
- わずか2%のユーザーがゲーム全体の売上の4割を生み出す事例も
- ゲーム会社の意識が「新規の獲得」よりも「既存ユーザーの維持」へ
- Mirrativの活用でライブ対応し、"実況ニーズ”に応える
スマホ1台で簡単にゲーム実況ができる手軽さを武器に、日本を代表するスマホゲーム実況サービスへと成長を遂げてきた「Mirrativ(ミラティブ)」。360万人を超える配信者を有し、強固なユーザーコミュニティを持つ同サービスが、ゲーム会社から“ユーザーを温める定番のコミュニティ施策”として注目を集め始めている。
2021年9月にはコミュニティ施策の一環としてMirrativを導入したゲームタイトルの数が65本に達した。1年前と比べてその数が約5倍に増加しているだけでなく、『モンスターストライク』や『荒野行動』、『ガーディアンテイルズ』を始め人気タイトルでの導入が進んでいる。
開発元のミラティブによると2021年8月の売上トップ100のアプリのうち、40タイトルで導入済みだという。
わずか2%のユーザーがゲーム全体の売上の4割を生み出す事例も

Mirrativを活用したコミュニティ施策では、ユーザーが同サービスを通じてゲームの配信や視聴をすることでインセンティブ(ゲーム内のアイテムやMirrativで使用できるコインなど)を獲得できる。
このインセンティブがMirrativ内でのアクションを活性化させ、ゲーム好きのユーザー同士の輪を広げる。Mirrativはユーザーがゲームの話題で交流するための“居場所”としての役割を担い、それがゲームのLTVや継続率、課金率といった主要な指標の向上にも繋がっているそうだ。
たとえばミラティブがあるタイトルと実施したコミュニティ施策キャンペーンには、そのゲーム全体のユーザーの約2%が参加した。このキャンペーンが特にヘビーユーザー間の交流を加速させた結果、最終的にキャンペーンの参加者によって生み出された売上は、ゲーム全体の売上の4割にまで及んだという。
「ヘビーユーザーほどコミュニティを求めており、Mirrativを通じて友達ができることで、もっとそのゲームを好きになってくれるんです。Mirrativを活用したユーザーの方がゲームのLTVが上がるのであれば、ゲーム会社にとっても『Mirrativに送客した方が得をする』という構造になる。結果としてゲーム会社と唯一無二の座組みができてきています」(ミラティブ代表取締役の赤川隼一氏)
実際にMirrativではこの1年間で似たような事例がいくつも生まれている。

別のタイトルではキャンペーンに参加したユーザーの「1日の1人あたりのゲーム課金金額」が、非参加ユーザーに比べて2.6倍高くなった。ユーザー同士の交流がゲームの楽しさを広げ、無課金ユーザーが課金をする効果に加え、課金経験のあるユーザーの課金金額が増加する効果も生んでいる。
継続率に関しても同様だ。ユーザー同士のコミュニティの存在がゲームを長く楽しむ1つのきっかけとなり、キャンペーン参加者の「90日後の継続率」が非参加者の7.7倍になった例もある。

ゲーム会社の意識が「新規の獲得」よりも「既存ユーザーの維持」へ

もともとミラティブでは、数年間にわたって国内外のゲーム会社と地道にコミュニケーションを続けてきた。その一環として進めてきた“ディープリンク(ゲーム内にMirrativアプリの配信リンクを設置することで、すぐに配信ができる仕組み)”は、現在150本近くのタイトルに設置されるまでになっている。
ミラティブでセールス部部長を務める井上数馬氏によると、当初はゲーム会社と話をしていても、Mirrativの存在自体は知られているものの「担当者はインストールしていないことも少なくなかった」という。


地道な啓蒙活動を続けている中で、次第にサービスの成長とも合わさり少しずつ反応が変わっていった。「ユーザーから『Mirrativとタイアップしないんですか?』とゲーム会社にリクエストが届き、そこから問い合わせにつながった」ような例も生まれ始めた。
こうした積み重ねによって、独自のコミュニティ施策という切り口でゲーム会社と連携できる土台が整ってきたのだという。
「ゲーム会社としては、これまで獲得予算(CPI)を重要視していました。ところが市場全体が成熟して競争が激しくなった結果、新規の獲得よりも『(既存ユーザーを)維持する』ことに目が向けられるようになってきています。そのような背景からコミュニティマネジメントにもっと投資をした方がいいという流れが生まれ、Mirrativがその受け皿になるかたちで導入が進んでいる。『今ハマってくれている人に、ずっとハマり続けてもらう』というのは、CPIでは測れないところです」(赤川氏)
Mirrativの活用でライブ対応し、"実況ニーズ”に応える
コミュニティ施策を導入するタイトルの中には、最新作だけでなく発売から数年が経過したものも含まれる。これらのゲームでもMirrativを活用することで、再びユーザーのLTVが一段階上がったり、休眠していたユーザーが復活したりすることもある。
「Mirrativには『(ゲームの)ライブ対応のDX』を加速させる側面があると考えています。ゲーム実況と言うと『荒野行動』や『PUBG MOBILE』(いずれも「バトルロワイヤル」と呼ばれる100人からたった1人が生き残ることを目指す対戦ゲーム)のように一部の『実況映え』するタイトルだけが盛り上がっているように思われるかもしれませんが、実は1人でプレイするRPGゲームなどでも事例が増えてきています。つまり必ずしも『実況映え』していなかったゲームであっても、Mirrativと連携することで実況映え・実況ニーズに対応し、LTVが上がるということが起こっているんです」(赤川氏)
現在のMirrativの主な収益源は広告とユーザー課金(ギフティング)の2つだ。前者だけでなく後者も順調に伸びているからこそ、短期的に広告収益の最大化を目指すのではなく、ゲーム会社との中長期の関係性構築を重視できる。
それが結果的にゲーム会社との取り組みを加速させることに繋がり、ミラティブにとっては重要なアセットと競合に対する参入障壁を築くことにもなる。直近は既存顧客からのリピートも増えてきており「SaaSとは言えないものの、リカーリング(継続)収益が積み上がってきている」(赤川氏)という。
今後ミラティブが見据えるのは、Mirrativとの連携によって生まれたコミュニティをいかに次の段階へと進化させていくかということ。そのための新たな仕組みも水面下で仕込んでいるようだ。