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ウォンテッドリーの新サービス「Engagement Suite」は、チームマネジメントツール「Pulse」など3つのプロダクトから構成される 画像提供 : ウォンテッドリー
  • 福利厚生、社内報、チーム管理に関する3つのプロダクトから構成
  • ベータ版は述べ約1900社が活用、正式版として本格展開へ

ビジネスSNS「Wantedly」を運営するウォンテッドリーが、“エンゲージメント領域”で事業を広げている。

2020年3月に福利厚生サービス「Perk」のベータ版をリリース。それ以降も同年4月にオンライン社内報サービス「Story」のアルファ版、同年6月にはチームマネジメントツール「Pulse」のアルファ版を連続して立ち上げ、従業員の定着や活躍を後押しするための事業に力を入れてきた。

ウォンテッドリーでは1年以上にわたってブラッシュアップしてきたこれらの3サービスを、「Engagement Suite(エンゲージメント スイート)」として9月2日より本格的に展開を始める。

Engagement Suiteは3サービスを内包した“サービス群”という位置付け。ベータ版期間は完全無料で提供してきたが、正式版リリースに伴い無料枠の上限を設定した上で有料で提供する形に変える。また各サービスについては継続的なアップデートを計画しており、直近では9月中を目処にPulse内に1on1をサポートする新機能を追加する予定だ。

福利厚生、社内報、チーム管理に関する3つのプロダクトから構成

上述したようにEngagement Suiteは福利厚生、社内報、チームマネジメントに関する3つのサービスから構成される。

福利厚生サービスの「Perk」
福利厚生サービスの「Perk」

第1弾としてスタートしたPerkは、従業員およびその家族(LGBTや事実婚などのパートナーも含む)がさまざまなサービスを特別価格で使えるというものだ。当初は7件だった掲載サービスは現在600件を突破。家事代行やクリーニングといったライフスタイル関連のものから、英語学習やオンラインスクールなどスキルアップ関連、動画配信サービスなどのエンタメ関連まで幅広いサービスを比較的安価に利用できるようになった。

オンライン社内報のStoryでは、文字通り会社のメンバーのみが見れる社内報をオンライン上で簡単に構築できる。もともとWantedlyでは採用広報の一環として会社のストーリーやメンバーに関する記事を外部へ発信できる仕組みを提供してきた。

Storyはその“社内限定版”のような形で、コンテンツを軸にビジョンの浸透やメンバー間の意思疎通を促進したい場合に使える。書き手がすっと執筆しやすいようなテンプレートが用意されているほか、「いいね」や「コメント」などコミュニケーションを活性化する機能も搭載。各記事を誰が読んだかもわかる。

オンライン社内報サービス「Story」
オンライン社内報サービス「Story」

3つの中では最後にリリースされたPulseは、チームメンバーのコンディションを定点観測するのに役立つ。

Slack上で数秒で回答できる週次のアンケートを通じてメンバーのモチベーションの変動を測定。リモートワーク環境下でチームの変化にいち早く気づくためのサポートをするほか、バリューを体現しているメンバーを簡単に讃えられる「さすが!」機能を通じてチームの結束力の強化も後押しする。

Pulseでは「1on1」を支援する新機能も9月中に搭載予定だ
Pulseでは「1on1」を支援する新機能も9月中に搭載予定だ

ベータ版は述べ約1900社が活用、正式版として本格展開へ

ウォンテッドリーで取締役CTOを務める川崎禎紀氏によると、各サービスについては細かいブラッシュアップを重ねてきたそう。対応サービス数が大幅に拡充したPerkについては検索やレコメンドの仕組みを磨き、ユーザーが自分の求めるサービスと少しでも出会いやすくするように改善してきた。

Storyには多くの企業が興味を示した反面、「いざ始めるとなると何を書いていいかわからない」「2本目以降が続かない」といったようにハードルを感じるユーザーも多かった。そこでテンプレートを拡充するなどして、書き続けるための敷居を下げる工夫に取り組んだ。

Pulseに関してもSlackを介して自分の状態を手軽に、それでいて少しでも詳しく伝えられるように改善。日本の祝日カレンダーなどにも対応し、“平日の気持ちが良い時間”にのみ通知が届くような設定を可能にするなど、細かい仕様変更も施した。

これまではWantedlyの有料プラン利用企業であれば完全無料で使えることもあり、3サービスのベータ版は述べ約1900社が利用。以前から2022年8月期中には有料化(正式版ローンチ)を進める予定ではあったものの、計画通り正式版リリースに踏み切ったのは一定の手応えを得られたからでもあるという。

「このプロダクトのためだけにお金を払って使い続けたいといってくださるユーザーの方が一定数出てきたことが大きいです。また(テレビCMの効果などもあって)Wantedly自体を全く知らなかった人が、今回のプロダクトをきっかけに既存プロダクト自体にも興味を持ってくださるような例も出てきました」(川崎氏)

エンゲージメント事業が加わることで、ウォンテッドリーとしては「採用後」の従業員の定着や活躍の支援にも対応できるようになる
エンゲージメント事業が加わることで、ウォンテッドリーとしては「採用後」の従業員の定着や活躍の支援にも対応できるようになる。画像は同社の2021年8月期Q3決算説明資料より

もともとウォンテッドリーがエンゲージメント領域のプロダクト群を始めた背景の1つとして、既存のプロダクトで「新たなメンバーを採用するまで」を支援するだけでなく、「採用した後の定着や活躍」についても支援していきたいという狙いがあった。

特にコロナ禍においては新規の採用を抑える一方で「既存メンバーに辞めて欲しくない」「さらに活躍してほしい」というニーズが拡大。エンゲージメント領域のプロダクトを展開することが顧客の要望を満たすだけでなく、既存顧客への付加価値の向上とともに、従来より提供する採用サービスのWantedly自体の解約率の低減にもつながる。

正式版提供に伴い、Engagement Suiteに設定された無料枠は、Wantedlyのライトプラン導入企業は100人、スタンダードプランは200人、プレミアムプランは400人。それを超える場合には1プロダクトにつき1人あたり600円で利用できる料金体系に変わる。

まずはすでにWantedlyを活用している企業が主なターゲットになるが、ゆくゆくは独立したサービスとして展開していくことも検討する。新機能の追加や機能改善にも継続して取り組み、まずは9月中にPulse内に「1on1」機能を実装。従業員サーベイと連動して、アジェンダの設定や対話メモ・ネクストアクションの管理などがよりスムーズに行える仕組みが加わる予定だという。