
- 17万事業者が活用、アプリを軸に建設現場の人手不足を解決
- 法人向けサービスが収益基盤として成長、売上は3.4倍に
約500万人が働き、およそ60兆円とも言われる規模を誇る巨大産業・建設業界。ピーク時に比べると建設投資額は減っているものの、近年は再び増加傾向にある。一方で現場を支える職人の高齢化や人材不足を始め課題も多い。
テクノロジーを用いて建設業界を変えていく技術や取り組みは「ConTech(コンテック)」と呼ばれ、国内外で複数のスタートアップが生まれている領域だ。
2017年創業の助太刀もその1社。「建設業界を魅力ある職場に」というミッションのもと、建設業界の人手不足を解決するための事業者間マッチングプラットフォームを展開してきた。
主力サービスの「助太刀」は現在17万件を超える事業者が登録しており、事業者や現場の職人の新たなパートナー探しを支えるインフラになりつつある。ここ数年は企業向けのプランや正社員の採用サービス「助太刀社員」などのサービス拡充に力を入れており、直近1年間で売上高は約3.4倍に拡大した。
助太刀では今後組織体制を強化し、さらなる事業拡大を目指していく計画だ。そのための資金としてMPower Partners、はたらくFUNDおよび既存株主を含む複数の投資家を引受先とする第三者割当増資に加え、複数金融機関からの転換社債型新株予約権付社債や融資により総額18.5億円を調達した。
17万事業者が活用、アプリを軸に建設現場の人手不足を解決
助太刀の代表取締役社長兼CEOの我妻陽一氏は大手電気工事会社を経て、自身で立ち上げた電気工事会社を10年以上経営してきた。そんな我妻氏が自身の経験も踏まえ、建設業界における「人材」の課題を解決するために創業したのが助太刀だ。
同社で取締役COOを務める添田優作氏によると、建設業界では仲間内での紹介など既存のつながりを軸に発注先や仕事相手を探すことが多く、交渉に電話が活用されることも多い。業界の重層下請構造という特性もあり“人材の囲い込み”が進みやすく、なかなか特定の人以外との取引が発生しづらいといった事情もある。
助太刀が取り組んでいるのは、アプリを軸としたオンラインマッチングプラットフォームを用いて建設業界における労働力の需給のミスマッチを解決すること。同社のサービスは現場で働く職人が、空き時間を活用してアプリで簡単に発注先や受注先を探せるのが特徴だ。
オンライン上で双方をマッチングする仕組み自体はこれまでも存在したが、ウェブ(PC)を中心にしたものが多かった。助太刀では「現場での使いやすさ」を重視してアプリを中心としたユーザー体験を磨き込んできたことで、ユーザー獲得につなげてきたという。
法人向けサービスが収益基盤として成長、売上は3.4倍に
現在同社では事業者(発注者)を対象としたtoB向けの事業と、主に個人の職人を対象としたtoC向けのサービスをそれぞれ展開している。もともとは個人向けの課金(助太刀の有料プラン)からスタートしたが、現在収益の柱となっているのは全体の8割ほどを占める法人向けのサービスだ。
月額2万9800円からのビジネスプランや、2020年7月にリリースした正社員採用特化の助太刀社員などが軌道に乗ってきたことで事業が成長。売上は昨年対比で3.4倍に拡大した。
助太刀取締役CFOの金谷圭晃氏は、「法人向けサービスを確立できたことがこの1〜2年の大きな変化」だという。
「以前は『職人さん向けのサービスとして(職人側から)どうマネタイズしていくか』をずっと考えていました。でも10万件を超える事業者の方たちが登録してくれている中で、それ自体が助太刀の価値の源泉だと気づいたんです。職人さんからお金をもらうよりも、その人たちと出会える場所に価値を感じてもらえる法人からお金をもらうことに注力しよう。言葉にするとものすごく簡単になってしまうのですが、そこを戦略として落とし込み、体制を強化しながら事業を推進できたことが成長の要因になったと考えています」(金谷氏)
金谷氏によるともともとは「事業のポテンシャルはあったものの、それをスケールさせるためのケイパビリティ(能力)が十分ではなかった」が、近年はCOOの添田氏を筆頭に組織体制を強化し、ユーザー基盤だけでなくビジネスの観点でも事業を成長させてきた。
今回の資金調達は、この流れをさらに加速させることが目的。ユーザー基盤の拡大と収益化を両立させながら「質の高い成長を目指していきたい」(添田氏)という。