令和トラベルが手がける海外旅行予約アプリ「NEWT」
令和トラベルが手がける海外旅行予約アプリ「NEWT」

「起業した頃は(創業から)半年でサービスをローンチして、そこから半年でPMF(プロダクトマーケットフィット)の兆しがつかめたらいいなと考えていました。でもその前提が崩れて1年かかってしまった。ようやくローンチできます」

令和トラベル代表取締役社長の篠塚孝哉氏はそう話す。同社では2021年4月5日の創業からちょうど1年が経った本日、海外旅行予約アプリ「NEWT(ニュート)」の提供を始めた。

創業約3カ月後には22.5億円の資金調達を実施し、組織体制を強化。当初は早ければ2021年夏ごろのサービスローンチを目指していたが、新型コロナウイルスの感染状況やそれに伴う移動制限などを踏まえて時期を遅らせることを決断していた。

今回は3月1日に厚生労働省が発表した「入国後の自宅等待機期間の変更等について」において、条件にあてはまる場合には入国後の自宅待機が不要になること(指定国・ 地域以外からの帰国・入国で、ワクチンを3回接種したことが確認できる証明書を保持している場合)などを受け、満を持してサービスローンチに踏み切った。

新サービスのNEWTはさまざまな海外旅行ツアーを扱う予約アプリだ。航空券やホテルもパッケージになっており、ツアーを予約すればこれらもまとめて手配できる。まずはハワイを対象に300以上のツアーを掲載し、今後は他エリアにも広げていく計画だという。

NEWTのアプリ画面のイメージ
NEWTのアプリ画面のイメージ

コンセプトは「かんたん、おトク、えらべる、あんしん」の4つだ。

スマホから3ステップで海外旅行の予約が完了する体験にこだわったほか、手軽に使えるように料金面では最低価格を保証する。商品についてはカジュアルなものからリッチなものまで幅広く扱う予定で、複数の保険プランや専門スタッフによる緊急窓口など安心面に配慮した仕組み作りにも力を入れてきた。

特に篠塚氏は「簡単さ」と「お得さ」をローンチ時点での特徴に挙げる。

「簡単さを1番重視しています。たとえば予約導線に関して既存サービスだと多ければ10ページ以上かかる場合もありますが、3ステップで予約が完了することにこだわりました。それはさまざまな領域が『簡単であること』を突き詰めたプロダクトやサービスによって変革されてきている中で、海外旅行のツアーに関してはイノベーションの停滞を感じていたからです。現時点ではまだ自分たちもやり切れてはいませんが、『簡単さ』を突き詰めるだけでも大きな価値になるのではないかと考えています」(篠塚氏)

世界観としては「Amazonで水を買うくらい簡単に、海外旅行(のツアー)を買えるサービス」を目指していくとのこと。また簡単さに加えて、料金についても現地の事業者や航空会社と連携しながら「金額的にどこよりもお得なツアーを提供することにチャレンジしていく」(篠塚氏)という。

ポイントになるのが「DX」だ。篠塚氏は創業時より「既存の(海外旅行)代理店の業務には効率化できる余地が大きく、そこにデジタルを組み合わせることができればチャンスがある」と話していた。

短期的には自分たちがコストを負担するかたちにはなるものの、長期的にはデジタル化を進めることでコスト上でも有利になるような体制を作りたいという。

NEWTのビジネスモデルは、篠塚氏いわく総合商社などに近く「ホテルや飛行機を仕入れて、(ツアーとしてパッケージ化した上で)それをより高く販売する」モデルだ。いかに安く仕入れてくるかが1つのポイントになり、篠塚氏自身がハワイに1カ月滞在しながら現地の事業者とやりとりを進めてきた。

繁忙期であれば創業直後のスタートアップがいきなり大手事業者と交渉するのは難しいが、この点についてはコロナ禍で稼働率が大幅に下がっていたこともあり、話を聞いてもらえたのだそう。現在はホテルや現地のランドオペレーターなど約50社と連携関係にあり、「(この数は)ハワイだけで言えば十分な数で、うちで取れないパッケージ旅行はないと言えるくらいの状態が作れている」(篠塚氏)という。

もっとも「現時点で原価がイーブンかといえば、そうではない」と篠塚氏が話すように、仕入れについては今後の課題にもなる。

また予約後のオペレーションなどに関しても、ホテルのチェックイン時にはユーザーがメールを開く必要があるなど、“アプリだけ”で完結するわけではない。こうしたデジタル化に関する取り組みもこれから強化していきたいとのことだった。

まずはハワイを対象に300種類以上のツアーを扱う。今後は他エリアにも広げていく計画だという
まずはハワイを対象に300種類以上のツアーを扱う。今後は他エリアにも広げていく計画だ

冒頭で触れた通り、想定していたよりもローンチに時間がかかり、実際のオペレーションを細かく検証することもできずに正式なローンチを迎えたNEWT。「仮説で機能を作り、感覚で優先順位を決めてきた。小さく初めて、大きく育てるというスタートアップのセオリーとは違うことをやってしまっていることは少し心配であり、マイナスな面でもあります」と篠塚氏は現在の心境を語る。

一方で、ローンチまでの時間をかけられたことでプラスの面もある。同社ではローンチまでの間に「出入国の手続き代行サービス」や「トラベルコンシェルジュ」といったかたちで海外旅行に関するサポートを実施してきた。この経験を通じて手配時に起きやすい問題や利用者のニーズに関する知見をある程度ためることができた。

「(創業2年目となる)次の1年はPMFを達成することを重視していきます。具体的には月に1億円の流通額にしたい。その規模になればPMFを達成したと言ってもいいのではないかと思っています。旅行サービスは季節柄も関係するので、まずは1年間サービスを動かしてみて、春夏秋冬のトレンドに合わせていろいろな施策を実行した上でPMFしたと言える状態を作ることができるか。ようやく準備が整ってローンチできるので、ここからは利用者の方の反応も受け止めながら改善を続けていきます」(篠塚氏)