Paul Souders
photo: Paul Souders / gettyimages

ヨーロッパを中心に、投資契約書において“気候変動対策”を条件として求めるベンチャーキャピタル(VC)が存在感を増している。その背景にはLeaders for Climate Action(LFCA)というNPOの存在がある。

LFCAは「ビジネスリーダーを気候変動対策のリーダーにもすること」を目的に、2019年にドイツ・ベルリンで立ち上がった。今では音楽会社のUniversal Music Group、SpotifyやオンラインデザインプラットフォームのCanvaを含む、全世界1500社以上が加盟している。加盟企業は「CO2排出量の削減に貢献する」など、気候変動にかかわる経営施策を採ることを誓約する。

LFCAはVC向けには、投資先企業にサステナブルなビジネスを促すため、投資契約書に追加できる条項「Sustainability / ESG Clause」を用意している。この条項はLFCAと加盟VCが共同で作成したものだ。加盟VCはこの条項を投資契約書に組み込んだり、独自の条項を作るための参考にしている。

ネット上にも公開される同条項では、投資先に「可能な限り早く、遅くとも12カ月以内に」気候変動対策に関する施策を開始することを求めている。

投資を受ける企業側は、エネルギー消費や環境負荷の低い移動手段の推進といった社内での習慣、そして展開するビジネスにおいて、環境やESG(環境、社会、企業統治の頭文字を取った略語。企業がサステナブルな成長を目指すための3要素)に配慮する必要がある。取り組みの結果は年に2回の報告義務がある。投資家は目標達成に向けて投資先を支援する。

ヨーロッパでは、Northzone、EarlybirdやHV CapitalといったVCがLFCAに加盟し、Sustainability / ESG Clauseを活用、もしくは応用し、投資活動を行っている。

2019年にSustainability / ESG Clauseを発表した際、HV Capital・ジェネラル・パートナー(当時の肩書きはHoltzbrinck Ventures・Partner)のマーティン・ウェバー氏は「スタートアップが初期段階からサステナブルなマインドセットを持つことは、『気候変動を解決する』という我々の共通目標を達成する上で大きな意味を持つ」とコメントしていた。

日本でも今年、ゴールドマン・サックス元日本副会長のキャシー松井氏が率いるESG重視型VCのMPower Partnersや、デジタルガレージのOpen Network Lab・ESG1号“Earthshot”ファンドが立ち上がった。

ESG重視のVCが登場する中、今後はここ日本でもより多くのVCが、スタートアップの事業活動における環境や社会に対する配慮に目を向けるようになるかもしれない。