「おいしい植物肉」にたどり着いた男の“発芽バカ”一筋30年DAIZ執行役員・最高技術責任者を務める落合孝次氏 Photo by Naoyuki Hayashi

国連の発表によると地球上の人口は2050年までに約100億人に達する。人口増加に加えて新興国の経済成長といった要因により、タンパク質の需要に供給が追い付かなくなる、いわゆる「タンパク質危機」が到来するといわれている。そこで注目を集めるのが、牛肉や豚肉のような動物の肉を原料としない「代替肉」だ。細胞の組織培養で作る培養肉をはじめ、昆虫や藻類、植物を由来とした代替肉を開発するスタートアップ企業も台頭してきた。中でも原料のサプライヤーとしての立ち位置で頭角を現しているのが、大豆由来の植物肉原料を開発し製造するDAIZ(ダイズ)だ。その誕生秘話を最高技術責任者・落合孝次氏が語った。(フリーランスライター 菊池大介)

 テクノロジーで「食」の課題解決に挑戦するスタートアップへの注目が集まっている。北米では2019年5月に上場したビヨンド・ミート(Beyond Meat)や未上場ながら累計13億ドル(約1400億円)の資金を調達する競合・インポッシブル・フーズ(Impossible Foods)などが話題だ。両社が提供する代替肉は大手スーパーマーケットやファストフードチェーンが扱い、健康や環境に対する意識の高い若者たちを中心に食肉に代わるよりサスティナブル(持続可能)なタンパク質源として食されている。

 日本では大手メーカーによる市場参入が続いている。伊藤ハムは「まるでお肉!」、日本ハムは「ナチュミート(NatuMeat)」というブランドで、3月より大豆由来の植物肉を家庭向けに発売開始した。

 市場に参入するのは大企業だけではない。熊本発の植物肉スタートアップ企業・DAIZは、1月に冷凍食品大手のニチレイフーズと資本業務提携を締結。5000万円の資金を調達して開発体制を強化している。今後は自社で生産する植物肉原料「ミラクルミート」と、ニチレイフーズの商品開発力、販売力を掛け合わせ、日本の植物肉市場の拡大を目指す。

特許取得の独自技術で本物の食肉に近づける

「チキンですか、ビーフですか、それとも植物肉ですか――機内食の選択肢がこう変わるのも間もなくだと信じている」