
事業の拡大期に“テレビCM”を徹底的に科学し、うまく活用することで急成長を遂げたラクスル。そんな同社のテレビCMノウハウを詰め込んでサービス化したのが「ノバセル」だ。
もともとは2018年1月にラクスルのテレビCMサービスとして始動し、2020年4月より現在のノバセルへとサービス名を変えた。同月からはテレビCM効果測定SaaS「ノバセルアナリティクス」の運営も始め、この2つのサービスを軸に事業を拡大してきた。
サービスローンチから約4年。年々規模が広がる中で2022年2月には事業を分割し、ノバセル株式会社として新たなスタートを切っている。
当初から「マーケティングの民主化」を掲げてきたノバセルではあったが、今後はテレビCM以外の領域にも本格的に進出していく計画。4月より競合他社のCM分析サービス「ノバセルトレンド」や定量調査サービス「ノビシロ」など複数の新事業を立ち上げる。
運用型テレビCMの市場が活性化してきている──。ノバセル代表取締役社長の田部正樹氏は4年間の変化をそのように話す。以前は「テレビCMは大手企業が取り組むもの」というイメージも強かったが、近年はかつてのラクスルのようなスタートアップが大きな成長を目指す過程でCMを活用する例が増えてきている。
その中で拡大してきたのがデジタルマーケティングのようにテレビCMを運用する、運用型テレビCMの領域だ。
ノバセルでは戦略からクリエイティブまでをワンストップで提供するエージェンシー事業とテクノロジーを活用してCMの効果を見える化するSaaSを柱にサービスを伸ばしてきた。
2022年7月期第2四半期には四半期のノバセルセグメントの売上が10億円を突破。田部氏によるとノバセルアナリティクスも好調で大手企業を含めて利用企業が増えてきており、累計導入社数は180社を超える。

一方で市場が活性化すれば当然ながら事業者も増える。運用型テレビCMの領域にも大手代理店が参入するなど、以前に比べて「競争が激しくなってきている状況」(田部氏)だ。今回ノバセルが事業領域を拡張することには、競合との差別化を図る意味合いもあるという。
「大手企業による寡占や不透明な価格体系、戦略人材やノウハウの不足などマーケティング業界にはまだまだ課題が多いです。まずはテレビCMの領域からエージェンシーとSaaSを通じて課題解決に取り組んできましたが、それはあくまでマーケティングにおける1つの領域でしかありません。ここから事業を広げ、マーケティングの民主化というビジョンの実現を目指していきます」(田部氏)
田部氏がマーケティングを民主化する上でポイントに挙げるのが「広告効果の民主化」と「プランニングの民主化」だ。
21日より提供予定の定量調査サービス・ノビシロでは、マーケティング戦略を考える際のリサーチ業務における課題を解決する。田部氏によると、“顧客の声”の重要性には気づいているものの、それを集めるためのノウハウやリソースが不足しており悩んでいる企業が多い。
ノビシロは最短20分で100名程度の顧客の声を集められるのが特徴で、会議中に複数の選択肢で迷った際などにも気軽に使えるという。利用料金は2万円から。ノバセルのマーケターが市場調査や戦略立案に伴走する「ノビシロPRO」もあわせて提供する。
19日にローンチするノバセルトレンドは競合他社のテレビCM効果を可視化するツールだ。これまでノバセルアナリティクスを通じて自社のCMの効果を測定する仕組みを提供してきたが、今後は競合のCMについても分析できるツールを用意する。
「競合のどのCMがうまくいっているのか気にはなっているものの、その効果についてはよく知らないという企業も多いです。今まではマーケティングのノウハウやリソースがある人しかできなかったことを、ノバセルトレンドやノビシロを活用することで誰でも簡単にある程度のところまでできるようにしていきたいと考えています 」(田部氏)

マーケティングを正しく理解して、使いこなせている人は世の中でもほんの一握りの人たちだけだというのが田部氏の見解だ。ただ顧客の声を集めて正しい戦略を立てることや、実行した施策を効果測定することなどに関しては「知っていればできることも多く、テクノロジーを活用することで効果的に解決できる部分もたくさんある」と話す。
ノバセルとしてはそのようなサポートをしながらマーケティングの民主化に取り組み、「世の中の素晴らしいサービスや事業が、正しく成長できるような世界を実現していきたい」としている。