Zホールディングス Zアカデミア学長/武蔵野大学アントレプレナーシップ学部 学部長 伊藤羊一氏
  • Twitterは世の中の反応を見るチェックシート
  • 相手の立場に立って考えた情報発信を
  • 未完成でもVoicyでまず発信、noteはロジカルに
  • 思いをはせながら書いてハッピーなさえずりを

スタートアップの代表や先鋭的な企業で活躍しているビジネスパーソンはSNSをどう活用しているのか。メディアプラットフォームを提供するnoteプロデューサーの徳力基彦氏が、活躍するビジネスパーソンに、SNSとの出合いやビジネスでSNSを使いこなすようになったきっかけ、現在の活用法などを聞く。

第5回は、Zホールディングスで次世代リーダー育成を担うZアカデミア学長であり、武蔵野大学アントレプレナーシップ学部の学部長である伊藤羊一氏がゲストだ。

伊藤氏の1日は、Voicyの番組「明日からの元気の源になる話」で翌日話すテーマを考えることから始まるという。今回はVoicyのほか、Twitterとnoteとの使い分けや、自分にあった情報発信の方法、ビジネス利用のコツなどについて伊藤氏に聞く。

Twitterは世の中の反応を見るチェックシート

──伊藤さんが最初に使ったSNSは何ですか。

Twitterです。2009年くらいに始めました。Twitterではブレストをしたり、さまざまな投稿に対する世の中の反応を見ています。たとえば「いいね」のつき方っていろいろありますよね。こうすると受け入れられるとか、なんかちょっと違うのねとか、反応は投稿によってさまざま。Twitterの「いいね」は反応のチェックシートみたいだと感じています。そういう意味では、Twitterってめちゃめちゃいいツールですよね。

──どのようにご自身の事業を宣伝していますか。ノウハウを知りたい人も多いと思います。

エゴが見えると、それを読んだ人は、やはりしらけてしまいますよね。「続きはプロフ欄に」みたいなツイートをときどき見ますが、それやってしまうと誘導しようしてるのが丸わかりじゃん! となってしまう。だから、僕はそれはやりません。

やはりユーザーファーストであることが、とても大事になります。宣伝とわかるツイートより、「あなたにとってこれは有益ですよ」という情報の方が明らかに「いいね」が多い。ツイートと「営業」は同じだなと思います。

──「ツイートと営業は同じ」という言葉を聞いて、ピンとくるかどうかもポイントですね。

15年前、売れている営業マンは何をやっているのかが書かれた本がはやっていました。全部読んでみましたが、どの本も言ってることは同じでしたね。曰く、「お客さんが喜ぶことをやり続けることが大事」だと。やり続けてると「この人、最高」とお客さんが勝手に増えてくる。有益な情報を提供し続けることが、ファンを作ることにつながると思います。

相手の立場に立って考えた情報発信を

──Twitterを広告に使うことはせず、今のスタンスでいられるのはなぜですか。

銀行員時代、本に書かれていることとまったく同じこと——「お客さんが喜ぶことをやり続ける」——を自分でやってみたんです。なので、売り込むような営業はしませんでした。「あなたの会社に役立つことを考えると、これはリース会社、これは別の銀行がいいかもしれません。私たちの銀行は使わなくてもいいです」などと提案していましたね。

そうしたらとても驚かれて。取引会社の社長から「銀行員として、こんな提案してこないでよ」って言われてしまいました(苦笑)。でも、僕からしたら当たり前のことです。今もこのスタンスを守っています。

──相手の立場になって、相手の事業のことを考えるということですね。ところで、Twitter運用の参考になるアカウントがあるとか。

ナウル共和国政府観光局(@nauru_japan)のアカウントです。ナウル共和国は、国民は1万人ほどですが、Twitterのフォロワー数がナウル共和国民の22倍以上に相当する24万人(2021年7月の対談時)に到達しています。

ツイート内容はほんわかしているんですが、それがナウル共和国について学びたくなる投稿なんです。ときどき自国の宣伝をしてるけど、自虐的なネタとかを入れながら運用していて、Twitterの中の人が面白いんですよ。

プロフィールにあるハッシュタグがそもそもめちゃくちゃ面白い。「#ナウルが名売る」なんです。こういう感覚があると、そのアカウントに生命が宿る。そうすると応援したくなる。結果、見た人はナウル共和国も知る。そんな順番だと思いますね。

未完成でもVoicyでまず発信、noteはロジカルに

──noteとVoicyは、どのような位置付けですか。

Voicyは音声なので、コンテンツ内容がロジカルでなくても流せます。生煮えの段階で流せることがメリットですね。一方で、ロジックを組み立てたものをnoteでは掲載したいなと思ってます。

──伊藤さんのVoicyは、15分、30分で一気に喋って収録しています。録ったものをそのまま出してるんですよね。

はい。喋る方がラクなんです。編集しないことで心理的ハードルが低くなりますね。文章にするとなると構成を考えるし、時間が結構かかる。書くことの心理的なハードルはそこですね。

──なるほど。Twitterは壁打ちで、壁打ちの中身をVoicyで発信。noteはちょっとオフィシャル感のあるコラム。これが伊藤さんのパターンですね。自分に向いているスタイルを見つけられたのが、SNS活用のポイントな気がします。

思いをはせながら書いてハッピーなさえずりを

──伊藤さんは、狙って書いてるんだなというのがわかる文章だと思います。読む側の人たちのイメージを持って書かれているような。

僕の文章はおそらく炎上はあまりしないかな?と思っています。先々はわかりませんが。いろいろな人の気持ちに思いをはせながら書いています。「お前はこうだ」などと言い切ったら、読者はみんな怒りますよね。以前はバーンと言い切る投稿もしたりしましたが、今は、読む人の感じ方は相当意識しています。

たとえば、「世の中をどうしたいか」という複雑なテーマで議論をする場合、参加する人それぞれが持っている違う意見を、きちんと出さないといけません。そのとき、この文章を読む人はどういう立場で、どういう気持ちなのかということに思いをはせれば、どういう表現が最適なのか、わかるのではないでしょうか。

──「伊藤さんのツイートは必ず読み手が自分で考えて行動することを促すような味付けがされている」、というコメントもありました。SNSは、みんなの役に立つことを発信することによって、それが事業にも役立つかもしれないくらいの感覚で運用するのがいいのかもしれませんね。

ゲスト:伊藤羊一(いとうよういち)氏(Zホールディングス Zアカデミア学長/武蔵野大学アントレプレナーシップ学部 学部長)
日本興業銀行、プラスを経て2015年ヤフー。 現在、Zアカデミア学長としてZホールディングス全体の次世代リーダー開発を行うとともに、武蔵野大学アントレプレナーシップ学部学部長として、学生の起業家精神の育成にも力を注ぐ。 また、ウェイウェイ代表、グロービス経営大学院客員教授としてリーダー開発を行う。多くのビジネス書を執筆。著書に『1分で話せ: 世界のトップが絶賛した大事なことだけシンプルに伝える技術』がある。
Twitter https://twitter.com/youichi_itou
note https://note.com/yitou8864
Voicy https://voicy.jp/channel/1262