AIチャットボットをノーコードで構築・運用できる「KUZEN」
AIチャットボットをノーコードで構築・運用できる「KUZEN」

コーディングなしでAIチャットボットを構築できる「KUZEN(クウゼン)」運営元のコンシェルジュが事業を拡大している。

チャットインターフェースを活用した顧客獲得や顧客対応業務の効率化、社内コミュニケーションの自動化など企業のデジタル活用を支援。ANAや三井不動産、カルビーなどエンタープライズ企業を中心にサービスの導入社数は150社を超えた。

コンシェルジュは2015年2月の設立。共同創業者である太田匠吾氏(代表取締役CEO)と白倉弘太氏は共に東京大学大学院の卒業生だ。

太田氏はJPモルガン証券や産業革新機構でのビジネス経験、白倉氏はアクセンチュアや複数のスタートアップでのサービス開発経験を経てコンシェルジュを立ち上げた。

KUZENの開発を始めたのは創業翌年の2016年から。この年はLINEやFacebookが相次いでボット開発のAPIを公開したことから「チャットボット元年」とも呼ばれ、チャットボットへの注目が高まったタイミングだ。

コンシェルジュという社名にもあるように、ロボットがコンシェルジュのような役割を担うことによって「チャットインタフェース上でいろいろなことができるようになると便利なのではないか」と考えたことが、KUZENを開発する大きなきっかけになったと太田氏は話す。

その思想はプロダクトの機能面などにも反映されている。チャット上で簡単な質問応答ができるチャットボットツール自体はすでに複数存在するものの、KUZENでは当初から「ユーザーのことを理解して、ホスピタリティのある対応ができるチャットボット」を実現することを念頭におき、複雑な業務や幅広いニーズに応えられるようなシステムを目指してきた。

たとえばAPI連携を通じて、さまざまな外部システムとつなぎ込めるのも特徴の1つだ。人材マッチングサービスを展開するランスタッドでは求職者と担当者との初回面談の設定にKUZENを活用しているが、Googleカレンダーなどとも連携することで日程調整までがチャット上でスムーズに完結する仕組みを作った。

これによって従来はコーディネーターの対応が難しかった時間帯でも応募を受け付けられるようになり、面談までのリードタイムが平均6日から平均41時間以内にまで削減されたという。

外部システムとの連携によって幅広い業務の効率化や自動化に使えるのが特徴の1つ
外部システムとの連携によって幅広い業務の効率化や自動化に使えるのが特徴の1つ

太田氏によると、特に大手企業では複雑な質問や多様な質問などを含めてコンシェルジュ 的に対応できるツールが求められているそう。それを突き詰めていくと、結果的に多くの場合は「SIerに頼んでフルスクラッチで作るしか選択肢がなかった」(太田氏)。

KUZENにはそのために必要な機能が取り揃えられていることに加え、ダッシュボード上からノーコードでチャットボットを作成できる点などが顧客からの評価につながっているという。

同サービスではノードと呼ばれるボックスで指示や質問への回答、条件等を設定し、それらを矢印で接続してチャットボットを設計していく。シナリオがうまくいっていない場合やコンバージョンにつながっていない場合などには、担当者自らすぐに改善できる。

「ちょっとした修正をする際にも毎回ベンダーに聞かなければいけないとなると大変です。必要に応じて自分たち側ですぐにシナリオを改良できる点はメリットだと感じていただけています」(太田氏)

現在はサポートも込みで月額20万円からの大手企業向けSaaSとして展開している。

かつては今よりも安価な価格帯でセルフサーブ型(手厚いサポートなどがなくても、顧客自身がサービスを理解して使えるようなタイプの製品)のプロダクトとして運用していた時期もあったが、あまりうまくいかなかったことから方向性を転換。シナリオの設計などはコンシェルジュの担当者が支援しつつ、運用フェーズに入って以降は顧客側で都度ブラッシュアップを重ねていくやり方が多いそうだ。

コンシェルジュ ではさらなる成長に向けて、東京大学エッジキャピタルパートナーズおよびUB Venturesを引受先とした第三者割当増資により総額4.5億円を調達した。今後は組織体制を拡充しながらプロダクトの改良と拡販に力を入れていく計画だという。