
海外投資家の存在感が増し、日本のスタートアップでも10億円以上の大型資金調達を実施することは珍しくなくなってきた。加えて、海外企業による日本のスタートアップの買収も増加している。
今年7月にはGoogleが送金アプリ「pring」の買収を発表。買収金額は合計100億円強と見られる。そして9月には、PayPalが後払い決済サービス「Paidy」の買収を発表した。買収金額は3000億円。金額としては国内最大規模のクロスボーダーM&Aの事例となった。だが、PayPal・日本事業統括責任者のピーター・ケネバン氏は「金額は妥当です。皆さんがびっくりしていることにびっくりしています」と語る。
「私の任務は3年間で日本事業を10倍の規模に成長させること。それを実現するためのプラットフォームを探していました。素晴らしい会社を妥当な金額で買収することは正しい戦略だと今でも思っています。Paidyは急拡大しているため、傘下に収めることで私のミッションは達成しやすくなりました」(ケネバン氏)
ケネバン氏は12月10日、独立系ベンチャーキャピタルのグローバル・ブレインが開催する年次カンファレンス「Global Brain Alliance Forum 2021」にオンラインで登壇。Paidyの買収に至った背景を語った。
日本市場ではインオーガニックを活用
Paidyは、ECサイトで買い物した代金を翌月にまとめて支払う後払いサービスだ。海外では「BNPL(Buy Now, Pay Later:今買って後で支払う)」と呼ばれている。
ケネバン氏は「日本はまだ“キャッシュ“から“キャッシュレス“への変化の途中にあります。Paidyはそんな日本市場の細かいニーズを理解したビジネスモデルを構築しています」と語る。
「例えば、Paidyでは買い物の代金を、翌月の10日までに、コンビニエンスストアでまとめて現金で支払うことが可能です。“コンビニ支払い”は日本ならではの決済手段です。それがユーザーに評価されています」
「日本のように規模が大きく、また独自性の強い市場では、その市場に合った戦い方をしている人たちと一緒に戦った方がいい。日本市場ではインオーガニック(他社との提携や他社の買収を通じた成長)を活用するべきだと確信しています」(ケネバン氏)
PaidyはPayPal傘下に入った後も、Paidyブランドを維持し、ビジネスを継続していく。そしてPayPalはPaidyの買収を経て、日本での越境EC事業や日本の決済市場における機能やサービスの拡充を図っていく予定だ。
ケネバン氏は今後について「Paidyの経営陣と一緒に、PayPalの日本市場における成長戦略を練り直しています。我々にできることが大幅に増えたからです。まずはPaidyの尊重し、守り、成長を支援していきます」と語っていた。