
フリマアプリ「メルカリ」における利用実績などをもとに与信を決める──そんな考えのもと、2019年4月にメルペイが提供を開始したのが「メルペイスマート払い」だ。
メルペイスマート払いはその月に発生した利用金額を翌月にまとめて支払いできる、いわゆる“後払い”サービス。まずは翌月支払いの機能として提供し、2020年7月には分割して支払いが行える「定額払い」機能の提供を開始した。
その後、2021年4月に施行された「改正割賦販売法」によってAIやビッグデータを使った与信審査が解禁された。そうした社会の変化を背景に、メルペイは新たな金融サービスを始める。8月3日、メルペイはメルカリでの利用実績などを元に金利・利用限度額が決まる少額融資サービス「メルペイスマートマネー」の提供を開始した。

メルカリの利用実績などをもとに与信判断、20万円を上限に融資
メルペイスマートマネーは、一般的な金融システムで用いられる属性情報ではなく、メルカリの利用実績などをもとにした与信で金利・利用限度額を判断し、20万円を上限に融資を行う。金利は年率3.0~15.0%を採用しており、メルカリの利用実績などをもとに変動する。申し込みと審査、利用、返済はすべてアプリ内で完結する。
具体的にはアプリ内で申し込み情報と利用金額を入力すると、審査通過後にメルペイ残高に入金。チャージされたメルペイの残高は、メルカリアプリ内やメルペイ加盟店で利用できるほか、「おくる・もらう」機能や銀行口座への出金も可能となっている。

利用後は、メルカリのポイントや売上金で返済することができるほか、月々の返済日・返済額などの返済プランもアプリ上でいつでも変更できるため、利用状況やその時の支払い能力に応じて返済方法を柔軟に選択できるという。
メルペイスマートマネーの特徴はメルペイスマート払いと同様に、従来のクレジットカードやキャッシングサービスで用いられていた属性情報で与信を判断しない点にある。メルペイ 執行役員CBOの山本真人氏は「利用実績をその都度反映することで、最新の情報をもとにした与信判断ができるようになる」と語る。
「属性情報は変化の頻度が高くないこともあり、属性情報に基づく与信では最新の状況が反映されにくい、という課題がありました。ただ、メルペイではメルカリの利用状況、販売実績というリアルタイムのデータをもとにすることで、最新の状況を反映させた与信判断ができています」(山本氏)

また山本氏によれば、具体的には2017年6月に試験運用を始めたメルペイスマート払いの前身となる機能「メルカリ月イチ払い」の提供から4年ほどかけて蓄積させてきた行動実績データを独自のAI技術によって機械学習させることで、利用状況にあった「適切な与信」が提供できているとのこと。実際、メルペイスマート払いにおいては、利用者の99%以上が利用分を支払い済みだという。
とはいえ、メルペイスマートマネーは融資サービスである以上、支払い能力以上の利用や支払いのための複数サービスの利用といった「多重債務」の問題も発生する可能性がある。その点について、メルペイはどう考えているのか。
審査の仕組みとして「証書貸付」を採用、多重債務を防止
支払い能力以上の利用への対策として、利用ごとにメルカリでの利用実績などを元に審査を行う「証書貸付」を審査の仕組みとして採用しているという。一般的な金融システムでは一度の申し込みで利用限度額が決まる「極度貸付」が採用されているが、「都度審査を行うことで多重債務懸念のある人の利用を抑制できる」(メルペイ取締役の信川享介氏)という。

また、融資の申し込み前にユーザーの適用金利や利用の見通しをアプリ内で表示することで借り過ぎの防止を図るほか、返済日・返済額などの柔軟に変更できる機能を提供することで、ユーザーのキャッシュフローの変動に対応できるようにしている。
「返済に困っている人に対して有人の相談窓口を開設することで、支払い条件の変更も含めて柔軟に対応できるようにしたいと思っています。こうした対策によって、雪だるま式に債務が増えてしまうことを防止していく予定です」(信川氏)
なお、信川氏によればメルペイスマートマネーの返済に滞納した場合は法令に基づき、指定信用情報機関「CIC」に登録されるとのこと。

今回のメルペイスマートマネーについて、山本氏は「日常の現金利用が必要な場面などでもメルペイの活用の幅を広げ、属性情報のみでは与信を受けにくかった人でも、学習やスキルアップといった自分への投資などに利用してもらえたら」と語った。
メルペイが2020年11月に行った金融サービスに関するアンケート調査によれば、クレジットカードのキャッシングや銀行ローンの利用シーンとして、生活費や趣味・娯楽費、一時的な資金不足の補充が上位の回答となったという。一方で、スマホ金融サービスが提供する少額ローンの利用シーンとしては、生活費や趣味・娯楽費に次いで「自己啓発や自己投資のために利用したい」と答えた方の割合が高かったとのこと。
この個人向け融資の領域ではLINEグループが2019年8月に「LINE Pocket Money」を提供。独自の与信をもとに融資を行っている。またPayPayもPayPay銀行(旧:ジャパンネット銀行)と連携したローンサービスを展開している。