
- 優勝作品は点字・指文字を学べるアプリ
- 開発のきっかけは「SDGsを学んだこと」
- SDGsを題材とした作品の存在感が増す
サイバーエージェントの関連会社で、プログラミング教室「Tech Kids School」を展開するCA Tech Kids。同社は2018年より、日本最大級規模の小学生プログラミングコンテスト「Tech Kids Grand Prix」を毎年開催している。
経済産業省が2016年に公表した「IT人材の最新動向と将来推計に関する調査結果」によれば、日本では2030年には最大で79万人のIT人材が不足する可能性が指摘されている。Tech Kids Grand Prixはそうした「IT業界の未来を担う人材の発掘」を目的に、2018年から開催されている。
今年の決勝大会は12月5日に東京都・渋谷区で開催され、10人のファイナリストが登壇。優勝を果たしたのは、大分県から参加した後藤優奈さん。10歳の小学校4年生だ。
優勝作品は点字・指文字を学べるアプリ
後藤さんが発表した作品のタイトルは「楽しく学ぼう!!コミュニケーションアプリ」。点字や指文字をゲーム感覚で学べるアプリだ。スタート画面から「てんじ」もしくは「ゆびもじ」を選び、「まなぶ」、「ためす」、「つかう」、「しらべる」のいずれかの機能を選択する。

「まなぶ」の機能では、文字や数字にカーソルを合わせると、その文字に対応した点字・指文字が表示される。

「ためす」はクイズ形式になっており、表示された点字・絵文字に合った文字や数字を回答する。

「つかう」では点字の場合、文字や数字を入力すると裏側から見た点字が表示される。それを点字機を使って紙に打ち込むことで、点字を作成することができる。指文字の場合は、文字を入力すると対応した指文字が表示され、真似ることで指文字を表現できる。


「しらべる」では点字の凸部分を入力することで、何の文字かを調べることができる。指文字の場合、カメラで指文字を作ると対応した文字を教えてくれる。この機能は子ども向けのプログラミング言語「Scratch」の拡張機能「ML2Scratch」を活用した機械学習により実現したという。



今後は指文字認識の精度を高めていくほか、音声入力機能の実装や、点字表示装置との連動を目指す。
開発のきっかけは「SDGsを学んだこと」
この作品を開発した理由について、後藤さんは「SDGs(持続可能な開発目標)を学び、心のザワザワをすっきり解決するものを作りたいと思いました」と説明する。
「手話や点字に興味がありましたが、実際に使うことがないので、なかなか覚えられないなと感じていました。そこで手話や点字の翻訳アプリがあれば良いなと思いました」
「目の見えない人や耳の聞こえない人たちが、『たくさんの人と実際に会って話がしたい』と言っていたのがとても印象に残っています。このアプリを使ったみなさんが点字や指文字に興味を持ってくれたらとても嬉しいです」(後藤さん)
決勝大会で審査員を務めた、Cygames CTO室の永谷真澄氏は「とても人の役に立つ素晴らしいソフトウェアだと思います」とコメント。同じく審査員を務めた、サイバーエージェント・常務執行役員の長瀬慶重氏は「目が見えなかったり不自由な方からのフィードバックがアプリに反映されており、とても素晴らしい取り組みだと感じました」と評した。
SDGsを題材とした作品の存在感が増す
今年で4度目の開催となったTech Kids Grand Prix。今回は全国から3122件の応募があった。前年の2189件から1000件近く増加した。
Tech Kids Grand Prixは2020年より、東京都・渋谷区、千葉県・松戶市、⻑崎県・島原市といった地域と連携し、各地域でのコンテスト開催を支援している。各地域コンテストの優勝者はTech Kids Grand Prixの3次審査まで無条件で進出できる。
今年は全国の20地域と連携。結果として、大分県から1人、千葉県から1人の地域大会優勝者が、Tech Kids Grand Prixの決勝大会の舞台に立った。
筆者は2018年の初回からTech Kids Grand Prixを取材しているが、昨年からは新型コロナウイルスの感染拡大や環境問題を意識した、社会的意義のある作品の存在感が増している印象だ。昨年も今年も、優勝作品はSDGsを意識して開発されていた。今年は気候変動やプラスチックごみ問題を題材とした作品も決勝大会で発表された。
審査員の永谷氏は「SDGsを題材とした作品が増えてきました。次の世代の主役を担う皆さんが、社会や環境に関心を持ってくれていることは非常に頼もしいことだと思います」と総評した。
