BluAgeが11月4日に掲載した内々定取り消しに関するプレスリリース
BluAgeは11月4日、内々定取り消しに関するプレスリリースを掲載した

物件探しアプリの「カナリー」を展開するスタートアップのBluAgeが揺れている。9月には「組織体制の拡充」を目的とした12億円の資金調達を実施した同社。代表取締役の佐々木拓輝氏は「全方位採用中」とTwitterに投稿するなど、創業4年目ながら新卒採用も行っていた。だが10月以降、ネット上には同社の採用プロセスを疑問視する声が広がっている。

発端はBluAgeによる新卒採用に応募していたとする匿名ネットユーザーによるTwitter投稿だ。あるネットユーザーは10月4日、BluAgeによる不適切な内々定取り消しがあったことを一連の投稿で説明した。以下はその概要だ。

「6月にBluAgeからの内々定を受諾し、宅建士の資格を得るために勉強をさせられていた。だが、内定解禁日とされる10月1日の直前に座談会・グループディスカッションを行うと通知が来たので会社に行ったところ、そこで行われたのは面接だった。その後、内定解禁日の次の日に『座談会の内容と弊社の考える基準と異なる』として内々定を取り消された。内々定を受諾するまでに面接を4回も行ってきたものの、就職活動もとっくに終えている10月に内々定を取り消すという事態だ」

それ以降、SNS上には匿名ユーザーらによる「BluAgeに内々定を取り消された」という旨の投稿が相次いだ。その中には「BluAgeは50人の採用を予定していると説明しており、約50人が内々定を受諾したものの、約半数は落とされた」という内容の投稿もある。


47人中21人に対する内々定取り消しを公表

ネット上でこの話題が過熱したのは11月1日のこと。DIAMOND SIGNAL編集部でもこれまでにBluAgeを複数回取材しているため、事実を確認すべく、同日に記事を担当したライターを通じてBluAgeの佐々木氏に事実確認の取材を申し込んだ。その時点では回答を得られず、「広報対応窓口を一本化する」としてメールでの取材対応を求められた。

その後、BluAgeのコーポレート本部長から、(SNSでの騒動について)すでに把握しているが、調査中のため「ご取材はご勘弁頂いております」としたメールでの回答があった。関係者からの情報提供などもあったため、再度メールで質問を行ったが同社からの回答は現時点までに得られなかった。

状況が一転したのは11月4日の朝だ。同社は「弊社新卒採用手続に関するお詫びと対応について」と題したプレスリリースをコーポレートサイトに掲載。

あわせてコーポレート本部長から、プレスリリースを掲載した旨の連絡があった。発表によれば、BluAgeでは2022年度新卒採用に関して、4〜9月にかけて計47人に内々定を出したものの、これまでに合計で21人の内々定を取り消したという。

BluAgeの佐々木氏はプレスリリースにおいて、「選考の最終プロセスの結果によっては内々定を取り消す可能性があることを十分に説明できていなかったことが混乱の原因だった」とした。

「本件の原因につきましては、新卒採用2年目の弊社に採用活動・運営における業務経験が浅く、 『内々定』という社会通念への認識も不足しており、更には選考プロセスに関して就職活動を行う学生の皆様への必要十分な説明も欠いていたことが挙げられます。また経営陣においても、上 記運用への統率が不十分であったという運営体制の不備があったものと考えております」(プレスリリースに掲載された佐々木氏のコメント)

BluAgeでは今後、外部有識者の意見も取り入れながら、採用プロセスを再構築するという。また、内々定を取り消した21人に対しては個別に対応する方針だとしている。

「弊社は、今回の事案の発生を重く受け止めており、弊社の採用活動そのものを見直し、今後、 外部専門家として人事コンサルタント等の有識者のご意見も取り入れながら、採用選考プロセスの再構築を行います。また同時に、採用担当者等への再教育を徹底することにより、二度とこのような事態を招くことのないよう、全社を挙げて再発防止に取り組んでまいります」(同、佐々木氏のコメント)

なお、現時点(2021年11月4日15時20分)でも編集部からBluAgeへの質問には回答がないままだ。質問には、SNS上にあった「内定者が別企業での勤務となる可能性がある」といった内容の事実確認や、騒動が起きる前後でBluAgeのコーポレートサイトのメンバー紹介ページに変更があったこと(広報対応をしているコーポレート本部長のプロフィールも一時ページから削除されていたが、その旨を質問をしたのち、再び掲載されていた)、佐々木氏とライターとのやりとりの最中に、BluAgeへ出資するベンチャーキャピタルから直接取材内容に関する問い合わせがあったことの意図などの内容を含んでいる。これらは回答があり次第、お伝えする予定だ。

人数の少ないチームでスピード感のある成長を求められるスタートアップは、毎日のように多くの課題を抱えて走り続けている。もちろん、すべてのスタートアップの採用プロセスが良好というわけにもいかないだろう。だからこそ、そんなスタートアップへの就職を志望した学生に対しても誠実さが求められるのではないか。BluAgeに内々定を取り消されたある学生は「こんな時期にゼロからの就職活動になりますが、めげずに頑張りたいと思います」と語っている。