
メルカリの新たな柱となりうる事業を企画、開発していく──そんな目的のもと、2021年1月に立ち上がったメルカリの子会社が新生「ソウゾウ」だ。
同社は2015年に1度、設立されている。地域コミュニティアプリ「メルカリ アッテ」や本やCDなどの取り引きに特化したフリマアプリ「メルカリ カウル」などを展開してきたが、2019年6月に解散。それから1年半が経ち、再始動した。
新たなソウゾウが“メルカリの新たな柱”として狙うのは、BASEやヘイなどの競合ひしめく小規模事業者の「EC化支援」だ。同社は7月28日、簡単にネットショップの開設ができるECプラットフォーム「メルカリShops」の先行受付を開始することを発表した。

「かんたん」「売れる」メルカリのノウハウを生かし、EC化を支援
メルカリShopsは前述したBASEやヘイと同様に、誰でも簡単にネットショップの開設ができるサービス。スマホひとつでネットショップの作成から出品、在庫管理まで行えるほか、月間利用者1904万人のメルカリユーザーに商品が販売できることが特徴となっている。
ネットショップの作成にかかる初期費用、月額利用料は無料。なお商品が売れた際に、販売価格の10%が販売手数料としてかかる。

個人アカウントとの使い分けは可能となっており、メルカリShopsで作成したアカウントでは商品の色やサイズ、各在庫数なども一括設定して販売できる。そんなメルカリShopsについて、ソウゾウ代表取締役CEOの石川佑樹氏はこう語る。
「(フリマアプリの)メルカリに出品するのと同じ感覚でネットショップを作成できるだけでなく、AIによるマッチングで出品してすぐに売れる体験がメルカリShopsの特徴となっています。メルカリがフリマアプリで培ってきたノウハウをもとに、小規模事業者のEC化における課題解決に取り組んでいければと思います」
メルカリがフリマアプリで培ってきたノウハウ──それが「かんたん」に使えて、すぐに「売れる」体験の提供だ。石川氏によれば、2021年7月時点でメルカリの累計出品数は20億品を超えているほか、1秒あたり約7.2品が売れている状況にあるという。
「これまでにエスクロー決済やらくらくメルカリ便で“かんたん”に使える環境を整え、AIによるマッチングで出品したら“すぐに売れる”体験を提供してきました」(石川氏)
そうした強みを小規模事業者の「EC化支援」に活用するのが、ソウゾウの狙いだ。まずは農家・漁師、飲食店、地方特産品、ハンドメイド、アパレル、雑貨の6つを注力カテゴリにし、メルカリShopsの普及を図っていく予定とのことだ。
既存サービスを「使いこなせない層」が狙い
とはいえ、小規模事業者の「EC化支援」に関しては先行するプレーヤーも数多くいる。例えば農家・漁師の領域だけでも、前述したEコマースプラットフォーム「BASE(ベイス)」を手がけるBASEやECサイト開設・運営サービス「STORES」を手がけるヘイ、産直通販サイト「食べチョク」を手がけるビビッドガーデンなどがある。競合ひしめく市場に、なぜ今後発で参入したのか。その背景には「ECサイトを開設したいけどできない」(石川氏)現状がある。
総務省が実施した「家計消費状況調査」によれば、ネットショッピングの支出額やネットショッピング利用世帯の割合は増加傾向にある。
そうした環境の変化を踏まえ、休業要請や時短要請で売り上げや販売機会が減少した事業者はECサイトに活路を見出すが、石川氏によれば「ECサイトを立ち上げたものの実際に商品が売れた経験がある人は4人に1人しかいない」という。
「管理・運営できる人材がいない、売れるかどうかわからない、といった理由からECサイトを開設したいのに開設できていない人がたくさんいます。また開設したにもかかわらず、集客できないといった理由で商品が売れていないショップも数多くあります」
「ECサイトの開設・運営に関する知見・ノウハウがないことが理由で、ECサイトの開設を諦めてしまってい人は世の中にまだまだある。日本のEC化率6.4%という数字が、それを顕著に表しています。なかなか既存サービスを使いこなせていない、使い方がわからないといった人たちに対して、メルカリの強みを生かした“かんたん”で“売れる”ネットショップ作成サービスは需要があるのではないか、と思ったんです」(石川氏)

この“かんたん”に作成でき、集客なしで1900万人以上のメルカリユーザーに“売れる”機会を提供する。これが既存サービスとの最大の違いになっているという。また農産物の販売に関しては、食べチョクの販売手数料20%よりも安い手数料が設定されている。
また、メルカリは2016年にBASEに出資して資本業務提携を結んでいたが、2020年7月時点でメルカリが保有していた株はすべて売却済み。現在、会社としての資本関係はない。
メルカリShopsはまず、メルカリのアプリ内に「ショップ」タブを開設することでスタートを切る。少しずつユーザーに機能を開放していきながら、今後はアプリ外にも独立したウェブサイトとしてネットショップを開設できるようなサービスにしていく予定だ。
メルカリShopsついて、メルカリ代表取締役CEO (社長)であり、ソウゾウ取締役の山田進太郎氏は「メルカリ、メルカリUS、メルペイに続く、第四の柱に育てていく。メルカリShopsの成長がメルカリグループ全体の成長に大きく貢献する」と期待を口にした。
