
- 内視鏡検査を行う医師をサポートするリアルタイム診断支援AIを開発
- ソフトバンクグループとの協業で世界展開、将来的にはクラウドプラットフォーム化
AIと内視鏡を組み合わせ、“がん”の見落としゼロを目指す医療スタートアップ、AIメディカルサービス(AIM)は4月26日、シリーズCラウンドにおいて総額80億円の資金調達を発表した。
引受先は、リード投資家のSoftBank Vision Fund 2(SVF2)、既存投資家のグロービス・キャピタル・パートナーズ、WiL、インキュベイトファンド。ソフトバンク・ビジョン・ファンドからの国内企業投資は医薬品メーカー・アキュリスファーマ、スニーカーマーケットプレイスを展開するSODAに続き、3件目となる。
AIM代表取締役CEOを務めるのは、創業者兼現役医師の多田智裕氏だ。2017年9月に同社を創業し、2018年にはインキュベイトファンドから約10億円の資金を調達。2019年10月には、シリーズBラウンドとして第三者割当増資による約46億円の資金調達を実施している。
内視鏡検査を行う医師をサポートするリアルタイム診断支援AIを開発
がん患者の年間死亡者数のうち、約30%が食道・胃から大腸にいたる消化管のがんで亡くなっているという。日本における胃がん罹患者数は、毎年12万人以上で大腸がんに続いて第2位、死亡者数は毎年4万人以上で肺がん・大腸がんに続いて第3位となっている(最新がん統計)。
胃がんの特徴に、病期が進行すると死亡率が高まる一方、早期に発見すれば十分に治療可能な疾患という点がある。5年相対生存率は、ステージIII以降で発見された場合は5割以下だが、ステージIで発見されれば95%以上となる。一方で、早期の胃がんは判別が難しく、4.5~25.8%程度見逃されているともされる。がんは早期発見できればほとんどが完治するものの、発見が遅れると生命を落としてしまう。
多田氏は、内視鏡検査がこれら消化管のがんを早期で確定診断できる唯一の検査であること、患者の救済に直結することから、AI活用により内視鏡検査の精度を向上させ、早期のがん発見を促すとしている。
AIMでは、内視鏡で胃・大腸を観察する際、リアルタイムにがんの可能性がある場所やその確率を示す、診断支援のAIを開発している。海外でも内視鏡AIは開発されているものの、多くは大腸ポリープに特化しており、また静止画が対象という。同社では、早期の胃がん、さらに動画での利用を想定したAIを開発。がん研有明病院をはじめ全国100以上の医療機関と連携し、20万件の動画を含む膨大な内視鏡検査画像を収集することで、教師データとしてAIに学習させている。世界で初めてピロリ胃炎鑑別AI、胃癌検出AI、食道がん検出AIの研究開発に成功するなど、世界初の論文を数十本発表しており、世界の医学界からの注目も高い。
多田氏は記者説明会で、日本の消化器内視鏡医師の技術が世界トップクラスであること、質の高い内視鏡検査が日本国内で年間1700万件以上行われていることを挙げ、内視鏡AIが質・量ともに世界最高水準の教師データから作られる新たなグローバルイノベーションだと説明した。
また日本では、2021年8月に胃がん鑑別AIの医療機器製造販売承認申請が完了し、販売に向けた準備を進めている。承認となった場合、AIを活用した胃領域の内視鏡診断支援システムとして、世界初(同社調べ)の事例になるという。海外向け展開も進めており、世界10カ国以上の医療機関と議論を進行させているそうだ。
ソフトバンクグループとの協業で世界展開、将来的にはクラウドプラットフォーム化
AIMは、ソフトバンクグループとの協力により内視鏡AIを全世界に展開する方針だ。当初は内視鏡AIをオンプレミスで展開し、将来的にクラウドプラットフォームとして展開する。内視鏡AIのクラウド化が実現できれば、世界中の誰でも最先端の内視鏡医療を受けられるようになり、早期がんの発見、死亡者の減少を期待できるとしている。
