技術にある。すでに日本、米国、欧州で特許を取得している同社の電波位相解析技術は、RFタグの貼られた製品の位置を正確に特定することが可能だ。
同社の在庫管理システム・Locus Mappingにはこの技術が取り入れられているため、RFIDハンディリーダーをかざせば製品の位置がデジタルマップ上に表示される。あらかじめ棚にもタグを設置しておけば、「どの棚にどの製品が保管されているのか」が一目でわかる。
これによって従来は目視での確認やバーコードの活用が一般的だった棚卸し作業・入出荷作業の効率化だけでなく、担当者の経験や勘に頼っていた在庫探索をスムーズに進められるようにもなるという。

たとえば小売店舗であれば、店員が在庫の位置を把握するのに役立つのはもちろん、サイネージやアプリを通じて来店客が商品場所を調べられるような仕組みも作れる。
浅野氏によるとECの普及による購買行動の変化として、あらかじめオンライン上で欲しい商品の目星をつけて来店する顧客が増えてきているそう。「この商品はどこにありますか」と来店客から聞かれた場合、Locus Mappingを活用すればすぐに対応することが可能だ。
同様にECで注文した商品を店舗で受け取る(BOPIS)ニーズも増えてきているが、バックヤードで保管されているさまざまな商品の中からすぐに特定のモノを見つける際にもLocus Mappingが役に立つ。
こうした店舗のデジタル化の必要性はコロナ禍でさらに高まっている。また小売業だけでなく、物流倉庫などでもコロナをきっかけにデジタル活用が加速しているという。
現在Locus Mappingはビームスやバロックジャパンリミテッドといった大手小売業、アステラス製薬、ジップ(ベネッセコーポレーションのグループ会社)を始めとした大手製造業・物流業など数十社に導入が進んでいる状況だ。
グローバルではRFIDを活用した位置特定サービスを展開する企業も存在するものの、精度や価格がネックとなり広く普及しているものはないそう。BLE(Bluetooth Low Energy)やUWB(Ultra Wide Band)など別の無線通信技術を用いた同様のソリューションもあるが、精度が高い場合もタグの価格(1つあたり500円〜1000円ほどかかるとのこと)の問題で利用できるシーンが限られる。
RFIDはタグ1枚あたりが5〜10円と安価であることも大きなポイント。浅野氏の話では商品単価の低い日用雑貨などでは導入ハードルが高いものの、アパレルや産業系メーカーなど幅広い業界での利用を見込んでいるようだ。
2020年2月にLocus Mappingをローンチして以降の約1年間は、顧客の声も聞きながらプロダクトの開発に集中してきた。ある程度導入も進んできた中で、今後はより拡販にも力を入れるべく今回の資金調達に至ったという。
RFルーカスでは調達した資金を用いて組織体制を拡充し、事業を加速させる計画。今回は事業シナジーを重視したラウンドになっており、安田倉庫と三井不動産とは事業面での連携も見据えているとのこと。また中長期的には自動走行ロボットと組み合わせた無人読み取りなど、さらなる効率化・省人化に向けた取り組みも進めていくという。