ビザスクはさらなる事業拡大に向け、米国の同業企業であるColeman Research Groupを約1億200万米ドル(約112億円)で買収することを発表した
ビザスクはさらなる事業拡大に向け、米国の同業企業であるColeman Research Groupを約1億200万米ドル(約112億円)で買収することを発表した
  • “専門家インタビュー”のマッチングから事業を拡大
  • 買収に向け約129億円を調達、「単純合算ではない“企業価値”つくる」

ビジネス領域の専門知識を持つアドバイザーに、1時間から直接話を聞ける“スポットコンサル”サービス「ビザスクinterview」を軸に事業を展開しているビザスク。2020年3月の東証マザーズ上場以降も事業を拡大してきた同社が、米国の同業企業であるColeman Research Group(Coleman)を約1億200万米ドル(約112億円)で買収するという大きな勝負に出る。

2003年創業のColemanは米国を中心に5カ所に拠点を構え、グローバルで事業を展開。登録エキスパート(専門家・アドバイザー)の数は26万人を超え、2020年12月期の取扱高は約4300万ドルを誇る。

現在​​ビザスクでは国内を中心に14万人規模の専門家ネットワークを有しているため、両者のプラットフォームを単純に合算すると40万人以上の専門家を擁するプラットフォームになる。

ビザスクとしてはColemanとの事業シナジーを最大化させつつ「ビジネス領域で世界で一番のナレッジプラットフォーム」をねらう計画。あらゆる地域、業種の知見に対して最適なかたちで、かつスピーディーにアクセスできる基盤に向け、100万人規模の専門家データベースの構築を目指すという。

今回の取引のハイライト

“専門家インタビュー”のマッチングから事業を拡大

ビザスクやColemanはいわゆる「ENS(Expert Network Service)」領域で事業を展開するプレーヤーだ。

ENSは業界調査やユーザー調査など各種調査・相談のニーズに対して「専門家によるインタビュー」をマッチングする仕組みとして生まれたもの。良質な情報へのニーズが高まっている中で、その分野を深く知る専門家ならではの知見に直接アクセスできるのが特徴だ。

ENSの周辺にはリサーチやコンサルティング、R&Dといった巨大な市場が存在し、これらの隣接市場を取り込む形で成長を続ける。まさにビザスクも1時間から専門家に直接話を聞けるスポットコンサルサービスという切り口で、日本のENS領域にアプローチしてきた。

直近では専門家のネットワークを活かして業務委託のマッチング(ビザスクpartner)や社外役員のマッチング(ビザスクboard)などにも領域を拡張。狭義のENSからナレッジプラットフォームへの進化を進めてきたのが近年のビザスクの動きだ。

ビザスクの事業の特徴
ビザスクの事業の特徴。画像は同社が公開した本件に関する説明資料より

ビザスク代表取締役CEOの端羽英子氏によると、主力事業のビザスクinterviewにおいては顧客の約57%が事業会社となっており、強固な顧客基盤を築けているのが1つの強み。これらの顧客企業と、日本だけで12万人を超える専門家たちを最適なかたちでマッチングするオペレーションを磨くことで、事業を広げてきた。

またこの仕組みを構築できたことで、“国をまたいだ知見へのアクセスニーズ”も増えているという。市場調査や営業・マーケティングの強化、海外進出などの目的で現地の知見にアクセスしたいという日本の顧客が増加。その反対に、海外の企業が日本の専門家に話を聞きたいというケースも出てきた。

ビザスクとしてもこの事業機会をつかむべく、2020年4月にシンガポールに法人を設立。2020 年7月に米DeepBenchと資本業務提携を実施し、同社が手掛けるアドバイザー探索システムを活用しながら効率的に海外アドバイザーを増やす取り組みにも着手している。

海外での取り組みについて

海外アドバイザーの登録者数は2.5万人を超え、東南アジアを中心に海外法人の顧客開拓も進めてきたが、この流れをさらに加速させるべく今回のColemanに踏み切ったかたちだ。

「(既存の取り組みを通じて)成長をしてきているものの、大きなグローバルマーケットという事業機会に対しては、まだまだスタート地点に立ったところだと感じています。非連続な成長を通じてこの事業機会をしっかり取り込むために、Colemanを買収することを決めました」(端羽氏)

買収に向け約129億円を調達、「単純合算ではない“企業価値”つくる」

冒頭でも触れた通り、2003年創業のColemanではENS市場の先駆者として北米を中心にサービスを展開してきた。機関投資家やコンサルティングファーム、事業会社など300社を超える顧客基盤を持ち、専門家ネットワークの登録人材は26万人を超える。

日本に強みを持つビザスクと、アメリカを軸にネットワークを拡大してきたColeman。双方のデータベースが合わせれば、単純に専門家の数が増えるだけでなく、対応できる地域や言語の幅も一気に広がる。「ニーズがある一方で、グローバルの知見に直接アクセスすることは簡単ではない」という課題の解決策として、今回の買収によるデータベースの拡充は大きな一手となりそうだ。

統合プラットフォームのデータベース
データベースの拡充が本件の大きな効果の1つだ

またグローバルでENS事業を拡大して​​いくにあたっては「ローカルな言語対応や時差対応をどれだけ進められるか」も大きなポイントになると端羽氏は話す。その観点でも米国に加えてイギリスや香港など5箇所に拠点を持つColemanとタッグを組むことは大きい。

「我々としては、顧客から実際にいただいているグローバルな知見へのリクエストに対して、Colemanのエキスパートデータベースを用いながらしっかり応えていきたい。それは(ビザスクの)事業成長や生産性向上にもつながると考えています。一方のコールマンも、ビザスクと組むことで日本アジアの基盤が加わる。それが1つの差別化要素にもなり、既存顧客との連携強化や新規顧客開拓を実現できると期待しています」(端羽氏)

今回の買収にあたって、ビザスクでは第三者割当増資や借入を通じて約129億円を調達する。金額の規模などを踏まえても同社にとっては大きなチャレンジになると言えるが、端羽氏は「株式の希薄化をしっかり抑えた資金調達をしつつ、それ以上の業績インパクトや業績の拡大を実現できる」と今回の取引について説明していた。

財務サマリーについて
業績インパクトについて
あくまで直近の数値を単純合算したものではあるが、一株あたりの各指標も含めて大きく向上するという

ビザスクが見据えているのは、ビジネス領域における世界で一番のナレッジプラットフォームを作ること。今回Colemanと何度もディスカッションを重ねる中で、この思いが共通していたことや、それにあたって双方が「重ならない強みを持っていたこと」が今回の取引を推進したという。

「目指してるのは(現在の事業状況や実績の)単純合算の姿ではありません。コールとビザスクを合わせて40万人超のデータベース、世界7拠点、350人のメンバーでしっかりと事業シナジーの創出を実現し、単純合算以上の企業価値の向上を図っていきたいと思います」(端羽氏)