
法人向けのソフトウェアビジネスを拡大していく中で、代理店を始めとした“パートナーとの協業”は成長のエンジンにもなりうる。
ただ実態としてはパートナーシップを結んだはいいものの、お互いの資産や強みを活用できず、ほとんど成果につながっていないというケースも珍しくない。こうした状態を指す“ゴーストパートナー”という概念が存在するように、パートナービジネスを効果的に進めていく上では課題も多い。
2021年創業のハイウェイが公開した「Hiway(ハイウェイ)」は、まさにSaaS企業などのメーカーと販売代理店などのパートナーの協業を後押しするサービスだ。
同サービスの軸となるのが「アカウントマッピング」と呼ばれる技術。営業支援ツール(SFA)や顧客管理ツール(CRM)に蓄積されたデータを安全なかたちで共有し合うことで、共通の顧客や双方の特徴などを踏まえながら共同のターゲットリストを作る支援をする。
ハイウェイ代表取締役の久保文誉氏によると従来は担当者同士がExcelでターゲットリストを作成し、毎週の定例会議などで営業戦略を議論することが多く、リストの作成に時間がかかるといった課題があった。
Hiwayの場合はSFAやCRMのデータを連携してリストを作っていくため、属人的な業務が減らせるほか、常にデータが最新版にアップデートされるという利点もある。案件管理機能や担当者同士のメッセージ機能も実装しているため、パートナー間でのコミュニケーションもHiway上で進められる。

久保氏は新卒で入社したソフトバンクで法人事業部門の営業として働き、そこで代理店営業のような業務も経験した。その後「テクノロジーを活用して新しい営業活動の手法を作りたい」と考え、初期メンバーの1人として営業支援ツール「Senses」を手がけるマツリカに参画。同社では営業責任者やプロダクト責任者を担い、SaaS企業側の立場から営業現場と向き合ってきた。
メーカー側と代理店側、双方の立場を経験して久保氏が感じたのが「メーカーと代理店がうまく手を組むことができれば、大きな成果が見込める」ということ。一方で現場では上述したような課題に直面する企業も多いことから、その解決策を作るべくマツリカ時代のメンバーたちと共同でハイウェイを創業した。
これまでは5月にサービスのアルファ版を開発し、大手企業10社ほどに試してもらいながらプロダクトの機能面やセキュリティ面を磨いてきた。今回サービスの正式ローンチを迎えたことを機に、今後は事業拡大に向けた取り組みを加速させていく計画だ。ハイウェイではそのための資金として、DNX Ventures、Archetype Ventures、East Venturesを引受先とするJ-KISS型新株予約権の発行により1.2億円を調達した。
「(ハイウェイという名前の背景には)企業成長の高速道路を作りたいという思いがあります。これだけ営業データがたまっていて、APIエコノミーが広がっている時代だからこそ、企業間のつながりを可視化できれば、それをたどってもっと企業が早く成長できると考えています」(久保氏)
米国では2021年に7600万ドルを調達したCrossbeamを始め、ハイウェイと近しいようなプレーヤーがすでに複数存在する。テクノロジーを活用してパートナービジネスを支援するサービス自体が盛り上がってきており、他のアプローチからこの領域にチャレンジする企業も増えている状況だ。
国内のスタートアップでは、パートナーサクセスが企業間での契約管理や案件管理を支援するPRM(代理店連携管理クラウド)という切り口で事業を展開している。