
- 誰もがメタバース空間をつくれるサービスが登場
- ソニーが総額250億円規模のファンドを組成へ
- 自動化・省人化に取り組むスタートアップが台頭
- その他のスタートアップニュース
資金調達やプロダクトのリリース、ファンド組成、人事異動──日々、さまざまな動きがあるスタートアップ業界。今週(2月14日から2月18日)はどんな動きがあったのだろうか。
いま、押さえておくべき「スタートアップ業界のニュース」をDIAMOND SIGNAL編集部が独自の視点からピックアップしてお伝えする。今週はメタバース空間制作アプリのリリース、ソニーのファンド設立、自動化・省人化に取り組むスタートアップの調達などがあった。
誰もがメタバース空間をつくれるサービスが登場
クラスターがメタバース空間を制作できる機能「ワールドクラフト」をリリース
3次元の仮想空間上でコミュニケーションが行えるサービス・プロダクト全般を指す言葉「メタバース」。2021年10月にFacebook、Instagramを提供するFacebookが社名をMeta Platforms、通称「Meta」に変更したことで、一気に注目度が高まった。
ゲーミングプラットフォーム「Roblox(ロブロックス)」、オンラインゲーム「Fortnite(フォートナイト)」といったゲーム領域から火がついた「メタバース・ブーム」。最近では、バーチャル会議室「Horizon Workrooms」を筆頭に、Gather(ギャザー)やoVice(オヴィス)など、ビジネス領域での活用が広がりつつある。
2015年設立のクラスターだ。同社は、2016年にバーチャル空間に集って遊ぶことのできるプラットフォーム「cluster」のアルファ版をリリースし、その翌年に正式版をリリースしている。
クラスターは同サービスを通じて、これまでに世界初VR音楽ライブ「輝夜 月 LIVE@Zepp VR」や世界初eSports専用バーチャル施設「V-RAGE」、渋谷区公認の「バーチャル渋谷」、ポケモンのバーチャル遊園地「ポケモンバーチャルフェスト」の制作・運営を手がけてきている。

企業との提携でメタバース関連のイベントを開催することが多かったが、クラスターは新たに誰でもメタバース空間を創造できる新機能「ワールドクラフト」を2月16日にリリースした。ワールドクラフトは外部ツールの導入やモデリングやプログラミングの知識は必要なく、clusterのアプリ内でアイテムを操作して、直感的にメタバース空間を制作できる。
スマホ・PC・VRのマルチプラットフォームに対応しており、制作したメタバース空間をclusterに公開することで、他のユーザーに遊んでもらうこともできる。
3Dブロックで構成された仮想空間の中で、ものづくりや冒険が楽しめるゲーム「Minecraft(マインクラフト)」のメタバース版とでも表現すればイメージがつきやすいかもしれない。
今後、ワールドクラフトは制作中に使えるアイテムをユーザーが自由にアップロードできる機能の実装に加え、有料販売機能の提供も予定しているという。
日本発でメタバース領域に取り組むプレーヤーはクラスター以外にも、VRイベント「バーチャルマーケット」などを展開するHIKKYがいる。同社は昨年11月にNTTドコモから65億円を調達したほか、2022年1月にはメディアドゥと資本・業務提携を締結するなど、シリーズAラウンドで70億円の資金を調達している。
“メタバース元年”とも言われている2022年。この領域の競争は激しくなっていきそうだ。
ソニーが総額250億円規模のファンドを組成へ
ここ数年、日本でも運用規模が三桁億円のファンドの組成が目立つ。2019年にグロービス・キャピタル・パートナーズが総額400億円の6号ファンドを設立したほか、2021年4月にはANRIが総額250億円規模の4号ファンドを設立、同年8月にはCoral Capitalが総額140億円規模の3号ファンドを組成している。こうした大型ファンド組成の波にソニーも加わる。
ソニーグループは2月17日、新ファンド「Sony Innovation Fund 3 L.P.」の運営を開始することを発表した。ファンド事業を行うソニーベンチャーズはソニーグループの100%子会社として、2021年7月に設立されている。

同ファンドにはSMBCグループ、みずほグループ、大和証券グループ、三井住友信託銀行、横浜銀行、滋賀銀行、コーエーテクモグループ、川崎重工業、三菱地所、その他学校法人に加えソニーグループがファンドの第一次募集のリミテッドパートナーとして参画する。
最終的なファンドの規模は250億円超を目指しており、これが実現すれば、2016年から開始しているSony Innovation Fundの運用総額は600億円を超える見込みとなる。なお、注力する投資分野はヘルステック、フィンテック、エンターテインメント、ディープテックなどのほか、ESGをより重視して投資を行っていくという。
自動化・省人化に取り組むスタートアップが台頭
そのほか、今週は自動化・省人化に取り組むスタートアップの資金調達ニュースが多くあった。いくつかピックアップして紹介していく。
船の自動運転技術を開発するエイトノットが1億円の資金調達
自動運転やドローンなど、陸上と空のモビリティの自律化・自動化技術が盛り上がりを見せる中、その流れは水上モビリティにもおよんでいる。2021年3月に設立されたエイトノットは、水上モビリティの自動運転技術を開発しているスタートアップだ。
設立から半年で、広島県の大崎上島町において小型船舶向けの自律航行技術の実証実験を成功させており、早期の実用化を目指している。そのための資金として、同社は2月15日にDRONE FUND、15th Rock Ventures、リアルテックファンドを引受先としたJ-KISS型新株予約権方式によって1億円の資金調達を実施したことを発表した。
今後はチームの強化に加え、自律航行機能を備えた小型船舶の開発、遠隔監視システムの開発、事業化を見据えた実証フィールドでの航行試験に取り組み、2025年の自律航行無人船の社会実装を目指すという。
建設現場の省人化・省力化を実現する建ロボテックが2.7億円の資金調達
アンドパッドや助太刀など、建設業界のデジタル化に取り組むスタートアップが多い中、建設現場向けのロボットを開発しているのが、建ロボテックだ。同社は現在、鉄筋の結束作業を自動化するロボット「トモロボ」などを提供している。
同社は鉄筋結束作業領域以外のロボットの新規開発・製造を加速させるべく、2月14日にリアルテックファンド、MICイノベーション、いよベンチャーファンド、ちゅうぎんインフィニティファンド、エンジェル投資家3名から総額2.7億円の資金調達を実施したことを発表した。
ロボット遠隔制御システム開発するキビテクが1.5億円の資金調達
ロボットそのものを開発するスタートアップだけでなく、ロボットを遠隔制御するシステムを開発するスタートアップもいる。それがキビテクだ。
同社はさまざまなロボットにアドオンすることで、遠隔制御を実現するサービス「HATS(Highly Autonomous Teleoperation Service)」を提供している。各会社が持っているロボットにキビテクが開発した装置をアドオンし、システムと接続すれば、遠隔オペレーターがロボットを遠隔で操作することが可能になる。
キビテクはシステム開発を推進するほか、実証実験を進め、さらなる事業の加速化を図るために2月16日、Spiral Capital、九州オープンイノベーションファンドを引受先として総額1.5億円の資金調達を実施したことを発表した。
その他のスタートアップニュース
トレタ、総額20.3億円の資金調達を実施
飲食店向け店内モバイルオーダー「トレタO/X」、飲食店の電話予約をAIで自動受付する「トレタ予約番」などを展開するトレタは2月16日、凸版印刷、HR Tech Fund、TencentのCVC「Image Frame Investment (HK) Limited」、岡三キャピタルパートナーズ、ジャパン・コインベストから総額20.3億円の資金調達を実施したことを発表した。
ClipLine、2ndクローズで4.5億円の資金調達を実施
マネジメント支援サービス「ClipLine」を提供するClipLineは2月15日、シリーズEラウンド2ndクローズでDG Daiwa Ventures、SMBCベンチャーキャピタル、山口キャピタル、あいざわアセットマネジメントを引受先として総額4.5億円の資金調達を実施したことを発表した。シリーズEラウンドでの総額は10.5億円、累計調達額は25.5億円となった。
DataLabs、総額1.3億円の資金調達を実施
点群データの「自動モデリングツール」及び三次元データや二次元CAD図面の「クラウド型共有・可視化ツール」を開発するDataLabsは2月16日、東大IPC、ディープコアを引受先として総額1.3億円の資金調達を実施したことを発表した。
STANDS、総額1億円の資金調達を実施
UI/UX改善ツール「Onboarding」を開発するSTANDSは2月15日、XTech Ventures、Headline Asiaを引受先として、総額1億円の資金調達を実施したことを発表した。
ファーストグループ、総額16億円の資金調達を実施
グローバルカーライフテックサービス「cars」を運営するファーストグループは2月16日、第三者割当増資のほか、デットファイナンスを含めて総額16億円の資金調達を実施したことを発表した。
PitPa、総額2.5億円の資金調達を実施
Podcastビジネスを展開するPitPaは2月16日、既存投資家であるデジタルガレージをリード投資家とし、ANRIを加えた2社を引受先として総額2.5億円の資金調達を実施したことを発表した。
FIREBUG、エンターテインメント特化型ファンドを組成
お笑い芸人や俳優、モデル、 アーティストなどのSNSアカウントのコンテンツ制作・運用、ビジネスモデル構築などを支援するFIREBUGは2月15日、新たにエンターテインメント特化型ファンド「WONDERTAINER FUND(ワンダーテイナーファンド)」の設立を発表した。