
Andreesen HolowitzやFirst Round Capitalを筆頭に、海外のベンチャーキャピタルの多くは自社ブログを通じて、業界トレンドや起業に役立つノウハウなど、さまざまな情報を発信している。連載「海外投資家に学ぶ“起業の流儀”」では、日本在住のビジネスパーソンにとっても学びとなる海外の投資家や識者のブログを編集部が厳選。許可を得た上で翻訳してお届けする。
今回紹介するのは、米国の名門アクセラレーターY Combinatorのマネージングディレクター、マイケル・サイベル氏による、大学生に宛てたメッセージ「大学生への手紙(A Letter to College Students)」だ。今春大学に入学し、在学中または卒業後のキャリアとして起業を選択肢のひとつに入れている学生も多いのではないだろうか。だが、大学時代に正しい準備を怠れば、起業する上での深刻な障壁となってしまう可能性もある。そこで、サイベル氏が提唱する8つのアドバイスも参考にし、大学生活を有意義な準備期間にしていただきたい。
起業を目指す大学生が意識すべき8つのアドバイス
私は、20代から30代の、起業したくてもできない人たちとよく話をします。彼らが若い頃に下した何らかの決断が、成功を阻んでいるか、深刻な障壁になっているのです。
以下は、起業の実現に最も悪影響を及ぼす、ありがちな決断です。
- コードの書き方(プログラミング)を学ばなかった
- 大学時代にコードの書き方を知っている人に出会わなかった
- 人生の早い段階で出費を増やして貯蓄をしなかったため、会社設立資金がない
- 大学を卒業したあと、スタートアップに優しくない都市に根付いてしまった
もしも過去に戻れるのであれば、彼らは若い頃の自分に対して、以下のようなアドバイスをしたいことでしょう。
1. コードを学びましょう
テック系スタートアップを始めるための一番の障壁は、コードの書き方を知らないことです。ぜひコードの書き方を学んでください。何もコンピュータサイエンスを専攻する必要があるという意味ではありません。しかし、大学では基礎を学ぶことができ、その後の人生に役立てることができます。プログラマーになれば、どんな業界でも働けるし、起業することもできるでしょう。最高の開発者である必要はないし、やりたくなければ一生コードを書く必要もない。しかし、コードの書き方を知っていれば、テック業界への入場チケットを得られるのです。
2. 本物のスキルを持つ人々に出会いましょう
大学では、幅広い有用な分野にわたり、自分の能力を発揮する機会が与えられます。まわりには、デザイナーやプログラマー、営業、科学者などさまざまな人がいます。この機会に、自分とは異なるスキルを持つ人たちと仲良くなりましょう。その人たちが、いつかあなたの共同創業者や初期の従業員になる可能性が高いからです。
3. 楽しみましょう
多くの成功した創業者にとって、大学当時の成績や栄誉は、将来の仕事の成功とはあまり関連がありません。個人的には、大学が与えてくれた最大のキャリアのチャンスは、本当に賢い人たちと友情を築くことでした。ですから、寮の部屋や図書館から抜け出して、社交的になりましょう。
4. 進んで責任を持ちましょう
大学は、集団の中で自分がどう動くかを学ぶ絶好の機会です。クラブをリードするグループに参加しましょう。会議の運営、出版物の作成、ボランティア活動、スポーツチームでの活動などを実行することで、他者と協力する際に、自分が得意とすること、苦手なことを知ることができます。
5. 自分探しをやめ、仕事に励みましょう
現在のアメリカでは、20代を自分探しのために使ってもいいと考えられています。私はこの考え方に断固反対です。20代は社会人として最も価値のある時期です。家族がいなければ、家族のために果たす義務や稼ぐ必要のあるお金も少なくてすみます。そして、新しい人と出会い、新しいスキルを身につけるにはまだ十分な若さがあります。20代こそ仕事に励むべきです。
6. 自身のキャリアカウンセラーになりましょう
大学のキャリアカウンセリングは、本当にひどいものです。多くの学生は、大学を卒業した後に何をしたいのかさえ分かっていないのです。在学中は、授業や成績に力を注ぐのもいいですが、卒業後に何をしたいかを考えておきましょう。いつでも考えを変えることはできますが、計画が何もないよりは、あったほうがいいのです。
7. 保護者の考えを無視してもいいのです
多くの人が、親や保護者の圧力や不十分な進路指導のもとで職業を選んでいます。私が知る医師や弁護士の中には、自分の仕事や人生を本当に愛していない人が驚くほどたくさんいます。たとえ親や保護者が大学の学費を負担してくれるとしても、自分でキャリアを選択するようにしましょう。
8. 借金には注意しましょう
学生時代の借金が原因で、スタートアップでなく大企業への就職を余儀なくされるケースが増えています。一度その決断をし、車を買う、いいアパートを借りるなどの追加の出費をしてしまうと、会社を立ち上げることを諦めなければならなくなるでしょう。
大学を選択するのは難しく、経済的援助が充実していないにもかかわらず高額な学費の私立学校は多いです。履歴書の内容を価値あるものにしてくれるかもしれませんが、結局のところ、こうした学校は避けた方がいいでしょう。最高の学校は、学資援助が手厚いものです。
私の大学の学長が、新入生のときにこのようなアドバイスをしてくれたらよかったのにと思います。繰り返しますが、22歳から32歳までは、スタートアップを起業する上で最高の時期であることを覚えておいてください。毎年、スタートアップに挑戦しないことで、この最高の時期の10%を失っているのです。