iRobotの「Root rt0」(左)と「Root rt1」(右) すべての画像:iRobotのオンライン戦略発表会のスクリーンショット

ロボット掃除機「ルンバ(Roomba)」で知られるiRobot(アイロボット)が、そのロボット技術を生かしてプログラミング教育の分野に進出しているのをご存じだろうか。同社のRootシリーズはルンバをモチーフとし、プログラミングを実際に体験できる小さなプログラミングロボットだ。アイロボットジャパンは、6月8日の「ルンバの日」にあわせて、Rootシリーズの低価格な新モデル「Root rt0」の投入を発表した。

ルンバのようなプログラミング学習ロボット「Root」シリーズ

Rootシリーズは掃除はできないが、ルンバのようにコロコロと走行するロボット。マーカーを持たせてお絵かきしたり、光らせたり音を奏でたりとさまざまなアクションに対応する。子どもたちはロボットでの遊びを通して、プログラミング的思考や想像力を育める。

創業から20年弱に渡りロボット掃除機を作り続けてきたiRobot。同社ではRootシリーズを「未来のロボット科学者を育成するために」開発したという。日本では2021年2月に最初のモデル「Root rt1」を発売している。

Root rt1はホワイトボードに貼り付けて壁面走行が可能
Root rt1はホワイトボードに貼り付けて壁面走行が可能

Root rt1は2万9800円(税込・iRobot公式オンラインストアでの直販価格)。マグネットで黒板やホワイトボードに貼り付いて壁面を走行できる。また、ホワイトボードクリーナーの機能も備える。天面はホワイトボードになっており、本体上に文字やイラストを書き込める。

今回発表された追加モデルRoot rt0は7月8日に発売予定。マグネット貼り付けや天面のホワイトボード、イレーサー機能などを省くことで、直販価格を2万4800円(税込)に抑えた。

Root rt0はスケルトンの天板を採用している
Root rt0はスケルトンの天板を採用している

たとえば小学校の授業で使う際は、教師がホワイトボード上でRoot rt1を使って見本を示して、児童は低価格なRoot rt0を使って学習するといった使い分けが可能としている。

ロボットのプログラミングはタブレット端末の専用アプリ「iRobot Coding」で行う。このアプリは無償で提供されている。コーディングの方式は3レベルあり、学習者のレベルにあわせて段階的なプログラミング教育が可能だ。

レベル1はブロックを組み合わせてロボットの動きを表現するビジュアルプログラミング言語で、小学生でも直感的にプログラミングが可能となっている。レベル3では、Pythonをベースとしたフルテキストのコーディングを体験できる。学習レベルを切り替えるとコードを自動で変換する機能も備えており、上位レベルにスムーズに移行できるように工夫されている。なお、iRobotではRootによるプログラミングを疑似体験できるWebサイトを公開している。

Rootはブロック形式のビジュアルプログラミングでロボットを操作できる。アプリは日本語化されている
Rootはブロック形式のビジュアルプログラミングでロボットを操作できる。アプリは日本語化されている

小学校に1000台を寄贈、「口コミ」で浸透図る

アイロボットジャパンがRootシリーズで狙うのはプログラミング教育市場だ。2020年度の新学習指導要領では、小学校での教育課程でプログラミング教育が必修化された。

同社はRoot rt1を1000台、小学校に寄贈する「みんなでRootプロジェクト」というキャンペーンを実施。教師の“口コミ”による販売拡大を狙っている。

Rootプロジェクトチームの村田佳代氏
Rootプロジェクトチームの村田佳代氏

日本展開にあたり、小学校向けの学習教材も用意された。教科書を出版する東京書籍が監修し、小学校の授業でそのまま使える内容となっている。

6月8日のオンライン発表会では、Root rt1の導入事例として仙台白百合学園小学校でのプログラミング教育の様子を動画で紹介。児童自らロボットプログラミングに取り組み、学習している様子を披露した。実際に試した小学校の教師は「触ってみたとき本当に楽しそうで、抵抗なくプログラミングに取り組んでいるのが伝わってきた」とコメント。教える上では組み立てやセットアップ不要でロボットが扱える点も評価していた。

仙台白百合学園小学校でのプログラミング教育の様子

アイロボットジャパンによると、Root rt1は5月末までに34の都道府県の小学校で採用されている。ただしこの採用実績には寄贈分も含まれており、実際の販売実績については明らかにしていない。

全国34都道府県で採用
全国34都道府県で採用

白板走行などの機能を省略して価格を抑えたRoot rt0の投入により、小学校でのさらなる普及を狙う。まずは全国47都道府県の小学校で採用を目指すとしている。

Rootは東京都の体験型英語学習施設「TOKYO GLOBAL GATEWAY」での採用も決定。英語によるプログラミング教育講座を開講予定としている
Rootは東京都の体験型英語学習施設「TOKYO GLOBAL GATEWAY」での採用も決定。英語によるプログラミング教育講座を開講予定としている

Root rt0の発売にあわせ、Rootシリーズ専用のアクセサリーも投入される。その中でも今夏発売の「Rootキャリーバッグ」は、日本の小学校教師の要望を受けて開発された製品だ。さらに、Rootの天面にレゴ互換のブロックを飾れるパーツ「Root Brick Top」も用意される。

Root専用アクセサリーも販売開始
Root専用アクセサリーも販売開始

なお、Root rt0は低価格モデルとされているが、日本での価格は2万4800円(税込)で、上位モデルとの価格差は5000円にとどまっている。

実は北米では129.99ドルとより入手しやすい価格となっており、州によって異なる小売売上税を含めてもおよそ1万5000円程度と、日本よりも低価格で販売されている。

この価格差についてアイロボットジャパンは「輸入コスト、為替変動などの要素に加え、国内の市場適正価格としている」と説明している。実際に日本での正規発売にあたっては日本語化や技術認定取得、サポート対応などの追加のコストが発生する。さらに、まずは小学校を中心に徐々に出荷を増やしていくという方針のため、価格水準が上昇するのは致し方ないことだろう。

いずれにせよ、ロボット掃除機という身近なアイテムをモチーフに、自由に動かしながらプログラミングを体験できるRootシリーズは、ルンバのように遊び心にあふれたiRobotらしい製品といえる。“口コミ”を軸に小学校への浸透を図る戦略の今後が注目される。