パネイルのウェブサイトより
パネイルのウェブサイトより

経産省が主催するスタートアップの認定制度「J-Startup」に選定され、日本経済新聞が2018年に実施した「NEXTユニコーン調査」で2位を獲得。同年にForbes JAPANが実施した「日本の起業家ランキング」で7位にランクインしていた、新電力ベンチャーのパネイルが破綻した。

これまでに総額32億1900万円の資金を調達し、想定時価総額(STARTUP DB調べ)は2019年12月に801億円を記録するなど、"ユニコーン企業の有望株”として期待を集めていた同社だったが、5月18日付けで東京地裁に民事再生法の適用を申請していたことがわかった。

負債総額は約61億円。電力需要の急増による電力の仕入価格高騰で収益が悪化。また、2018年に東京電力ホールディングス傘下の東京電力エナジーパートナーと立ち上げた合弁会社「PinT(ピント)」では当時のCTO(最高技術責任者)の移籍を巡って東電側と対立するなど、トラブルも抱えていた。

事業環境の悪化に加え、経営トラブルによって事業展開のメドも立たなくなり、資金繰りもひっ迫。最終的に自主再建を断念する形となった。今後は再生手続の下で支援スポンサーを探し、事業継続の道を模索していくという。

パネイルは2012年の設立。当初は太陽光発電業者向けマッチングサイトを運営していたが、2016年4月の「電力小売自由化」を機に事業をピボット。次世代型エネルギー流通基幹システム「パネイルクラウド」を開発し、電力小売事業に参入した。

パネイルクラウドは、人工知能とビッグデータの分析技術を活用した電力需給オペレーションの自動化システムとして注目を集め、2017年9月期は2億8000万円の黒字を達成。2018年6月にはインキュベイトファンドやSMBCベンチャーキャピタルから総額19億3000万円の資金調達を実施するなど、右肩上がりで成長を続けていたパネイルだったが、電力仕入れ価格の高騰で収益が悪化。18年9月期には最終損益が26億円の赤字に転落していた。

その後、同社は市場価格に大きく左右される電力小売事業からプラットフォーム事業に舵を切り、前述のPinTを設立。関係者の話によれば「PinTの事業は好調だった」という。

しかし、2020年1月にパネイルの当時のCTOがPinTに移籍したことをきっかけに、東京電力エナジーパートナーとの対立が浮き彫りとなる。電力仕入れ価格の高騰の煽りを受け事業が低迷していたパネイルだったが、東京電力エナジーパートナーとの対立が業績悪化の決定打となった。日本経済新聞の報道によれば、パネイルは2020年11月に希望退職を募り、全社員の約90%が退職したほか、12月には創業者で代表取締役社長の名越達彦氏を除く取締役も退任しているという。