
リモートワークの普及により、場所を選ばない柔軟な働き方が可能になった。だが一方で、メールやデスクトップアプリなど、従来のツールだけではコミュニケーションやコラボレーションが難しいという課題もある。そのため2020年以降はビデオ会議の「Zoom」やビジネスチャットの「Slack」といったツールが飛躍的な成長を遂げている。
こうしたリモートワーク向けのツールの中でも、米国で急成長中のオンラインホワイトボード「Miro(ミロ)」が11月17日、日本市場への本格参入を表明した。
Miroは企業内外のチームメンバーが同時にアクセスし、主にリアルタイムでアイデア出しやブレストを行うためのプラットフォームだ。

Miroを展開する米RealtimeBoardは2021年5月に日本法人のミロ・ジャパンを設立。17日にオンライン開催された記者説明会では、RealtimeBoardでChief Revenue Officer(CRO:最高収益責任者)を務めるゼニヤ・ロギノフ氏と、ミロ・ジャパン代表執行役社長の五十嵐光喜氏が登壇した。2人は、2022年2月には未対応だった日本語にも対応すると明かした上で、今後の戦略について語った。
強みは多様な「ツール連携」と「テンプレート」
RealtimeBoardは2011年に米国で設立したスタートアップだ。ローンチ当初のサービス名は「RealtimeBoard」だったが、2019年のリブランディングを経てMiroとなった。
2018年には米国のベンチャーキャピタル(VC)・AccelがリードするシリーズAラウンドで2500万ドル(約29億円)の資金調達を実施。2020年には投資ファームのICONIQ CapitalがリードのシリーズBラウンドで5000万ドル(約57億円)を調達した。評価額は非公開だが、米データベースのCrunchBaseによれば、シリーズBラウンドを経た時点での評価額は1億〜5億ドル(115億〜575億円)と推定される。

Miroは2020年より急成長しており、昨年9月からの1年で、顧客組織数は4万件から11万8000件(195パーセント)、ユーザー数は800万人から2500万人(212パーセント)増加したという。ロギノフ氏は「多様なツールとの連携」と「ユーザーコミュニティでの活発な情報共有」こそが急成長を実現したMiroの強みだと説明する。
MiroはZoom、Slack、Microsoft Teamsを含む100以上の外部ツールと連携している。そのため、例えばZoomアプリの「Miro app for Zoom」を使えば、ビデオ会議中にMiroを表示することができる。

またユーザーコミュニティの「Miroverse」では、ユーザーが作成した800以上のテンプレートを用意し、新規ユーザーでも利用を開始しやすい環境を整えている。
日本では3年以内に500万人以上のユーザー獲得を目指す
Miroは現在、サンフランシスコ、ベルリン、ロンドンを含む世界11都市に拠点を置く。日本法人は5月に立ち上がったばかりだが、TOPIX 100(東証一部上場銘柄の中でも特に時価総額・流動性の高い100銘柄で構成される株価指数)企業の約半数がすでにMiroを導入している状況だという。

現在、日本におけるユーザー数は50万人で、有料顧客組織数は3800件。今後は日本語版を展開することで、3年以内に500万以上のユーザーと1万件の有料顧客組織の獲得を目指すと五十嵐氏は意気込む。
ロギノフ氏は「昨年から今年にかけての成長は異常な出来事だった」と述べる一方、「今後も高いレベルでの成長を維持できると考えている」と説明した。
「私たちの顧客企業の約95パーセントは、今後もハイブリッドな働き方を推進し、週5日のオフィス勤務に戻ることはないと話しています。そのため、さまざまな拠点で働く従業員のコラボレーションを支援するMiroのようなツールは、今後も求められ続けるでしょう」(ロギノフ氏)
最近、情報管理ツールの「Notion」や音声SNS「Clubhouse」などの進出も続く日本市場には、米国のスタートアップからも引き続き期待のまなざしが注がれている。特にMiroやNotionといったエンタープライズ向けのサービスは、テレワーク普及の恩恵にあずかり、今後も成長が見込めそうだ。