
グローバルで拡大し続けるベンチャーマーケットにおいて、今やユニコーン企業(未上場で時価総額が10億ドル(約1100億円)以上の企業のこと)は珍しくない。フィンテック、フードデリバリー、コマース──さまざまな領域でベンチャー企業が急成長を遂げ、今や世界中には900社以上のユニコーン企業が存在するとも言われている。
その一方でHRテック、特に“人材採用”というカテゴリは、新しいビジネスモデルが長らく生まれてこなかった。
ここ数年、大企業やベンチャー企業など、あらゆる企業の間で人材の取り合いが激化。「なかなか採用ができない」「採用の工数管理が大変」といった大きな課題が生まれている。
米LinkedInのレポートによると、採用をリードする「リクルーター」のポジションは、ここ数年で急激に求人が増えているという。このレポートの結果からは、各企業における人材採用の需要拡大と採用に対する真剣さが垣間見える。

その中でも、エンジニアの採用は喫緊の課題となっている。米Indeedによると、米国におけるソフトウェアエンジニアの求人数は2021年2月から73%増加したという。
コロナ禍の影響も大きい。ロックダウンの環境は多くの企業がDXを進める契機となり、また多くのサービスがオンラインへのシフトを余儀なくされた。米LinkedInによると、ソフトウェア/IT業界における求人数はコロナ禍が始まる以前と比べて、119%増加したと報告されている。
Karatが目を付けたエンジニア採用の「バーニングニーズ」
こうしたエンジニア採用に対する深刻なニーズに目を付けたのが、2014年創業の米Karat(カラット)だ。今年10月に行われた直近のシリーズCラウンドでは、Tiger Global等から1.1億ドル(約115億円)調達し、バリュエーションは11億ドル(約1254億円)となり、ユニコーンの仲間入りを果たした。
Karatが提供するのは、いわゆる「面接代行サービス」だ。
彼らが目を付けたのは、企業にとって負担は大きいが実入りの小さい、採用候補者のスクリーニング。同社の試算によれば、企業は自社のエンジニアのリソースのうち年間で600億ドル(約6兆8493億円)に相当する時間を、新規採用の面接に投入しているという。
それにもかかわらず、面接による採用候補絞り込みの成果は小さい。面接官によってクオリティのばらつきがある上、複数回の面接を行わなければ候補者の適性を正しく理解できないのに、時間をかければかけるほど他の会社に人材を横取りされる可能性も高くなる。企業は、Karatのサービスを利用することで、これらの課題を解決することができる。
Karatは世界中に広がる面接官ネットワークを駆使して、企業のエンジニアに対するテクニカルインタビューを代行する。

面接官はすべて、面接における質疑応答や客観的な評価に熟達した経験豊富なエンジニアから選ばれ、365日24時間オンラインでの面接対応が可能だ。
Karatはスケジューリングから面接の代行、コーディングテストの実施、評価までを一貫して引き受け、蓄積したデータを活用することで候補者間の比較やベンチマーキング、能力のスコアリングを行う。これによって、企業側は自社のリソースを使うことなく、精度の高い採用を行うことができるようになる。
Karatによると、顧客企業はサービスを利用することで従来よりも採用にかかる時間を4分の1に、面接回数を3分の1にすることができるという。
実際に、同社の顧客には求人サービスのIndeedのほか、不動産テックのCompass、カード会社のAmerican Express、フィンテック企業のRobinhood、ゲームプラットフォーム・Robloxなどの有名企業が名を連ねる。

企業・候補者の双方から高い評価
コロナ禍による面接のオンラインシフトも大きく影響し、Karat上で行われた面接の回数は(実数は非公開ながら)昨年から3倍、顧客企業数は2倍に急増したそうだ。
今では毎月5万時間以上の面接がKarat上で行われている。また、1社ごとの利用料も年々増加していて、平均的なエンタープライズの顧客の年間利用料は昨年から倍増。中には、年間100万ドル(約1億円)以上支払っている企業がすでに8社あるという。
候補者からの評価も高い。同社が実施したユーザーアンケートによると、候補者の95%がKaratに対してポジティブな評価をしている。
特に好評なのが、面接プロセスの柔軟性だ。夜でも週末でも、自分の好きな時に面接を予約することができ、希望に応じて面接のやり直しをリクエストすることもできる。これによって候補者はリラックスして、自分の本領を発揮することができる仕組みだ。実際に、20%の候補者がやり直しをリクエストしているという。
Karatは今や、世界で最大のエンジニア人材のデータベースを構築しつつある。これらの企業横断のデータを分析すれば、企業と候補者のより適切なマッチングが可能になる。
同社CEOのMo Bhende(モー・ベンデ)氏によると、今回の調達資金を元手にデータサイエンスへの投資をさらに加速し、顧客企業に対するインサイト提供を強化していく予定とのことだ。