「madree(マドリー)」ではオンライン上でプロの建築家に注文住宅の間取りを依頼できる
「madree(マドリー)」ではオンライン上でプロの建築家に注文住宅の間取りを依頼できる

個人がプロの建築家に注文住宅の間取りを手軽に依頼できる「madree(マドリー)」が事業を広げている。

展示場などに行かずとも、スマホを使って自宅から簡単に相談できるのが特徴。希望する条件などをサイト上で記入していくと、プロが作った質の高い間取りが自分の元に届く。

現在の登録ユーザー数は4.2万人。実際に間取りが見られる公式Instagramも評判で、フォロワー数は14万人を超える。同サービスを介して実際に1000枚以上の間取りが作られてきた。

運営元の建築系スタートアップ・スタジオアンビルトが着目したのは「間取りに対する不満」だ。

同社で代表取締役を務める森下敬司氏によると、近年は“間取り迷子”や“間取り難民”といった言葉も生まれているように、SNS上などで間取りに対する悩みを投稿するユーザーが増えてきている。日本間取り協会が2017年に実施したアンケート調査でも「新築当時に戻れるとしたら、間取りをやり直しますか?」という質問に対して95%が「やり直したい」と回答するなど、間取りに対する課題は大きい。

その原因の1つとして、多くの場合に「間取りの作成を建築家やデザイナーが担っていないことがある」と森下氏は話す。建築家が間取り図を作成するのは注文住宅全体の約4%ほどにすぎず、残りの96%を担うのはハウスメーカーや工務店だ。

後者では設計のプロではない営業担当者が間取り図を作成することが多いため、どうしてもパターン化したものが提案されやすく、品質にもばらつきが生じる。実際に森下氏がmadreeを立ち上げるきっかけになったのも、「ハウスメーカーで作ってもらった間取りに納得が行かず、建築家にもう一度作り直して欲しい」という依頼が届いたことだった。

madreeはテクノロジーを用いることでこの構造を変え、ユーザーが建築家に直接アクセスできる仕組みを作っているのがポイントだ。

madreeのサービスイメージ

同サービスでは入力フォームに沿って希望する条件や要望を記入すると、その依頼に合った間取りをオンライン上で建築家に提案してもらえる。

1案のみのライトプランは1万5000円、複数案から気に入った間取りを選べるスタンダードプランは4万5000円。madreeは200社以上の住宅会社と提携しているため、気に入った間取りについては提携住宅会社へ概算見積を依頼することも可能だ。

登録ユーザーの多くは1〜2年以内に家を建てる構想があり、そのための間取りを検討するべくmadreeに訪れているそう。約8割が女性で、特に家事導線にこだわりたいという要望が多いという。

実際の間取りのイメージ
実際の間取りのイメージ

スタジオアンビルトは2013年に森下氏と取締役の山川紋氏が立ち上げたスタートアップだ。一級建築士の資格を持つ森下氏は大成建設にてオフィスビルや大規模複合施設などの設計に従事した後、ECサイトの運営なども経験。一方の山川氏もリクルートを経て自ら設計事務所を立ち上げ、住宅の設計やリノベーションに携わってきた。

創業時に考えていたのは、ITを活用して建築家が仕事をシェアできる仕組みを作れれば「より柔軟な働き方や時間の使い方を選べるようになるのではないか」ということ

うまくいけば建築家たちがクリエイティブな業務により多くの時間を費やすことや、子育てと両立しながら仕事を続けることもできるかもしれない。そのようなアイデアから建築専門のクラウドソーシングサービス「STUDIO UNBUILT」を開発した。

同サービスには現在建築家やデザイナーなど7000人を超える人材が登録。madreeではここに集結する専門家に間取りの依頼をできる仕組みになっている。

特に個人や少人数で活動している建築家の多くは展示場や営業部隊を保有していないため、顧客との接点が限られてきた。madreeは間取り図の作成に特化するかたちにはなるものの、従来繋がりのなかった顧客に対してアプローチができるようになり、仕事の幅が広がる効果も期待できるという。

また対面のヒアリングなどなしでオンラインで仕事を完結できるため、建築家が空き時間などを有効活用しながら進められる点もメリットだ。

スタジオアンビルトでは今後も同サービスの機能強化を進めていくほか、機械学習を活用して建築家が間取りをスムーズに作れるようなサポート機能の開発などにも取り組む計画。それに向けてUTEC(東京大学エッジキャピタルパートナーズ)、マネーフォワードベンチャーパートナーズ、個人投資家を引受先とする総額1.3億円の資金調達も実施している。

スタジオアンビルトで代表取締役を務める森下敬司氏
スタジオアンビルトで代表取締役を務める森下敬司氏