2020年に行われたDotwell社のバーチャルアイドルを交えた、ゲームのプロモーションイベント 画像提供:Dotwell
2020年に行われたDotwell社のバーチャルアイドルを交えた、ゲームのプロモーションイベント 画像提供:Dotwell

一昔前には「未来の産業」と予想されていた、バーチャルアイドル。気が付けばその存在はYouTubeなどの動画プラットフォームをはじめ、私たちの日常生活の中に溶け込みつつある。今やバーチャルアイドルは見る側のための娯楽の一環のみならず、発信する側のさまざまな表現手段になりつつある。

この状況は隣国の中国でも同様だ。今回は中国におけるバーチャルアイドル出現の経緯と、それに対応するデジタルプロモーションの進化を通じて、変化を続ける中国バーチャルアイドルの今を前後編に分けて伝える。

日本生まれの“バーチャル”なアイドルたち

現実に存在しない人物をアイドルコンテンツとして扱う試みは、1980年代には現れていた。1980年代のアニメ『超時空要塞マクロス』の登場人物である「リン・ミンメイ」は、作中世界のアイドルという役付けを飛び越え、キャラクター名義でCDを販売するなど、バーチャルアイドルの先駆けといえる存在だ。

バーチャルアイドルの存在感を強めるきっかけとしては、2007年の「初音ミク」の登場が大きい。音声合成ソフトという位置づけを超えて独自の設定や性格を与えられた彼女は、パソコンの中だけでなく実際のライブ会場でもアイドルとして活躍。バーチャルアイドルの第一世代と言って差し支えない存在だ。

初音ミクのライブ画像。音声編集ソフトの枠を超えた人物設定は、誕生日から人間関係にまで及ぶ クリプトン・フューチャー・メディアのプレスリリースより
初音ミクのライブ画像。音声編集ソフトの枠を超えた人物設定は、誕生日から人間関係にまで及ぶ クリプトン・フューチャー・メディアのプレスリリースより

2016年には第二世代ともいえる「キズナアイ」がYouTubeでデビューした。彼女を第二世代たらしめているのは、モーションキャプチャーを取り入れた動画編集技術の導入である。実際の人間の表情や動作を取り込むことで、より一層人間に近い演出を可能とした。キズナアイの登場を皮切りに、個人で活動するYouTuberも次々とバーチャルYouTuber、すなわち「Vtuber」へと転身を図りつつある。