つくりおき.jpが提供する惣菜
つくりおき.jpが提供するそうざい すべての画像提供:Antway
  • 毎週届く冷蔵そうざい、“あえて”メニューが選べないワケ
  • 100人の調理人が自社キッチンでそうざいを製造
  • ミッションは「あらゆる家庭から義務をなくす」

「子育て共働き世代にラクをしてほしい」──スタートアップのAntwayはこうした思いのもと、フードデリバリーのサブスクリプションサービス「つくりおき.jp」を展開する。

フードデリバリーのサブスクリプションサービスであるため、飲食店の注文をすぐに届けるUber Eatsや出前館といったサービスとは異なり、自社キッチンで製造した冷蔵のそうざいを週に1回のペースで配達する。家庭的なメニューが多く、管理栄養士が監修するため、栄養バランスも考慮されているという。

つくりおき.jpがスタートしたのは2020年の2月。子育て・共働き中の世代を中心に支持を集める。現在は東京23区のみでの展開だが、今後は提供エリアを広げていく予定だ。

サービス拡大のための資金として、Antwayは約15億円の資金調達を実施した。内訳はニッセイ・キャピタル、DIMENSION、ジャフコグループ、KDDI Open Innovation Fund3号とSMBCベンチャーキャピタルからの第三者割当増資、そして金融機関からのデットファイナンスだ。

つくりおき.jpを提供する理由や今後の展開について、Antway代表取締役の前島恵氏、そして取締役CMOの小川未来氏に話を聞いた。

毎週届く冷蔵そうざい、“あえて”メニューが選べないワケ

サービスのメインターゲットである主婦層などにも認知が高いことからコミュニケーションアプリ「LINE」経由でサービスの利用登録をする。LINEでつくりおき.jpの公式アカウントを友達登録し、クレジットカードもしくはLINE PAYで決済をする。LINEでは注文や配達日の指定のほか、注文のキャンセルができる。「週3食プラン」(週あたり税込8424円)と「週5食プラン」(1万3824円)の2つのプランを用意している。なお、1食分は大人2人・子供2人の4人分相当の分量となっている。

そうざいは毎週異なるメニューが届く。週3食プランでは8種類、週5食プランでは11種類のそうざいが用意され、例えば「ピザバーグ」、「ラタトゥイユ」や「蒸し野菜のツナソース」といったメニューが提供される。ただしユーザーは自分でメニューを選ぶことはできない。“あえて”メニューを選べない仕様にしているのだという。

「つくりおき.jpはサブスクリプションサービスなので、利用開始後はお休みをしていただかない限りは毎週、料理が届きます。メニューは弊社が決めています。その理由は子育て共働き世代に『ラクをしてほしい』からです。一度注文すれば以降は何もしなくていいようなサービス設計になっています」(前島氏)

ピザバーグ
ラタトゥイユ
蒸し野菜のツナソース

100人の調理人が自社キッチンでそうざいを製造

Antwayではそうざいの自社製造にこだわっている。サービス開始当初はOEMも試したが、それでは味の面で顧客のニーズに応えることは難しかった。そのため、自社で都内に3つのキッチンを用意してそうざいを製造している。同社の約140人の従業員のうち、約7割にあたる100人ほどが専任の調理人だ。

「レシピやメニューの開発から材料の仕入れ、調理までを自社で行っています。キッチンも自社のものです。OEMだと自社でアセットを持たずに済みますし、注文や売り上げの増減に応じて柔軟に製造量を変更できるという利点があります。しかし、それでは顧客のニーズに応えるのが難しかったのです」

「つくりおき.jpでは味や食感を損なわないために、そうざいを容器に詰めて冷蔵で提供しています。一方OEMの場合、そうざいは真空パックされたり、保存料が多く使われたりした状態で納品されます。長期保存やリスクヘッジのためです。加えて、OEMですと顧客に新メニューを提供するまでに2カ月ほどのリードタイムを要してしまいます。弊社では自社のキッチンを構えているため、顧客のニーズをくみ取り、すぐにプロダクトに反映することが可能です」(前島氏)

Antwayの自社キッチン
Antwayの自社キッチン

つくりおき.jpが競合として考えるのは、材料とレシピをまとめたミールキットを提供するオイシックスの「Kit Oisix」や、出張シェフが自宅で料理を作り置きしてくれるシェアダインの「シェアダイン」といったサービスだ。小川氏はこれらのサービスと比較して、調理の手間がないことやシェフを自宅に招くというストレスがかからないことが強みだと語る。最近では、冷凍そうざいのサブスクリプションサービスなどもあるが、つくりおき.jpのそうざいは冷蔵保存のため、冷凍と比較して素材の風味や食感を生かすことができると語る。

ミッションは「あらゆる家庭から義務をなくす」

Antwayではサービス提供エリアの拡大を目指す。キッチンを増設することで、東京23区から千葉県、神奈川県、埼玉県まで進出する予定だ(時期は未定)。また、「あらゆる家庭から義務をなくす」というミッションのもと、新プロダクトの開発も進めるという。Antwayは創業よりこのミッションを掲げて、つくりおき.jpを展開してきた。同社は2019年、ニッセイ・キャピタルのアクセラレーションプログラム「50M」に参加。つくりおき.jpはそこで誕生したサービスだ。

「50Mに参加し、資金を得たことで視野が広がりました。人生をかけて解決したい課題を考えたところ、『機会を平等にしたい』という結論に至りました。僕は小学生の頃、熊本県に住んでいたのですが、小学校2年生で不登校になりました。田舎ですし、インターネットもありません。選択肢が何もなく、家に引きこもるしかありませんでした。その後は親の転勤で埼玉県に引っ越すのですが、モノと人と情報に溢れていて、『チャンスが多いな』と衝撃を受けました」

「そのような経験から、環境、性別、年齢、国籍や文化圏等の環境要因によって阻害される機会に対して違和感を感じ、平等にすることで解決したいと思うようになりました。やるからには多くの人の機会の平等を達成したい。考えた結果、女性の機会の平等を達成することが近道だと考えたのです。特に家庭の中では女性の機会の平等が達成されていません。家事は女性がやるものだという考え方が今でもまかり通っていて、女性は時間もエネルギーも奪われてしまっています。つくりおき.jpはこのような課題を解決するための一手段です」(前島氏)

Antwayのメンバーたち。前列一番左が代表取締役の前島恵氏、中列の右から3番目がCMOの小川未来氏
つくりおき.jpが提供する惣菜 すべての画像提供:Antway
ピザバーグ
ラタトゥイユ
蒸し野菜のツナソース
Antwayの自社キッチン