
“どんな文章でも3行にできる要約AI”をうたう文章要約AI「ELYZA DIGEST(イライザ ダイジェスト)」が公開されたのは8月26日のこと。そのわかりやすいコンセプトと、ブラウザ上で無料ですぐに試せるという手軽さも相まって公開後からSNSなどを通じて一気に拡散された。
開発元のAIスタートアップ・ELYZA(イライザ)によると8月26日から8月30日までの5日間で13万2420名がデモサイトを訪れ、実際に要約された回数は14万5309回に達したという。
ELYZA DIGESTは入力したテキストデータを3行に要約するAIで、読み込んだテキストを基にAIが一から要約文を生成する。ニュース記事のようなシンプルな文章はもちろん、会議の議事録や対話テキストなどにも対応することが可能。使い方は簡単で、サイトに要約したいテキストデータや記事のURLを貼り付けるだけでいい。

ELYZAは東京大学松尾研究室発のスタートアップ。同研究室出身の曽根岡侑也氏(代表取締役)を中心に設立され、特に自然言語処理技術(NLP)の領域において研究開発に取り組んできた。
テキストデータを「言葉として理解し活用するための技術」であるNLPは、技術発展が著しい音声認識や画像認識分野に比べると精度の部分で課題が残り、AIの活用も限定的だった。
1つの転換となったのは2018年にGoogleが大規模言語モデル「BERT」を発表したこと。そこから数年で特に英語圏ではNLPの最先端技術を実用化したサービスや事例が急速に生まれ始めているという。
日本語では言語特性に依存する技術的な難易度の高さや公開されているデータ量の少なさがネックとなり技術の実用化が遅れていたが、ELYZAではBERT以降の大規模言語モデルと独自の大規模データセットを活用して日本語に特化したAIエンジン「ELYZA Brain」を開発。このエンジンを改良しつつ、”要約”というシーンに特化する形で作ったのが今回の要約AIだ。
現在ELYZA DIGESTは要約後に生成された要約文が成功だったか、失敗だったかをユーザーが判定できる仕様になっている。5日間の集計結果では「失敗」を選んだユーザーが半数以上を占めており、精度の面では改善できる余地がありそうだ。
もっとも今回はデモンストレーション用の小さなモデルを利用しているが、企業向けに提供している大きなサイズのモデルであればより質のよい要約を出力できるケースも出てきているとのこと。ELYZAではすでにSOMPOホールディングスと要約AIを活用した実証実験も初めており、企業ともタッグを組みつつ、精度向上を進めながら社会実装に取り組むという。