(左)Yappli Lite事業責任者の小野明彦氏 (右)ヤプリ代表取締役CEOの庵原保文氏
(左)Yappli Lite事業責任者の小野明彦氏 (右)ヤプリ代表取締役CEOの庵原保文氏
  • いま、ヤプリがSMB向けの新プランを展開する理由
  • 今後はグローバル展開も視野に

「この10年でスマートフォンは普及し、日常生活でアプリを使うことは当たり前のものとなりました。今であれば、創業時に上手くいかなかったSMB向けのサービスもニーズがあるのではないか。私たちにとっては再チャレンジでもあります」

そう意気込みを口にするのは、ヤプリ代表取締役の庵原保文氏だ。同社は4月21日、個人事業主などのスモールビジネス向けの新料金プラン「Yappli Lite(ヤプリ ライト)」の提供を開始した。料金は月額3万9800円(税抜)、初期費用は無料となっている。

Yappli Liteはアプリの開発・運用・分析をノーコードで提供するアプリプラットフォーム「Yappli」のSMB向けのプラン。飲食店・カフェやジム・習い事、塾・スクールなどの業種の特性に合わせたテンプレートを選択し、ドラッグ&ドロップでテキストや画像などの情報を入力すれば、ノーコードでアプリを制作することができる。また、アプリを公開するのに必要なApp Store(iOS)とGoogle Play(Android)へのストア申請もヤプリが支援する。

「集客や情報発信において高いリーチを実現するプッシュ通知も配信頻度を気にすることなく、メッセージを送付することができます」(小野氏)

いま、ヤプリがSMB向けの新プランを展開する理由

ヤプリの創業は2013年。当初はSMB向けにセルフサーブ(=自分で作る)型のアプリ作成サービスを低単価で提供していたが、失敗に終わった。「当時はアプリが一般的なものでなく、そもそも(SMB向けアプリの)市場も立ち上がっていなかった」と庵原氏は振り返る。

事業が伸び悩む中、ターゲットをSMBからエンタープライズに切り替え、アプリの開発・運用・分析をノーコードで提供するアプリプラットフォーム「Yappli」を提供することで成長を遂げてきた。2020年12月に東証グロース(旧:マザーズ)市場に上場。現在、Yappliは600社以上の企業が導入。企業がYappliで開発したアプリの累計ダウンロード数は1億件を突破している。

「Yappliの提供を通して、私たちにもアプリのテンプレートなどのノウハウやアセットが溜まってきました。また、SMB事業者からの問い合わせも増えてきたこともあり、今のタイミングであれば、SMB向けのサービスも上手くいくと思いました」(庵原氏)

国内では先行するプレーヤーとして、Appify Technologiesが提供する「Appify(アッピファイ)」、GMOデジタルラボが提供する「GMOおみせアプリ」がある。庵原氏は「エンタープライズ向けのサービスを通じて培ってきたノウハウやアセットがあり、アプリ作成の市場においてはヤプリがリードしていると思っている」と語る。

また、他のサービスは“EC”などの機能に特化しているが、Yappli Liteは事業成長にあわせてキャンペーンなどの機能を作成していける点が他にはない強みになっているという。例えば、飲食店がアプリにクーポン機能を搭載したり、学習塾が動画の埋め込み機能を搭載したりできるようになっているとのことだ。

今後はグローバル展開も視野に

今回、新サービスではなく“新料金プラン”と銘打っているのも「Yappliのプラットフォームをそのまま使っているため」(小野氏)だ。専門の知識が必要なく、ノーコードでアプリが作成できるYappliの価値は、そのままYappli Liteユーザーも享受できる。

最大の違いは"カスタマイズ性”にある。Yappliは40種類ほどの機能を提供し、事業者ごとにカスタマイズできる点をウリにしているが、Yappli Liteはあえて機能を絞っているという。

業種の特性に合わせたテンプレートを選択し、ドラッグ&ドロップでテキストや画像などの情報を入力すれば、ノーコードでアプリを制作することができる
業種の特性に合わせたテンプレートを選択し、ドラッグ&ドロップでテキストや画像などの情報を入力すれば、ノーコードでアプリを制作することができる

「創業時にセルフサーブ型のサービスが上手くいかなかったのは、アプリ作成の難易度が高く、何から始めればいいのか分からなかった、というのがあります。そのハードルの高さは今も変わっていません。そのため、Yappli Liteはあえて機能を絞り、必要な機能がプリセットされているレイアウトを選び、編集するだけでアプリが作成できるようにしています。Yappliではその部分を人を介してサポートしていましたが、Yappli Liteでは機械化し、セルフサーブでストア申請以外のことができるようになっています」(小野氏)

2021年12月期第4四半期の決算発表によれば、赤字ながらも通期の売上高は32.6億円を記録するなど、「しっかり成長を遂げることができた」(庵原氏)というヤプリ。

2021年には新サービスとなるノーコードの顧客管理システム「Yappli CRM」の提供を開始したほか、データ周りの機能を強化し、管理画⾯のダッシュボードも刷新。2021年度は「製品⽴ち上げの年」、2022 年度は「ビジネス⽴ち上げの年」と捉えているという。

具体的には既存のエンタープライズ向けのソリューションのシェア拡大を進めていきながら、Yappli CRMとYappli Liteを軸に成長戦略を描く。「今年から来年にかけて、1つ1つきちんと事業化、ビジネス化を進めていければと思います」(庵原氏)

セルフサーブ型を強みにYappli Liteの英語版を開発し、グローバル展開を目論むほか、新規事業の立ち上げやM&Aの可能性も探っていくとのこと。「Yappliを引き続き伸ばしながら、Yappli CRMやYappli Lite、海外市場、新規事業などを積み重ねてレベニューソースを多層化し、さらに成⻑を加速させていければ」と庵原氏は意気込む。