して注目されるレベニュー・ベースド・ファイナンス(RBF)のプラットフォームだ
Yoiiが運営する「Yoii Fuel」は新たな資金調達手段として注目されるレベニュー・ベースド・ファイナンス(RBF)のプラットフォームだ
  • 将来の売上を売却、成長資金を素早く調達
  • 海外で先行するRBF、100億円以上を集めた企業も10社以上

「スタートアップの調達手段が非常に少ないことに疑問があり、新しい資金調達手段を提供できないかと考えたのがきっかけです」──。フィンテックスタートアップのYoiiで代表取締役CEOを務める宇野雅晴氏は創業の背景についてそう話す。

Yoiiが2022年4月にローンチした「Yoii Fuel」はレベニュー・ベースド・ファイナンス(RBF)のプラットフォームだ。

RBFとは大まかに言えば「将来の売上(債権)を売却し、成長に必要な資金を確保できる仕組み」のこと。日本ではまだなじみが薄いものの、エクイティ(株式による調達)やデット(借入による調達)とは異なる“新たな資金調達の手段”として海外で注目を集める。

特にSaaSやD2Cなど将来の売上を予測しやすいリカーリング(継続課金)型のビジネスと相性が良く、そのような企業を中心に利用が進む。欧米ではこの領域においてCapchaseやClearco、pipeなど数百億円規模の資金を集める企業が何社も出てきており、複数のユニコーンも生まれている状況だ。

Yoiiとしては日本においてRBFを広げていくことで、スタートアップの成長を支援していきたいという。

将来の売上を売却、成長資金を素早く調達

従来スタートアップの資金調達手段としてはエクイティとデットが主流となってきたが、RBFは双方の“ハイブリッド”と言われることが多い。

エクイティとは異なり株式が希薄化することはなく、デットのように個人保証や担保を求められるようなこともない。サービスによって多少の違いはあるものの、RBF型のサービスは財務データや決済データなどを連携することですぐに審査を始められるものも多く、オンライン上でスピーディーに資金を集められる点も特徴だ。

もちろん一定の制約も存在する。過去の売上データを基に将来の収益を予測するため、一定の売上が積み上がった状態でなければ調達できる資金が少なくなりやすい。調達コスト(手数料)もデットに比べると高い傾向にある。

Yoii Fuelでは過去の売上実績や財務情報から将来の売上を予測し、その売上を買い取るかたちで企業に資金を提供している。

顧客企業にとっては事業成長において重要なタイミングにおいて、必要な資金をスピーディーに調達できるのが特徴。freeeやStripeといった会計ツール、決済ツールなどとデータを連携することで審査に必要なデータを手間なく揃えられ、審査から6営業日で資金調達が完了する。

調達額に数%〜十数%程度の手数料率(企業の状況などによって異なる)をかけた金額がYoiiの収益となる仕組み。顧客は売上の増減に関わらず毎月一定額を支払う。

宇野氏によるとこれまでSaaS企業やD2C、EC系の企業などを中心に数十社にサービスを提供してきた。調達額は基本的に1社あたり数千万円程度。SaaS企業ではブリッジファイナンスの手段として、D2C・EC系の企業では事業成長に向けた広告宣伝費や仕入れ資金を調達する手段として使われることが多い。

また直近数カ月に関してはスタートアップの資金調達環境の変化に伴い、ランウェイ(キャッシュが尽きるまでの期間)を伸ばして企業価値を少しでも上げる目的での調達ニーズが増えているという。

海外で先行するRBF、100億円以上を集めた企業も10社以上

Yoiiで代表取締役CEOを務める宇野雅晴氏
Yoiiで代表取締役CEOを務める宇野雅晴氏

Yoiiは2021年の設立。RBFの領域で事業を立ち上げた背景には、宇野氏自身が過去に勤めていたスタートアップで会計業務を経験し、その際にスタートアップにおける資金繰りやキャッシュフローの重要性を感じたことも大きく影響しているという。

事業領域を検討している際にRBFの代表的なプレーヤーであるCapchaseを知り、日本でもRBFを実現できればニーズがあるのではないかと考えた。サービス立ち上げ前には20〜30社程度にヒアリングを実施し、資金調達に関する課題やRBFへのニーズを確認。2021年4月にクローズドベータ版をローンチし、機能改善を続けてきた。

海外ではRBF関連のサービスを手がけるプレーヤーが増えてきており、Yoiiの調査では少なくとも18か国で47社存在する。8割近くが2019年以降の設立と比較的新しい企業が多いが、すでに10社を超える事業者が100億円以上の資金を集めている。地域に関しても米国と英国を始めインドやドイツ、フランスなどにも広がってきている状況だ。

宇野氏によるとBNPL(後払い決済)の市場にも似ているところがあり、ECが伸びているインドや東南アジアではECに特化したRBFサービスが出てきていたりもするそう。日本ではまだ事業者は少ないもののYoiiやFivotなど関連するスタートアップが少しずつ生まれ始めているほか、BASE(BASE BANK)が展開する「YELL BANK」などIT系の事業者が既存サービスと関連してRBFに近しい仕組みを提供する例もある。

Yoiiでは今後プロダクトのUI/UXや与信モデルの強化などを通じて、より多くの企業に新たな資金調達手段を届けていく計画。そのための資金としてOne Capital、インクルージョン・ジャパン、東京大学協創プラットフォーム開発、三菱UFJ信託銀行、農林中金イノベーション投資事業有限責任組合、Plug and Play Japanから約4.8億円を調達した。