グロービス・キャピタル・パートナーズ ジェネラルパートナーの高宮慎一氏
グロービス・キャピタル・パートナーズ ジェネラルパートナーの高宮慎一氏 画像提供:グロービス・キャピタル・パートナーズ

日米共に起こるテック銘柄の株価下落。景気後退を起因とした“スタートアップの冬”の到来がささやかれる中、独立系VCのグロービス・キャピタル・パートナーズ(以下、GCP)は7月5日、過去最大規模となる7号ファンドの設立を明かした。一次募集を500億円規模で完了し、年内のファイナルクローズまでに600〜700億円規模を目指すという。

7号ファンドを設立したばかりのGCPが考える今後の投資戦略とは。GCP ジェネラルパートナーの高宮慎一氏に話を聞いた。

1社あたり最大で100億円規模の出資へ

GCPは1996年に創業したVCだ。これまでの運用総額は累計1600億円以上。累計投資先社数は190社を超え、そのうち、45社が上場、25社がM&Aによるイグジットを果たした。上場した出資先としては、メルカリ、ランサーズ、ビジョナルなどが代表例として挙げられる。

1996年設立の1号ファンドは5.4億円規模だったが、2019年設立の6号ファンドでは400億円規模に。そして、新たに設立した7号ファンドは、一次募集完了時点で500億円超となり、過去最大の規模となっている。現時点での主な出資者は以下のとおりだ。

  • 産業革新投資機構
  • 日本政策投資銀行
  • 三井住友銀行
  • 損害保険ジャパン
  • 東京海上アセットマネジメント
  • オリックス生命保険
  • North-East Private Equity Asia II
  • その他、企業年金基金、金融法人、大学基金などを含む国内外大手機関投資家、および個人投資家

7号ファンドではシード・アーリーからレイターまで、幅広いステージのスタートアップを投資の対象とする。1社あたり最大で100億円規模の投資を実施し、時価総額にして数千億円規模のユニコーン企業から、1兆円を超える規模のデカコーン企業の創出を目指すという。また、7号ファンドより、これまでディレクターだった福島智史氏と湯浅エムレ秀和氏がパートナーになる。

「スタートアップの上場までの期間も長くなり、調達の回数も増えてきました。レイトステージのラウンドの規模感も大きくなってきています。こうした中、スタートアップの成長をしっかりと支援したいという意思を込めて、この規模感となりました。レイトステージでは、1回のラウンドで50億円、場合によっては100億円近くの投資を実施します」(高宮氏)

本格化する「Web3」の波と「国内巨大市場のDX」に投資

新ファンドの投資領域は大きく分けて2つ。「日本発で世界一を狙える領域」と「国内巨大市場の寡占化を狙えるような領域」だ。

日本発で世界一を狙える領域としてはエンターテインメントやコミュニティ、Web3をテーマに掲げる。これまでバズワードとして語られることが多かったWeb3だが、今ではブロックチェーンやプロトコルにとどまらず、その上に乗るアプリケーション、プロダクトレイヤーが話題の中心になりつつある。本格的に動き出したWeb3領域のスタートアップに対しての投資を進める。

その一方で、DX(Digital Transformation:デジタルトランスフォーメーション)などによって国内巨大市場の寡占化を狙えるような領域にも積極的な投資を行う。具体的には、自動車、金融、建設、不動産、医療といった、国内の10兆円規模を超える市場を担うスタートアップだ。

「10兆円以上の市場でナンバーワン企業になれば、売上で数兆円、時価総額は1兆円規模になります。スタートアップと大企業が対立するのではなく、連合体として国内の巨大市場をDXし、世界市場にも挑むことができるのではないでしょうか」(高宮氏)

(編集部注:7月5日18時44分)初出時にこれまでパートナーだった福島智史氏と湯浅エムレ秀和氏がジェネラルパートナーになると書いていました。正しくはディレクターだった福島智史氏と湯浅エムレ秀和氏がパートナーになるです。お詫びして訂正します。