
- 何より意識したのは「リアルな声」、スタートアップも取材
- TVerのリアルタイム配信では1位を記録、若年層も支持
ひとりの女性が起業し、仲間と一緒にユニコーン企業(評価額10億ドル以上の未上場企業)を目指していく──そんなコンセプトのTBSドラマ『ユニコーンに乗って』(毎週火曜日の22時から放送中)が明日、最終回を迎える。
※以下、ネタバレに関する記載も含まれているため、まだ作品を観ていない人、ストーリーの内容を知りたくない人はご注意ください。
『ユニコーンに乗って』は主人公の成川佐奈(永野芽郁)が、大学に潜り込んで聞いた羽田早智(広末涼子)の特別講義をきっかけに「ITであらゆる格差を解消する」というビジョンに刺激を受け、「すべての人へ平等に教育機会を届けたい」と思い、EdTechのスタートアップ・ドリームポニーを起業。ユニコーン企業となることを目指し奮闘する、というストーリー。
ここ数年でさまざまなジャンルのドラマが放送されるようになったが、それでも「起業」や「スタートアップ」をテーマにしたドラマは数える程度だ。
何より意識したのは「リアルな声」、スタートアップも取材

同ドラマを仕掛けるのは、“わたナギ”の愛称で人気を集めたTBSドラマ『私の家政夫ナギサさん』の製作に携わった、プロデューサーの松本友香氏と岩崎愛奈氏のコンビだ。なぜ、スタートアップをテーマにしたドラマを製作することにしたのか。松本氏は、次のように話す。
「日本では新しいチャレンジをする人を“変わり者”のように捉える雰囲気がまだまだあります。起業もすごくハードルの高いものだと思われている。しかし、起業して頑張っているのは遠い世界の人ではなく、意外と等身大の20代の女の子だったりするんです」
「これまでも、スーパー経営者が登場する企業をテーマにしたドラマや、働き方をテーマにしたドラマはありました。その中で『勇気を出して一歩を踏み出したら私でも世の中を変えられるかもしれない』と視聴者が思ってくれるようなドラマを製作できないか。そう思い、スタートアップをテーマにすることを決めました」
『ユニコーンに乗って』は貧しい家庭で育ったひとりの女性が起業し、そのスタートアップにITのことをまったく知らない中年サラリーマンの小鳥智志(西島秀俊)が入社してくる、という要素がある。そのためSNSでは韓国ドラマ『スタートアップ』や映画『マイ・インターン』と比較する声もある。松本氏「いろんな作品を見ましたし、その2つの作品も見ました」とした上で、何より「リアルな声」を大事にしたと語る。

例えば、このドラマでは、スタートアップ業界に関わる人たちには馴染みのある言葉や光景が数多く登場する。タイトルでも使われているユニコーン企業に始まり、CEOやCTOといった役職、ファイナンスやプログラミングに関する用語。資金調達に駆け回る、事業展開のロードマップについて話し合う、人材採用に苦戦する、ピッチコンテストに挑戦するといったシーンなどだ。
また、EdTechのスタートアップがドラマの舞台ということで、AI学習「atama+(アタマプラス)」を開発・提供するスタートアップのatama plusが取材に協力した。ドリームポニーのオフィスも、atama plusの実際のオフィス環境を参考にしており、取材の際には西島さんも自ら希望して同行したそうだ。

「ドラマを製作するにあたり、実際のスタートアップを5社(編集部注:パーソナライズスキンケアのD2Cブランド・FUJIMIを展開するトリコやデジタルテーマパーク・リトルプラネットを運営するプレースホルダなど)取材しています。他にも、ビジネスコンテストに足を運んだり、これから起業しようとしている人たちの話を聞いたり。そういった取材をする中で聞いたエピソードをストーリーに取り入れています」(松本氏)

取材を通して、松本氏の中にあった“スタートアップ像“も良い意味で変化したという。
「起業するような人たちは、すごいバイタリティやエネルギーの持ち主なんだろうなという想像はありました。ですがいざ実際に話を聞くと、想像をはるかに超えたバイタリティを持っていました。自分のアイデアをかたちにしてビジネスをすることで、本気で世の中を変えられると思っています。そんな信念や意思の強さ、それを貫き通しているカッコよさがあった。これは実際に取材して肌で感じないとわからないことでした。取材に行くほどに、どの会社でも『ここで働きたい』と思わされました(笑)」(松本氏)
TVerのリアルタイム配信では1位を記録、若年層も支持
スタートアップをテーマにしたドラマは珍しいが、果たして世間からの反応はどうなのか。松本氏は「すごく面白い反応が得られている」と言う。8月30日に放送された9話の平均世帯視聴率は7.6%(関東地区)という状況だが、9月1日時点での民放公式テレビ配信サービスTVerのリアルタイム配信では1位となっている。テレビを普段観ない視聴者からの反響が大きいという。
「今年4月からTVerで各放送局の番組がリアルタイム配信されています。ここ3週間ほどは(編集部注:取材が行われたのは8月23日)、全番組のなかで『ユニコーンに乗って』がいちばん(リアルタイムで)観られていました。また、番組のお気に入り登録者数も、ドラマが始まって前半の期間は1位を獲っていました。おそらくテレビを持っていない若い世代の人たちがこのドラマを観てくれているというのが、データから推測できて面白いです」(松本氏)
明日、最終回の第10話が放送予定の『ユニコーンに乗って』。松本氏は、「最終回は視聴者の人たちに『私も明日からがんばろう』と思ってもらえるような物語があります。“大人の青春”をテーマにしたこのドラマを最後まで楽しんでもらえたらと思います」と話した。
